クヴィチャ・クヴァラツケリアを大解剖する

2022年夏、イタリアに怪物がやってきた。ナポリに加入した21歳のジョージア人アタッカー、Khvicha Kvaratskheliaである。

クワラツヘリア?クヴァラツケリア?

発音が難しい彼だが、本人の発音を聞くと「クヴァラツケリア」が近いようだ。

 

そんな彼は今季のセリエA前半戦で最大のサプライズとなった。

ここまで7ゴール7アシスト。両者を合計したゴール関与数ではセリエA2位である。

  • ゴール+アシスト:14(セリエA2位

 

また、fbref.comの「ゴールに直結した2つのアクション」を集計したGCA(Goal-Creating Action)という指標において、クヴァラツケリアはセリエAトップとなっている。

  • GCA:14(セリエAトップ

 

セリエAで最もゴールを産む男は、CLでも5試合2ゴール3アシスト。欧州の舞台でも躍動している。

加入前には無名だった若者は、今年5月に1500万ユーロだった市場価値を4倍の6000万ユーロにまで押し上げた。いまや彼の名前を知らないサッカーファンはいないだろう。

しかし、実際に彼がどんなプレーヤーなのかはまだあまり知られていないのではないか。

そこで、今回はクヴィチャ・クヴァラツケリアがどんなプレーヤーなのか、その強みを5点に分けて紹介していくことにしよう。

 

 

強み① 積極果敢なドリブル

クヴァラツケリアの特徴として、ボールを持てば非常に積極的にドリブルで仕掛けるということがある。

  • ドリブル突破総数:84(チーム内トップ
  • ドリブル突破成功数:25(チーム内トップ

上に示したように、ドリブル突破の試行数、ドリブル突破でともにチームトップだ。ドリブル突破総数に関しては、2位ポリターノの37にダブルスコアをつけている。クヴァラツケリアの積極性がよくわかるデータだろう。

ボールを持てばとにかく仕掛ける。その強気な姿勢こそ彼の怖さだ。

 

↓ 彼の積極性がよくわかる場面。ボールを受けるなり前を向き、何の迷いもなくドリブルで仕掛けていく。

 

クヴァラツケリアは常に足元にボールを置いているためいつでもボールを動かせる状態にある。そのため、相手がボールを奪おうと足を出してきた瞬間にボールを持ちだし、相手の勢いを利用して入れ替わることができる。

派手なフェイントは用いないものの、何度もドリブルの方向を変えたり鋭いキックフェイントで相手のバランスを崩したりして、巧みに突破を仕掛けていくのが彼のスタイルだ。

 

 

強み② チャンスメイク

先ほど見てきたように、クヴァラツケリアは非常に積極的にドリブルで仕掛けていく。しかし、ドリブル一辺倒の選手ではない。チャンスメイク能力にも長けているのだ。

  • 90分あたりアシスト期待値:0.32(セリエAトップ
  • 90分あたりアシスト数:0.58(セリエAトップ

とアシスト数、アシスト期待ともにセリエAトップクラスだ。

ドリブル突破力が高いクヴァラツケリアだが、そこに固執しすぎずうまく味方を使える判断能力の高さが彼を際立たせている。

 

 

強み③ フィジカル能力

ドリブル、パスともにハイレベルでテクニックに優れているクヴァラツケリアだが、彼はそれだけの選手ではない。そもそものアスリート能力が非常に高いのだ。

特筆すべきは相手を背負った時のプレーの安定感。背後から相手にタックルされても意に介さず、むしろはじき返して前進していく様はパワフルで、ローマでプレーするニコロ・ザニオーロを思いおこさせる。

これはナポリにとって戦術的に貴重な武器になっている。マリオ・ルイがタッチライン際の司令塔として機能している現在のナポリにとって、その前方に構えるクヴァラツケリアは最大のターゲットとなる。当然相手からすればクヴァラに狙いを定めるわけだが、クヴァラツケリアは巧みに相手を背負ってボールをキープし、この狙いを外してしまう。そればかりか相手を背負いながら反転し自ら持ち運んでしまうのだから、チームにとってこれほど助かることはない。

相手からのプレッシャーを受けながらでもプレーが乱れないクヴァラツケリア。そこに確かなテクニックが寄与しているのもたしかだが、それ以上に彼の優れたボディバランスの賜物だろう。

 

↓ リバプール戦でのアシストの場面。ペナルティエリア内で背後からジョー・ゴメスに押されたクヴァラツケリア。普通なら倒れてPKをアピールしてもいい場面だが、彼は倒れずにジョー・ゴメスを弾き返してアシストしている。

 

さらに、クヴァラツケリアは10m程度のショートスプリントにも長けている。キックフェイントをはじめとした切り返しを得意とするクヴァラツケリア。その単純なアクションで相手を置き去りにできてしまうのは、彼の初速の早さゆえだろう。ドリブル突破力にもまた、彼のフィジカル能力の高さが反映されているのだ。

複数人に囲まれながらもグイグイと突き進む馬力は魅力で、強引に敵陣に穴をあける様は非常に頼もしい。

 

 

強み④ 戦術的インテリジェンス

フィジカル、テクニックに加えて、戦術的インテリジェンスんも優れているのがクヴァラツケリアだ。心技体すべてを兼ね備えているのである。

特に目を見張るのがタイミングよくハーフスペースに顔を出して味方に選択肢を提供する動きである。ショートパスをつないでいくナポリにあって、この能力はクヴァラを特別な存在たらしめている。

また、最終ラインがボールを持っているときにはタイミングよくインサイドに入ってきて縦パスのターゲットとなる、もしくはオシメンが落としたボールの受け手となる。

  • 縦パスレシーブ数:74(チーム内2位

上記データは1トップのオシメンが記録している76とほぼ同数。クヴァラツヘリアが瞬間的に2トップを形成するこの動きがナポリ井の前進にとって欠かせないものとなっている。

 

↓ タイミングよくインサイドに入ってきてパスを受けたクヴァラは、間を向いてスルーパスを供給しアシストを記録した。彼の魅力月なった場面だ。

 

↓ LBのオリベラにボールが入った瞬間にギャップに顔を出してボールを受けたクヴァラ。そこから迷いなくターンできるのも自分がフリーだと認知できているからだ。

 

↓ 味方と並走しながら首を振ったクヴァラは、背後にスペースがあることを認知して相手から離れるように少し走るコースを変えてスペースでボールを引き出す。さらに、ボールの移動中にさっきとは反対側に首を振って自分が完全にフリーであることを把握してからターンしている。この認知力の高さ、それを支えるこまめな首振りは特筆ものだ。

 

 

強み⑤ 得点能力

サッカーというスポーツにおいて、スーパーなプレーヤーはみな高い得点能力を持っている。

そして、クヴァラツヘリアはスーパーなプレーヤーとしての条件を満たしている。彼は非常に高い得点能力を持っているのだ。

  • ゴール数:7(セリエA7位
  • PKを除いたゴール数:7(セリエA4位

 

自ら仕掛けてのフィニッシュ抜け出しての1vs1はもちろんのこと、ゴール前に飛び込んでクロスボールに合わせるパターンも得意としているクヴァラツケリア。

フィジカル能力に優れるクヴァラは、特筆して大柄ではないとはいえタイミングよくゴール前に入ってきて、相手とのコンタクトを制してボールを押し込むことができる。

 

さらに絶品なのがミドルシュートだ。フィジカルのトータルバランスに優れたクヴァラツヘリアは、下半身に爆発的なパワーを秘めている。相手が目の前に立ちはだかっていようともものともせず、右足を振り抜いて強烈な一発をお見舞いする。強烈かつ正確な彼のミドルは相手にとっていつでも脅威となる。

  • シュート平均距離:17.4m

と比較的遠い距離からのシュートが多くなっている(ペナルティエリアの縦の長さは16.5m)のも、彼の遠距離からのシュートに対する自信とみていいのではないだろうか。

 

ここまで見てきたように、非常に多彩な得点パターンを持つクヴァラツケリア。

下の画像はunderstat.comから引用した、クヴァラの得点位置と得点期待値をピッチ上に円の位置と大きさでプロットしたものだ。これを見るだけでも、彼が多彩な得点パターンを持っていることがよくわかるのではないだろうか。

 

 

あとがき

2022年夏、ナポリは偉大な選手を失っている。ロレンツォ・インシーニェだ。

生え抜きにしてカピターノという地元のアイドル。代表ではナンバー10を背負うファンタジスタ。本来ならばその喪失感は甚大なはずだ。

しかし、ナポリからインシーニェの不在を嘆く声は聞こえてこない。彼のポジションに収まったクヴァラツケリアが見事なパフォーマンスを見せているからだ。

インシーニェも長く比較されたクラブのレジェンド、マラドーナになぞらえた「クワラドーナ」の愛称がクヴァラに対する歓迎っぷりを表している。

ここまでのナポリはセリエAで首位を独走し、CLでもリバプールを退けてグループ首位通過を果たすなどクラブ史に残りそうなシーズンを過ごしている。

その中心にいるクヴァラツケリアは後半戦もチームを牽引できるか、目が離せない。

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