【セリエA全選手詳解】アタランタの20人を分析してみた

ゴールキーパー

開幕当初はムッソとカルネセッキが交互に出場するような状況が続いていたが、今では完全にカルネセッキがポジションを奪っている。

ビルドアップ能力ではムッソが、セーブ能力ではカルネセッキが優れている。

アタランタは後方からのビルドアップでGKにそこまで重要なタスクを任せていないため、ビルドアップ能力よりもゴールを守る能力が重視されている印象。ここにおいて、カルネセッキの方が明らかに上だ。

下でも詳述するが、両者の差はポジショニング修正をきちっとやっているか、いないかにある。カルネセッキは非常にマメにポジションを修正しており、これが高いセーブ率につながっている。

 

 

マルコ・カルネセッキ

チェゼーナの下部組織でプレーしていたカルネセッキは、2017年にアタランタに移籍。2シーズンユースでプレーし、18-19カンピオナート・プリマヴェーラで優勝を果たしている。

翌19-20にはセリエBのトラパーニにレンタルされてプロデビューを果たすと、2021年冬から2年半はクレモネーゼでプレー。21-22にはクラブのセリエA昇格に貢献し、翌シーズンにセリエAデビューを果たしている。

そして今シーズン、満を持してアタランタのスカッドに加わったカルネセッキは、今ではムッソから完全にポジションを奪取している。

シーズンを通してハイパフォーマンスを継続しており、3月には初のイタリアA代表選出を受け、クラブMVPに選出された。一気にイタリア期待の若手GKとして名を揚げた格好だ。

 

今季のカルネセッキは、データで見ても好パフォーマンスを見せている。

特に目を引くのはセーブ率で、77.9%という高い数字を記録している。セリエAの全体平均が他のリーグに比べると非常に高いのでリーグ内では6位にとどまっているが、たとえばプレミアリーグに入れば堂々の1位にランクインする数字だ。

彼のベースにあるのは、的確なポジショニングだ。カルネセッキはボールの動きに合わせて細かくステップを踏み、ポジショニングを修正する。

さらに、シュートを打たれるタイミングに行うプレジャンプのタイミングでしっかりとストップすることができている。それによって、どの方向にボールが飛んできても反応ができる。

シュートを打たれる前の準備があってこそ、高いセーブ率につながっているのだ。

上の動画のようなビッグセーブは彼の代名詞ではない。ポジショニングがいいので、あまり無理をしない範囲でセーブが可能だからである。

カルネセッキのセーブは悠々としている。観客を沸かせるようなダイナミックなプレースタイルではないが、年齢に似合わずチームに安心感を与えるGKだ。

 

また、カルネセッキはクロスボール処理スイーパータスクと言ったゴールマウスを離れた位置での守備アクションにも優れている。

こうしたGKは得てしてアグレッシブな反面、それが裏目に出てチームをあわてさせる場面もあるものだが、カルネセッキにはそれが当てはまらない。

それは、飛び出すか飛び出さないかの判断が的確だからだろう。自分が先に触れないならば、飛び出さずにゴールを守る判断がきちっとできる。自分のプレーエリアをしっかりと把握していて、かつ瞬間的な判断力に優れているからこそなせる業だ。

だから、カルネセッキはアグレッシブでありながらも安定感があるのだ。

 

さらに、カルネセッキはPKセーバーとしての地位も確立した印象だ。

今季6回の被PKを受けているカルネセッキだが、実際に失点したのは3度のみ。非常に高いPKセーブ率を誇っている。

サッスオーロ戦には、1度とめたPKがやり直しになってしまったものの、そのPKも再度セーブして話題となった。

 

ビルドアップ面も見てみよう。カルネセッキは右利きだが、左足からのキックに対しても積極的にトライしている。これは、GKとしては大きなアドバンテージになり得る。

そして、キックの種類が多いのもカルネセッキの持ち味だ。

常のショートパスはもちろん、味方とボールがスペースで出会うような柔らかいボールから、ライナー性のフィードまでを使い分ける。カルネセッキほど多くのキックを使い分ける選手はなかなかいない。

 

ただし、現在のカルネセッキはビルドアップ能力が高いとは言えない。それは、キックの精度が追い付いてきていないからだ。

様々なキックにトライするカルネセッキだが、パスミスに終わる場面も少なくない。特に相手からのプレスにさらされた場面では目に見えてパス精度が落ち、自らのミスによって決定的なピンチを迎える場面も散見される。

 

↓ カルネセッキのパスミスからPKにつながった場面。

 

ゴールを守る能力はリーグ内でもかなり高い一方、ビルドアップへの貢献に関してはまだ発展途上であるカルネセッキは、マスターGKに限りなく近い「ビッグセーバー」に分類したい。

前述のとおり、キックの種類は豊富であるだけに戦術眼や精度を磨いていけば、ビルドアップでも大きな貢献を果たせるはず。そうなれば、非常に完成度の高い「マスターGK」となれるはずだ。

 

ユベントスがシュチェスニーの後継者として獲得を狙っているとされるカルネセッキ。本人も移籍を視野に入れて代理人を変更したと報道されている。

シーズン終了後の動きにも注目だ。

 

 

フアン・ムッソ

イタリア系アルゼンチン人のムッソは、10歳のころサッカーを始めた。それまではバスケットボールをプレーしていたらしい。さらに、14歳でロックバンドを結成しドラマーを務めるなど少年時代に様々な経験を積んだようだ。

16歳で地元のチャンピオンシップで優勝し、決勝戦のPKで5本中3本をセーブしたことで注目されたムッソは、名門ラシン・クラブへ加入。

プロデビュー翌年にはスタメンに定着、ラウタロ・マルティネスとともにチームを支えた。

そして2018年夏、ウディネーゼに加入しすぐさまスタメンになると、3シーズンにわたってゴールマウスを守った。

この間アルゼンチン代表デビューを果たし、コパ・アメリカ2021の優勝メンバーにも名を連ねている。

そして2021年、アタランタに加入しすぐに守護神として君臨した。しかしながら、今季はカルネセッキにポジションを奪われている。

 

ムッソは非常にアグレッシブなGKである。

クロスボールに対して積極的に飛び出してパンチングではじき出し、最終ライン裏に落ちてきたボールに対してはペナルティエリア外に飛び出してクリアする。

クロスボール処理率ではセリエA2位90分あたりペナルティエリア外でのプレー数はセリエAトップと、スタッツも彼のアグレッシブさを裏付ける。シュートを打たれる以前のところでゴールを守ろうとする意識が非常に強いGKだと評価できるだろう。

 

肝心のセービングに関しても能力値は高い。

彼のプレーの基礎となっているのは、構えた時の姿勢の良さだ。しっかりと上半身を立てたまま相手のシュートを待って、反応してセーブしていく。

しっかりと低く構えられているため、足元のシュートに対して強いのはムッソの強みだ。低弾道のシュートに対しても、軽い身のこなしで横に倒れながら腕ではじき出す。

また、セーブした後の体勢がいいので、一度弾いた後にすぐに体勢を立て直せるため、セカンドセーブにも対応可能だ。最初のセービングのこぼれ球を詰められたときにももう一度反応できるのだ。これは彼の大きな武器である。

 

↓ 彼の良さがよく出たシーン

 

また、姿勢の良さを1対1の場面でもしっかり維持できるのも彼の良さだ。

至近距離からシュートを打たれるとき、ビビッて後ろに倒れてしまう選手はプロであっても多いものだ。しかし、ムッソは必ずボールホルダーに大してず体を垂直に起こしたままで飛び込んでいく。この勇気はみんなが持っているものではない。

上半身を起こし、腕はリラックスさせたまま足をたたんで足元を通されないようにするのがムッソのブロックの特長。腕を広げる選手が多い中で腕を伸ばしきらないのは、シュートに反応する余地を残すためだろう。

実際、ブロッキングの体勢に入ったあとから上半身のみで反応してセーブした場面もみられる。彼のブロッキングはハイレベルだと評価していいだろう。

 

ただし、ムッソには明確な弱点もある。それが、細かいポジショニングの修正を怠りがちなことだ。

いいGkは、ボールや相手、味方の細かい場所の動きに合わせて立ち位置を微調整してシュートに備えるものだ。ムッソはこの微調整があまりできていないがために失点してしまう場面も多いのだ。

ラウタロが得点を決めたシーン。
ラウタロはひとつ内側に持ち出してシュートコースを作り出した。ムッソはこれに反応できておらず、そのままステイの選択している。DFがシュートコースを切ってくれているためニアにシュートが飛んでくる可能性は低い。このポジショニングだとニアに寄りすぎだ。
あと一歩ステップを踏めていれば、ギリギリ触れたかもしれない。

クロスボールが横に流れていく場面もしかりで、ムッソは横にボールが動いた時のポジショニングの修正に弱みを抱える。ここが改善されれば、さらに失点数を抑えられるように見えるところだ。

 

ビルドアップに関しては、プレス耐性の高さが際立つ。相手がプレスに出てきても全くあわてることがなく、冷静に味方につなぐことができる。

かなりの勢いでプレスをかけられた場面。
ムッソはまったくあわてることなくサイドにボールを逃がした。

レジスタとしてビルドアップの中心を担うほどの戦術眼は備えていないものの、ビルドアップに参加しボールの逃げどころになるところまではハイレベルにこなすことができるだろう。

 

現在はポジションを失ってしまっているムッソだが、実力者であることは間違いない。クラブが変われば、まだまだ正守護神を任せられる器だろう。

カルネセッキとのポジション争いに負けてアタランタでのサイクルは終わった感がある。シーズン終了後には新天地を求めることになるのではないだろうか。オフ・シーズンにも注目の選手である。

 

 

 

センターバック

マンツーマンディフェンスでは、動き回る相手アタッカーにしつこくついていけるだけの機動力が求められる。マンツーマンがトレードマークのガスペリーニボールを体現するアタランタのCB陣がみなマトリックスの右側に分布したのは偶然ではない。

ヒエン、ジムシティはともにビルドアップ能力が低いかわりに、そのウィークポイントを補って余りある対人守備力を備えている。彼らはモダンサッカーではなかなか起用しづらいタイプなのだが、ガスペリーニの3バック中央はこうした選手たちにとって理想郷である。

モダンなスタイルでありながら、鬼対人型CBにも活きる場所を提供しているガスペリーニボールは興味深い限りだ。

 

 

ジョルジョ・スカルビーニ

地元のパラッツォーロというサッカースクールでプレーを始めたスカルビーニは、10歳のころブレシアの下部組織に加入し2年間プレー。そして、中学年代に上がるタイミングでアタランタのユースに加入した。

各年代のイタリア代表に選出されながら順調にステップアップしていったスカルビーニは、21-22シーズンに17歳でプロデビューを果たすと、初年度から21試合に出場して注目を集めた。

昨季はシーズン前半に主にMFとして起用され、後半戦には3バックの一角で完全に定位置を確保して今シーズンに至っている。

すでにA代表デビューも済ませており、2023年のイタリア人ゴールデンボーイ賞に選出されるなど、若手イタリア人DFとして頭一つ抜けた存在である。

そのプレースタイルやフィジカル的特性が類似しており、同じアタランタユース出身であるアレッサンドロ・バストーニに例えられることが多いスカルビーニ。だが、本人はチアゴ・シウバにインスピレーションを得ていると語っている。

ちなみに、背番号42をつけてプレーしているスカルビーニだが、これは家族全員の誕生日を合計した数字だからとのことだ。

 

スカルビーニのベースにあるのは、恵まれたフィジカルだ。

194cmとそもそもが長身である上に、跳躍力にも優れているスカルビーニは、空中戦に非常に強い。

セットプレーではターゲットとしても重要な役割を果たすことができる。

 

これだけの長身であるにもかかわらず、スカルビーニは機動力にも優れている。

守備的MFとしての起用にも耐えうるだけの持久力アジリティ、さらにはダッシュ力にも優れている。194cmの長身でこれだけ機動力と軽やかな身のこなしを備える選手は珍しい。

裏のスペースに抜けてきた相手アタッカーと競走になったとしても負けずについて行けるだけのスプリント力は、現代サッカーにおいて大きなアドバンテージだ。

 

これだけを聞くと、スカルビーニは細身ゆえにこれだけの軽やかさを持っており、パワーでは見劣りする部分があるように思える。

しかし、スカルビーニがフィジカルコンタクトでバランスを崩す場面は皆無なのだ。

たとえばスカルビーニがスタンディングタックルを相手に見舞うとき、決してパワーを持って思いっきりぶつかっているようには見えない。むしろ脱力しているようにさえ見える。でも、どういうわけか相手が吹っ飛ぶのだ。中国武術のような何かを身に着けているのだろうか。

細身でこれだけコンタクトに強いのは、ディバランスが並外れている証拠だろう。これも彼の恵まれたフィジカルのなせる業である。

 

 

さらに、スカルビーニはもろもろのテクニック面でも非常に優れた能力を持っている。

非保持面でいえば、スカルビーニはクリーンさを売りにしている。

ファウル数は41とチーム内で2番目の多さにもかかわらず、今季ここまでに受けたイエローカードは2枚のみ。チャレンジがフェアだからこそ、カードをもらわないで済むのである。

スカルビーニは、先輩CBたちと比べると相手アタッカーとのコンタクトが少ない。ボールにのみチャンレンジすることを意識しているように見える。

194cmという長身のスカルビーニは、相手に背負われていても足を伸ばしてボールをからめとれる。だから、相手に無駄なコンタクトをする必要がないのだ。

ゆえにスカルビーニのタックルはほとんどがスタンディングタックルであり、それも相手に対してコンタクトするのではなくボールに対してチャレンジするのだ。

 

さらに、スカルビーニはインターセプトの達人でもある。予測力と機動力に優れ、相手の縦パスが入ってくるタイミングでスッと前に出て奪い去る。インターセプトは最もクリーンなボールの奪い方であり、これが並外れているのもスカルビーニのクリーンさを際立たせている。

 

さらに、ボールを奪った後のドリブルもスカルビーニの武器だ。機動力とテクニックに優れるスカルビーニは、巧みに相手をかわして持ち運ぶ。こうしたダイナミズムも彼の持ち味だ。

 

また、長短のパス精度も高く、組み立てでの貢献度も高い。3バックの左で起用されることが多い今季のスカルビーニは、低い位置からできるだけ味方の足元にボールを届けようという意識がうかがえる。

パスコースが見えればグラウンダーのボールでシンプルに配球し、前進を助けている。すべての選択肢が消されているときはロングボールで深さをとる、あるいはサイドチェンジで局面を変える印象だ。

まだ4バックの一角でから単独で試合を組み立てるほどのレジスタ性能を備えているようには見えない。ここは環境が変わってから磨かれていくのではないだろうか。

 

現在まだ20歳でありながら、現代CBに求められる能力をすべて、それも高次元に兼ね備えているスカルビーニ。イタリアどころか、世界中で見ても今後世界のトップを争うべき資質を備えたプレーヤーだといえる。

彼がキャリアを通じてどれだけのことを成し遂げてくれるのか、今から楽しみである。

 

 

ベラト・ジムシティ

アルバニア人の両親のもとスイスで生まれ育ったジムシティは、名門チューリッヒの下部組織を経てプロデビュー。すぐさま主力に定着し、4年間で公式戦135試合に出場した。

2016年冬、ジムシティはアタランタへ移籍する。翌夏からセリエBのアヴェッリーノ、セリエAのベネベントへのレンタルを経て2018年にアタランタのスカッドに加わったジムシティは、今季6シーズン目を迎えている。

ユース年代ではスイス代表としてプレーしてきたジムシティだが、A代表は両親の出身地であるアルバニアを選択した。

このアルバニア代表は年々力をつけてきており、今夏行われるEURO2024はポーランドとチェコを抑えて予選首位通過での参戦となった。セリエAでプレーする選手も多く、個人的に注目したい国である。

そのアルバニア代表でキャプテンを務めるのがジムシティだ。最終ラインの大黒柱として絶対的な地位を築いている。

 

そんなジムシティの最大の強みが、対人守備である。

相手の動きに応じてアクションを起こすマンツーマンでは、リアクションの早さと絶対的なフィジカルが求められる。マンツーマン守備をベースに置くアタランタにおいて、ジムシティにはこれを忠実に遂行できるだけのフィジカル性能がある。

アジリティに優れるジムシティは、マッチアップ相手の動きにしつこくついて行き、短い距離を保つ。そしてボールが入れば、体を寄せてタイトな守備を行う。いわゆる「ハードマーカー」だ。

可能ならインターセプトを狙う意識も強く、今季のインターセプト数はここまでセリエA3位となっている。

 

さらに、アジリティだけでなくスプリント能力にも優れるジムシティは、相手アタッカーとの競走に負けない。また、味方が裏を取られたときのカバーリングにも優れている

 

そして、背走しながらのスライディングタックルの技術に優れているのも彼の強みだ。確実にボールを捉えてはじき出す。

また、滑るかどうかの判断も正確。危ないと思えば無理に滑ることはせず、ここぞというタイミングでのみスライディングを見せる。そのためラフなプレーが少なく、ファウルやカード数も少なくなっている。

 

このスライディングタックルはシュートブロックにも転用される。ここぞのタイミングでコースに体を投げ出してシュートを弾き返す。今季ここまでのブロック数はセリエAで2位の数字だ。

 

また、地上戦だけでなく空中戦にも強いのがジムシティ。相手に密着して動きを制限しながらはじき返すスキルを習得しており、長身かつ駆け引きがうまいのだ。データで見ても、たびたび空中戦勝利数や空中戦勝率のスタッツでセリエA上位にランクインしている。

 

このように、地空ともに全般的な守備能力が高いジムシティ。一方で、保持時の貢献度には限界がある。

ビルドアップ能力に関しては凡庸で、フリーな味方にシンプルなパスを当ててボール循環に貢献するところまでが彼の役割。長短のパスの使い分けや、ドリブルで局面を動かすといった高度なスキルは持ち合わせていない。

総合的な守備能力とフィジカル能力が非常に高い一方、保持時の貢献度は限られているジムシティ。典型的な「ハードマーカー」に分類されるだろう。

 

昨季までは3バックの左を主戦場としていたジムシティだが、今季は3バック中央で起用される試合も多かった。アタランタのCB陣の中でも最も対人能力を強く求められるこのポジションへの適性も示したことで、さらに評価を高めている。

トロイ、デローンに次ぐ第3キャプテンとしてチームを引っ張る存在であるジムシティ。セリエAでは過小評価されている印象が強いが、今夏のEUROで活躍して評価を高めてほしいものだ。

 

 

セアド・コラシナツ

ボスニア人の両親のもとドイツで生まれたコラシナツは、地元のカールスルーエSCで8年間プレーした。

高校年代に上がるタイミングでホッフェンハイムのユースに加入すると、そこからシュツットガルト、シャルケと1年ごとに強豪クラブのユースを渡り歩き、11-12にはシャルケU-19でユースレベルのドイツリーグで優勝を果たしている。

これが評価されて翌シーズンからプロ契約を締結したコラシナツは、5シーズンシャルケで活躍。最終シーズンには3ゴール8アシストの数字を残したことが評価され、翌年からイングランドのアーセナルに移籍して3年半プレーしている。

アーセナル退団後はシャルケ、マルセイユを経て今季からアタランタに移籍しイタリアに活躍の舞台を移している。

 

コラシナツといえば、アーセナル時代のチームメイト、エジルが刃物を持った2人組の強盗に襲われた際、助手席に乗っていた彼が素手で撃退したエピソードがあまりに有名だ。

見るからに頑強なコラシナツを一目見れば、刃物を持った強盗がビビるのも納得である。

 

コラシナツは、ピッチ上でも相手アタッカーを撃退し続けるハードマーカーとして活躍している。

本来は左サイドバックながら、アタランタ加入後は3バックの左に固定されているコラシナツ。アタランタの左サイドにしっかりと蓋をしている。

彼のベースにあるのは、優れたフィジカル能力だ。筋肉で武装した屈強な肉体を持っており、ボディバランスにも優れているためデュエルでは無敵だ。

さらに、重量級でありながら機動力にも優れている。相手アタッカーに走り負けないスプリント能力はもちろんのこと、切り返しについて行くアジリティもハイレベル。ゆえに、地上戦には絶対の自信を持っている。

 

優れたフィジカルを持っているコラシナツだが、それに頼らず基礎的な原則を徹底しているのも好印象だ。

ボールの移動中に一気に距離を詰め、相手がパスを受けて前を向いたらしっかりとストップして次の動きに備える。そして、相手の持ち出しに合わせてついて行き、タックルを食らわせるのだ。

跳躍力には劣るため、CBとしては空中戦に不安があるため、4バックの中央で起用するのは困難だろう。

しかし、アタランタのように3バックかつマンマークを採用しているチームでは、対人の鬼として活躍できるのだ。戦術とのかみ合わせもあって、アタランタにおけるコラシナツは大きな輝きを見せている。

 

保持時についても、コラシナツは大きな貢献を見せている。

彼は意外にもビルドアップ能力に優れており、後方からの球出しでは質の高いくさびを供給して攻撃のスイッチを入れている。

レンジの長いボールはほとんど蹴らず、ショートパスによって相手のプレスを打開していくプレーは見ていて気持ちがいい。

コラシナツがボールを持っている場面。
パシャリッチの動き出しを認知し、スルーパスを供給。
相手CBとの1対1の場面を作り出した。

 

テクニックと戦術眼を持っているコラシナツだが、それ以上に目を引くのがプレス耐性の高さだ。

相手からの圧力を受けてもあわてることなく、適切な選択ができている。ビルドアップでの貢献度はなかなかに高いといえるだろう。

ポジティブトランジションの場面。複数人の相手がゲーゲンプレスに出てきている。
冷静にフリーのパシャリッチにボールを預け、相手のゲーゲンプレスを打開した。

 

左サイドバック起用時には持ち前の走力を活かしたダイナミックな上下動で活躍していたコラシナツ。だが、3バックで起用されている今季は、後方でしっかり構えて相手の攻撃を跳ね返しつつ、適切な配球で貢献するという新たなスタイルを確立した感がある。

FBref.comより、今季のコラシナツのヒートマップ。敵陣でのプレーは限定的であることがよくわかる。

ガスペリーニのアタランタとの相性は抜群で、新たな全盛期を迎えそうな感があるコラシナツ。継続してセリエAで見たい選手だ。

 

 

ラファエウ・トロイ

ブラジル出身のトロイは、ゴイアス・エスポルテでプロデビューを果たした。

ここでゴイアス州リーグ優勝に貢献して注目を集めると、2012年には名門サンパウロに加入。2014年にASローマに半年だけレンタルされたのを除くと3年間を過ごした。

そして2015年夏、トロイはアタランタへ移籍する。以降アタランタ一筋でプレーし続けており、今季で9シーズン目を迎えた。現チームのキャプテンを務める通り、クラブの象徴的な選手となっている。

U-20まではブラジル代表としてプレーし、南米選手権優勝、U-20W杯準優勝を経験したトロイだが、A代表はイタリアを選択。2021年にデビューして以降継続して召集されている。

 

トロイはブラジル出身のCBらしく、攻撃が大好きなCBである。3バックの右を定位置としながら、さかんにポジションを外して攻撃参加する。

注目すべきはそのプレーエリアの広さだ。アウトサイドだけでなくインサイドにもさかんに侵入するトロイは、ハーフスペースで中途半端な立ち位置をとって相手守備ブロックを混乱に陥れる

FBref.comより、昨季のトロイのヒートマップ。右サイドのアウトサイドレーンとハーフスペースに広く分布しているほか、ペナルティエリア内にもヒートマップが分布している。

 

さらに、そこから前方へ移動しゴール前に侵入することも少なくない。相手にマークにつかれることなく侵入したトロイは、しばしばフィニッシュにも絡む

 

↓ なぜかストライカーのようにこぼれ球に詰めるトロイ。

 

神出鬼没でフリーダムに思えるトロイだが、その動きは合理的であることがほとんどだ。というのも、トロイはスペースに対して動いているのだ。

味方が空けたスペースや、敵が空けたスペースに対してランニングし、ポジションをとる。

はたから見ているとなぜそこにいるのかわからないかもしれないが、よく見てみるとその動きは理にかなっている。その結果として、普通はCBがいない場所にたどり着いているのだ。

このポジショニングのセンスを持っているCBはなかなかいないだろう。

ボールを持ちながら周囲を認知するトロイ。
ボールを預けた後、空いたハーフスペース高い位置へと進出していく。
結果として、最前線にトロイがいる格好に。

 

また、空中戦の強さもトロイの武器だ。185cmとCBとしては平均的な身長であるトロイだが、跳躍力に優れており競り合いを制することができる。空中でバランスを崩さないのもGOODだ。

これを活かし、セットプレーではたびたびターゲットとして重要な役割を果たしている。

 

非保持に関しては、他のCB陣と同じくタイトな対応が持ち味だ。相手との距離を近く保ち、ボールが入れば自由を奪うべく積極的にタックルを仕掛けていく

ただ、その積極性が裏目に出る場面が他のCBたちよりも多い印象だ。相手が前向きで仕掛けられる状態にあるにもかかわらず、足を出して簡単にかわされる場面が散見されるのは要改善だろう。

キエーザとの距離を詰め切る前に前を向かれてしまった場面。
状態が悪いにもかかわらず突っ込んだ結果完全にかわされ、危険なシーンとなった。

 

33歳とここからキャリア晩年に差し掛かっていくトロイ。このままアタランタでプレーを継続し引退するのか、それともプロビンチャのDFリーダーとなるのか、はたまた母国でキャリア最後の時を過ごすのか…。今後の身の振り方にも注目したいところだ。

 

 

イサク・ヒエン

スウェーデンのストックホルムで生まれたヒエンは、地元のサッカークラブでサッカーを始め、AIK、ジュルスホルム、ヴァサルンドと3つのクラブのユースを渡り歩いてプロデビューしている。

ユースから通じて21歳まではFWとしてプレーしていたというヒエン。プロ契約後のセンターバックへのコンバートを機にパフォーマンスを上げ、2021年には国内屈指の強豪ユールゴールデンに引き抜かれる。

そして翌年にはセリエAのエラス・ヴェローナに加入しここでも好パフォーマンスを見せると、今冬にアタランタに引き抜かれて現在に至っている。

母親はスウェーデン人、父親はガーナ生まれだがその両親がブルキナファソ人ということで、3ヵ国から代表を選択する必要があったヒエン。特にブルキナファソからは熱心に勧誘されていたようだが、最終的にはスウェーデンを選択している。

 

ヒエンのベースとなっているのは、優れたフィジカル性能だ。191cm・88kgと恵まれた体格でありながら、身のこなしも軽やか。スプリントアジリティといった機動力に関しても、非常にハイレベルである。

この恵まれたフィジカルを活かし、3バックの中央にどっしりと構えて相手のエースストライカーを封殺するのが、ヒエンに求められている唯一にして最大のタスクである。

 

ヒエンは相手の1トップに対してしつこく追いかけまわし、ボールが入ってくれば潰しに入る。

このとき、相手の方が明らかに先にボールに触れるときは無理をせず、相手の出方を見てから対応する余裕を持っているのがヒエンの特長だ。

相手のストライカーにボールが入る場面。ヒエンは少し距離を置き、相手の出方をうかがう。
相手のファーストタッチが大きくなったのを見て素早くボールと相手の間に体を入れてクリーンにマイボールにした。

 

上の場面のような対応がヒエンの典型的な対応。まず相手のファーストタッチを待って、タッチが大きくなった瞬間に体を入れて完全にマイボールにする。あるいは、相手がボールを収めたときには体を寄せて自由を奪う。

相手の出方を見て、その後から対応しても無理が効くフィジカルを後ろ盾にした、余裕ある対応である。

これをフィジカルを武器とする相手に対してもできるのだからすごい。30節ナポリ戦では、セリエA最強のモンスターストライカー、オシメンを完封して見せた。ヒエンのポテンシャルを存分に見せつけた試合だった。

オシメンにボールが入る場面。ヒエンはアーリーコンタクトでオシメンのバランスを崩させている。
後にボールが流れ、競走に。
競り合いながらもしっかりと体を入れ、完全にマイボールとした。

 

昨季までは粗削りな印象も否めなかったが、今季は体を入れて完全にマイボールにする技術を体得したヒエン。アタランタの3バック中央を任されるプレーヤーとしては、歴代で最もクリーンな守備を特長とする選手なのではないだろうか。

FBref.comより抜粋。

上の表の一番左の行は、イエローカード数を示したものである。エラス・ヴェローナ初年度の22-23にはシーズン通して9枚のイエローカードを頂戴したヒエンだが、今季はエラスで1枚、アタランタで1枚の2枚のみしかカードを受けていない。

明らかにラフなプレーが減ったことがデータにも表れている。守備技術の向上は明らかだ。

 

一方、足元のテクニックは現代CBとしては低い部類に入るため、保持時の貢献度は限定的だ。

ロングフィードやドリブルによる運びはほとんど見られず、現在のアタランタではフリーな味方にショートパスを預けるところまでが彼に求められるタスクとなっている。

マトリックス上では、かなり極端な「ハードマーカー」に分類できるだろう。

 

とはいえ、保持時の不足を補って余りあるほどのボール奪取力を備えるヒエン。このプレーを継続していけば、欧州中から注目を集めることは間違いない。

その試金石となるのが、ELのリバプール戦だろう。現在プレミアリーグ首位のチーム相手にどれだけのパフォーマンスを見せてくれるか注目したい。

 

 

サイドバック

アタランタの両サイドバックは、ビルドアップの早い段階で高い位置に上がっていく。タッチライン際でめいっぱい幅をとることが求められているからだ。

マトリックス上でプレーエリアが高いと分類したルッジェーリ、ザッパコスタが最も起用されている2人であることは偶然ではないだろう。

現状では得意なプレーエリアが低いホルムだが、資質的にはより高い位置でのプレーでも輝けるはず。ガスペリーニの戦術によって新たな側面が開拓されることに期待したい。

 

マッテオ・ルッジェーリ

9歳でアタランタの下部組織に加入して以降アタランタ一筋で育ってきたルッジェーリ。

20-21シーズンにトップチームデビューを果たすと、21-22シーズンにはサレルニターナにレンタルに出されて武者修行に励んだ。

22-23にはアタランタに戻ったものの、スタメン出場は8試合と出番の確保に苦しんだ。

翌季は環境を変えないと厳しい状況が続くと思われたが、今季は開幕から継続してスタメン出場を続けており、ここまでチームで3位タイとなるリーグ戦27試合出場を果たしている。

 

ルッジェーリ最大の武器がクロスボールだ。

左利きのルッジェーリは、高精度のキックを装備している。これを活かし、左サイド高い位置でボールを持てば積極的に放り込んでチャンスメイクしていく。

彼が優れているのは、目の前に相手がいてもそれを打開してクロスボールを送り込めることだ。

といってもドリブルでかわすわけではない。ひとつ前に持ち出して角度をズラし、空いたコースからクロスを通すのだ。

このズラしてからクロスを上げるまでのスピードが非常に速いがために、相手は対応に間に合わないのだ。ずらしてからのワンステップで鋭くかつ正確なボールを蹴れる選手はそういるものではない。

 

精度の高いキックを持つルッジェーリは、コーナーキッカーも任されている。

アウトサイドレーンからチャンスを作り出す飛び道具として機能しているのだ。

ハイエリアからでもチャンスを作る能力が高く、「クロッサーSB」に分類できるだろう。

SofaScoreより、今季のルッジェーリのヒートマップ。敵陣に行くほどアウトサイドでのプレーが多くなっていること、ペナルティエリアの高さでもヒートマップが分布しているのが特徴的。ハイエリアかつアウトサイドを得意とすることがよくわかる。

 

さらに、ルッジェーリはフィジカルを活かした対人守備にも自信を持つ。

187cm・79kgとサイドバックとしては大型なルッジェーリは、対面のアタッカーに対してしつこいチェイスをかけて、自由を奪う。

しっかりと距離を詰めているため、パスブロックの数が多くなっている。今季ここまでチーム2位の数字だ。

さらに、相手がドリブルで仕掛けてくればタイミングを合わせて体を入れ、クリーンにボールを奪いきる能力も高い

長身を生かした空中戦も魅力で、地空ともに対人守備が強いと評価できるだろう。

 

さらに、危機察知能力が高いルッジェーリはカバーリングも得意。センターバックが裏を取られたときに戻ってきたルッジェーリがボールを奪う場面は多い。

守備面でも大きな貢献が見込める、堅実なサイドバックだといえるだろう。

 

攻守ともにストロングポイントを持つルッジェーリだが、課題も持っている。

ひとつは後方からの組み立ての貢献度が高くないことだ。

特に目立つのはプレス耐性の低さ。相手からの圧力を感じるとあわててしまい、パス精度が落ちたり、相手の動きが見えないままにパスを出してインターセプトされる場面が散見される。

相手からの圧力を受けてバックパスをしようとするルッジェーリ。
味方の動きを把握できておらず、パスがずれた。
相手にボールを奪われ、被カウンターとなった。

せっかくパス精度が高いのだから、戦術眼やプレス耐性などを向上させればビルドアップでも大きな貢献を果たせるはず。現状のままではもったいないだろう。

後天的に伸ばせる分野だけに、今後の成長に期待したい。

 

また、ルッジェーリは足元に自信があるゆえに、裏へのランニングを怠りがちだ。足元にボールを引き出そうと足を止めていることが多い。

ランニングのタイミングやコース取りなどを覚えて実行できれば、より相手にとって対応困難なサイドバックになれるはず。ここも今後の成長に期待したい部分だ。

 

高精度のクロスボールと堅実な対人守備という二面性を持つルッジェーリ。まだ21歳で伸びしろも残していることから、今後アッズーリでの活躍も見込めるのではないだろうか。

ライバルとなるであろうディマルコにも劣らぬ左足を持っていると思う。その他の能力を伸ばして、ぜひアッズーリの一員となってほしいところだ。

 

 

ダビデ・ザッパコスタ

ザッパコスタは、イタリア4部相当のリーグに所属していたイソラ・リリというクラブでプロデビュー、そこからイタリア代表にまで上り詰めた苦労人だ。

2011年夏に3部所属のアヴェッリーノに加入すると、12-13にクラブのセリエB昇格に貢献。13-14にも継続して活躍し、セリエB屈指のウインガーとして注目された。

そう、キャリア初期のザッパコスタはウインガーであった。彼がサイドバックとしてプレーし始めたのは、アタランタに加入してからだ。

サイドバックとして評価を高めたザッパコスタは、その後トリノ、チェルシー、ローマ、ジェノアを渡り歩いた。そして2021年夏、アタランタに帰還して現在に至っている。

 

ザッパコスタのプレーに通底しているのは、アグレッシブな姿勢だ。

特にボール保持時には強気の仕掛けが際立つ。サイドバックながらドリブルに関するスタッツでチーム内でもトップクラスの数字をたたき出しており、運ぶドリブル、仕掛けるドリブルの両方に対して積極的にトライしている。

さらに、ザッパコスタは元ウインガーなだけあって、ドリブルで仕掛けてからシュートにまでつなげる意識が強い。事実、チームで4番目に多いシュート数をたたき出している。

過去4シーズンのスタッツを見てみると、うち3シーズンで得点数がアシスト数を上回る。点が取れるサイドバックとして鳴らしているわけだ。

understat.comより、ザッパコスタのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

上の図を見てみると、ザッパコスタのゴールのほとんどが期待値が小さいものであることが特徴的だ。ペナルティエリア外からのシュートも多い。

ザッパコスタが最も得意とするのは、アウトサイドでボールを受け、そこからピッチを横断するようにカットインし、コントロールショットでゴールの四隅を射抜くというものだ。

まさにウイング顔負けのカットインシューターというわけだ。サイドバックでこれをできる選手はそうそういない。ゴラッソ製造機である。

 

また、シンプルなコントロールショットも得意技。そのフィニッシュセンスは元ウインガーであることを納得させてくれる。

 

右サイドで起用されることが多いザッパコスタだが、右利きのカットインシューターであるという特性ゆえに左サイドで起用された方が怖さが出る印象だ。

右サイドで起用されたときには、縦への推進力とクロスボールでチームに貢献する。

もともとはクロスボールは苦手項目だった印象だが、年々改善中。彼のクロスから生まれるチャンスも多くなっている。

 

このように、攻撃の最終局面での貢献度が高いザッパコスタ。一方で、ビルドアップでの貢献度は高いとは言えない。

ビルドアップへの参加は限定的で、早い段階で高い位置をとることが多い。それは、彼が攻撃を操る技術と戦術眼を持っていないからだ。司令塔としての素養には恵まれていないと言っていい。

また、ポジショニングの柔軟性もあまりない。インサイドに侵入して相手を幻惑したり、オフ・ザ・ボールのランニングでチャンネルを突いたりと言ったセンスは持ち合わせていないのだ。

FBref.comより、今季のザッパコスタのヒートマップ。アウトサイドレーンにのみヒートマップが分布しているのが特徴的だ。

 

高いエリアで仕掛けとフィニッシュで貢献する、ウインガー型サイドバックと言えるザッパコスタ。クロスよりもドリブルを得意とすることから、「ドリブラーSB」に分類できるだろう。

 

アタランタ復帰後は継続して定位置を確保しているザッパコスタ。いまやチームに欠かせないひとりに成長している。

アタランタには得点が取れるサイドバックが多く在籍してきたが、そんな中でもゴールセンスは一級品。アタランタの試合では、彼の右足に要注意だ。

 

 

エミル・ホルム

地元の小さなクラブでサッカーを始めたホルムは、12歳のころヨーテボリの下部組織に加入してそのままトップデビューを果たしている。

2年後、ホルムはデンマークリーグのスナユスケに加入、ここでも2シーズンを過ごしている。

ちなみに、デンマーク時代にホルムが放ったフリーキックが枠を外すどころか場外へ消えてしまい、ネット上で話題となった。日本でもサッカー版場外ホームランとして記事になっている。

https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=95070

2022年夏にスペツィアのスカッドに加わるとすぐさま定位置を確保し注目されたホルムは、翌年にはアタランタへステップアップしている。

 

ホルムのベースとなっているのは、恵まれたフィジカルだ。

191cm・83kgとサイドバックとしては極めて大柄なホルムは、屈強なフィジカルを活かし地空ともにデュエルで相手を圧倒する。

さらに、走力にも優れている。ショートスプリント、ロングスプリントともにハイレベルで、試合終盤まで運動量が落ちない持久力も素晴らしい。ホルムは優れたアスリートなのだ。

 

このフィジカルを活かした対人守備がホルム最大の武器だ。

特に地上戦の1対1は鉄壁。相手のエースを封じ込める仕事に関しては達人の域にある。

 

↓ ラファエウ・レオンを完封しアシストも記録したミラン戦のタッチ集。

ホルムは1対1において、思いっきり内を切ってカットインの選択肢を消すことで、相手のウインガーに縦のスプリント勝負を強いる。そして、持ち前のショートスプリントで振り切られることなくついて行き、体を入れてボールを奪い去るのだ。

自分の得意なパターンに持っていかせる駆け引きに長けており、そのパターンにハマればほぼ負けなしだ。

現時点でもセリエA屈指の対人守備力を誇るサイドバックだと評価していいだろう。

 

攻撃面では、持ち前の走力を活かした上下動で貢献する。

特に、ボールを持った時の推進力あるドリブルは破壊的。スピードとフィジカルが融合したゴリブルで数十メートル運ぶさまは、テオ・エルナンデスにも重なる。

 

↓ 得意のゴリブルでPKを奪取したシーン。

 

アウトサイドでの上下動には優れる一方、ボールタッチやパス精度、戦術眼は凡庸なため、インサイドでのプレーや後方からの組み立てへの参加は得意としていない

スペツィア時代にはビルドアップの際タッチライン際まで目いっぱい張り、ビルドアップが詰まった時の逃げどころとなっていた。ホルムは空中戦を得意とするため、ロングフィードのターゲットとなるタスクに優れているのだ。

FBref.comより、今季のホルムのヒートマップ。ペナルティエリアよりも外側、アウトサイドレーンにのみヒートマップが分布しているのがよくわかる。

個人的には、これをゴール前で発揮できればゴセンスのようなターゲット型SBになれるのではないかと考えている。逆サイドのルッジェーリはクロスボールの精度が高いため、ホットラインを構築できそうだ。

また、せっかくの走力があるにもかかわらず、1列前のウイングがボールを持った時のサポートランのタイミングが悪いのももったいないところだ。

 

高い守備能力と献身的な上下動が武器のホルムは、完成度の高い古典的サイドバックとまとめられる。「ストレートランナー」に分類できるだろう。カウンター型、もしくはダイナミックな戦術を採用するチームでは存在感を発揮するのではないか。

ただ、ポテンシャル的にはもっとゴール前での仕事に期待したいところ。筆者個人的には、テオの推進力とゴセンスのゴールセンスを併せ持ったサイドバックとして大成してほしいと考えている。

今後の成長に期待したい。

 

 

 

ミッドフィルダー

マトリックスの端に位置する選手が多くなったアタランタのMF陣。とはいえ、全体的に見ればオフ・ザ・ボールに特長のある選手が多くなっている。

マンツーマンディフェンスを原則とするだけに、機動力を備えているのはアタランタのMFの大前提。ゆえに、保持時にもランニングで変化をつけられる選手たちがそろう。コープマイネルスも、オフ・ザ・ボールのランニングを怠らない選手だ。

異端児的な存在なのがミランチュク。守備時の強度に不安があり、ボールを持ってこそ輝く古典的なファンタジスタだ。

選手の組み合わせによって大きく変化を出せるアタランタのMF陣。スタメンに誰が起用されるかで、その試合への意図が見えてくるかもしれない。

 

 

トゥーン・コープマイネルス

AZのユース一筋で育ってきたコープマイネルスは、そのまま2017年にプロデビュー。2021年に退団するまで、ユースから通算で12年間をAZで過ごしている。

19-20シーズンには21歳にしてキャプテンに就任し、20-21シーズンにはMFながら15ゴールを記録してエールディビジ最優秀選手賞を受賞。オランダリーグを代表する選手として名を上げた。

多くのビッグクラブが新天地候補として上がる中、コープマイネルスが加入したのはセリエAのアタランタだった。

今季で在籍3シーズン目を向かえており、ここまで105試合27ゴール10アシストを記録している。

初年度こそ4ゴールだったが、22-23には10ゴール、今季ここまでで11ゴールと、オランダ時代から継続して点がとれるMFである。

 

オランダ時代にはCBもこなす守備的MFとしてプレーしていたコープマイネルスだが、アタランタにやってきてからは一転してトップ下をメインポジションとする攻撃的MFとなっている。

彼の強みは、大きく2つのベースに支えられている。

ひとつは高精度の左足キックだ。特にロングレンジのキックに優れている。

もうひとつはスペースを突く意識だ。足元にボールを要求して足を止めてしまう攻撃的MFはよくいるものだ。特に、キックに自信を持つタイプならなおさらである。だが、コープマイネルスはその類ではない。スペースを突き、ボールを引き出す意識も持ち合わせているのだ。

裏へのランニングでデローンのロングフィードを引き出すコープマイネルス。

 

コープマイネルスの得点力も、この2つのベースに支えられている。

彼の得点パターンは主に3つだ。

ひとつはミドルシュート。ペナルティエリア外からでもゴールの四隅を射抜く正確かつ強烈な左足を装備しており、エリア外からでも積極的に狙っている。

アタランタに加入してからの3シーズンでペナルティエリア外から8つのゴールを記録しており、現在のセリエAで最高のミドルシュートの名手と言って差し支えない。

 

2つめはゴール前に走り込んで味方のラストパスに合わせる形。ミドルシューターながらゴール前に走り込んでターゲットになれるのは稀有な存在だといえる。

意外にも空中戦を得意とするコープマイネルスは、相手との競り合いを制してヘディングでゴールを決めることもできる。

 

3つめはプレースキック。特にPKに関してはオランダ時代から名手として知られており、AZでの4シーズンでPKから20ゴールを決めている。

また、直接フリーキックもうまく、ジェノア戦では見事なゴールを決めた。

understat.comより、コープマイネルスのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。全体に期待値が小さいシュートがほとんどを占めているのが特徴的で、難しい局面からゴールをこじ開けてくれる頼れる選手であるといえる。

 

得点能力の高さが際立つコープマイネルスだが、チャンスメイクでの貢献度も高い。

数字だけを見れば、3シーズンで7アシストとトップ下としては少なく思える。しかし、期待値を見ると印象が変わる。

3シーズン通算のアシスト期待値は16.5で、実際のアシスト数を倍以上上回っている。プレーの内容を見れば、実際の数字上よりも非常に多くのチャンスを作り出しているということだ。

トップ下をベースポジションとしているコープマイネルスは、そこからサイドに流れて崩しに絡むプレーを得意とする。

SofaScoreより、今季のコープマイネルスのヒートマップ。トップ下がベースポジションのコープマイネルスながら、ヒートマップは両サイドに分布していてセンターレーンでのプレーは少ないことがわかる。彼はライン間でクオリティを発揮する従来的なトップ下ではない。中央で起用することで彼のダイナミズムを活用し、両サイドでクオリティを発揮してもらうのがガスペリーニの意図なのではないか。

 

サイドに流れてからのコープマイネルスは、クロスボールでチャンスを演出する。コーナーキックやサイドからのフリーキックを含め、得意の左足キックで相手のブロックの外からチャンスを作り出していく。

さらに、コープマイネルスは意外にもドリブル突破を得意としている。

ドリブル突破試行数はデ・ケテラーレ、ルックマンというウイングタイプの2人に次いで多く、タッチライン際から単騎で局面を打開するプレーも見せてくれるのだ。

タッチライン際で縦に突破すると見せかけて、いったんストップ。
チャンスだと見た相手DFが、足を出してくる。
これをダブルタッチでかわし、突破した。

 

キック、ドリブル、オフ・ザ・ボールと攻撃面に関しては何でもできるコープマイネルス。

ウィークポイントを上げるとすれば、非保持時の強度に若干の不安があるところくらいか。

守備的MFとしてプレーしていたオランダ時代にも、デュエルよりはインターセプトなどの読みを活かしたプレーで貢献していたようで、コンタクトプレーで競り負ける場面も散見される

マンツーマンディフェンスを基本とするガスペリーニは、このウィークポイントも考慮してコープマイネルスをより攻撃的なポジションに置いたのかもしれない。

 

すでにシーズン終了後の退団意向をクラブに伝達済みとされているコープマイネルス。ステップアップを希望しているようだ。

イタリア国内の強豪クラブの他、プレミアリーグのクラブからも注目されており、シーズン終了後の身の振り方にも注目したいところだ。

 

 

エデルソン

ブラジル出身のエデルソンは、サンパウロ州3部リーグのデスポルティボ・ブラジルでプロキャリアをスタートさせた苦労人だ。

2018年、エデルソンは1部所属の名門クルゼイロと契約を果たす。当初はU20チームに加わる予定だったが、シーズン前のトップチームとの練習で当時の監督の目に留まりチャンスを与えられると、そのまま主力として1シーズンプレーした。

残念ながらクルゼイロはクラブ史上初の降格の憂き目にあってしまうのだが、そんなチームで最高の選手だったエデルソンはコリンチャンスへ移籍、翌年にはフォルタレーザへ舞台を移してプレーした。

2021年冬にはセリエAのサレルニターナに加入し欧州上陸を果たすと、翌21-22には主力に定着し活躍。2022年にはアタランタに引き抜かれている。

 

アタランタ加入初年度となった昨シーズン、序盤戦にはトップ下として起用されていたエデルソンだが、なかなか活躍できずに苦しんだ。

転機となったのはセントラルMFにポジションを移したことだった。これを機に輝きを取り戻し、今シーズンにはアタランタのMFの中で絶対的な存在となっている。

彼は3列目でこそ最も輝きを放つ選手なのだ。それは、彼のプレースタイルによる。

エデルソン最大の武器は、中盤の全域で行われるボール奪取である。

タックル数、タックル勝利数ともにセリエA2位となる数値をたたき出している通り、今季のエデルソンはセリエA屈指の潰し屋として活躍中だ。

アタランタはボール保持時にピッチに円を描くように布陣する戦術をとっており、中盤は空洞化する。ゆえにトランジション時に一気に通過される危険性をはらんでいる。

この中盤をひとりでカバーしてしまっているのがエデルソン。とにかくカバーエリアが広い

相手のウインガーが突破を仕掛けてくる場面。これを察知したエデルソンがプレスバック。
タックルを仕掛ける。
ボールを奪い取った。

彼がずば抜けているのは10~15mのショートスプリントの異常なまでの速さだ。最初からいいポジションを取り続けているわけではないのだが、ボールが抜けてくると察知した瞬間に一気に距離を詰めて相手に襲い掛かる。

そして、コンタクトプレーもどちゃくそ強い。屈強な肉体を持つエデルソンは、デュエルで相手を跳ね飛ばし、ボールを奪い取る。パワーとボディバランスが並外れているのだ。

彼が得意とするのは、数メートルのスプリントで一気に相手との距離を詰め、ダッシュの勢いをそのままタックルに乗せて相手にぶちかまし、ボールを奪い去る形だ。地上戦デュエルでは無敵の強さだ。

これほどダッシュ力とフィジカル的な強さを高次元で融合している選手は珍しく、非常に優れたアスリートであるといえる。イメージ的にはより足の速いケシエと言ったところだろうか。

ガッティの突破を認知し一気にアプローチをかけるエデルソン。
勢いそのままタックルを仕掛ける。
ガッティを吹き飛ばした。エデルソンは全くバランスを崩していない。

 

エデルソンは保持時の貢献度も高い。

縦志向の強さが彼の特徴で、前向きにボールを持てば積極的にくさびをつけて攻撃のスイッチを入れようとする。スピードのある鋭いグラウンダーパスを出すことができ、狭いパスコースも通せる技術がある。

 

↓ エデルソンの縦パスによって決定機を演出した場面。

 

まれに放つロングフィードも精度が高く、より戦術眼を磨けば高性能なレジスタとしても活躍できそうだ。

 

さらに、ダイナミズムにも優れるエデルソンは機を見て前線に飛び出しフィニッシュにも絡める。今シーズンすでに5ゴールを決めており、得点力が高いMFであると評価できる。

 

↓ 前線への飛び出しによって得点を奪ったシーン。

 

最終ライン前でのボールハントと縦パスによる攻撃の組み立てはともに中盤低めのエリアで行われるアクションだが、そこから前線に飛び出しゴールを奪えることを考えると、エデルソンの最適なポジションは2センターの一角もしくは3センターのインサイドハーフだろう。

単独で中盤を制圧できる選手であるエデルソン。個人的には今季のセリエAでも最高のMFのひとりだと考えている。

アタランタの試合を見るときには、エデルソンにぜひ注目してほしい。

 

 

 

 

マルテン・デローン

オランダで生まれ地元のアマチュアクラブでプレーしていたデローンは、国内屈指の強豪フェイエノールトに引き抜かれて6年間ユースでプレーする。

しかしながら、プロデビューは同じ街をホームタウンとするライバル、スパルタ・ロッテルダムで果たしている。

スパルタ・ロッテルダムで3年、ヘーレンフェーンで3年と計6年をオランダで過ごしたのち、2015年夏にアタランタへ加入、セリエAへ活躍の舞台を移した。

翌年に一度ミドルズブラに移籍したものの、1シーズンだけを過ごしてすぐにアタランタへ復帰。以降アタランタでプレーし続けている。

ここまでアタランタでの通算出場試合数は332試合に登り、クラブ歴代2位の出場試合数となっている。

 

ちなみに、デローンはセリエA屈指のツイッタラーであり、たびたび大喜利ツイートを繰り出している。日本人受けのいいサッカー選手ではないだろうか。

 

デローンの最大の武器トロイ不在時には腕章を巻く副キャプテンであるデローン。ヘーレンフェーン時代には在籍2年目からキャプテンを務めていた通り、キャプテンシーを備えている。周囲を鼓舞する声掛けはもちろん、プレーでチームを盛り上げられるのもまたデローンの魅力だ。

デローンの最大の武器が、相手の攻撃の芽を摘む守備だ。特にトランジション時にデローンは大きな輝きを見せる。

ルーズボールへの反応が人一倍早く、素早くボールを回収して攻撃の継続に貢献するのだ。

相手がボールを持ったままドリブルで進んできたときには、素早くボールホルダーに詰め寄ってカウンターを阻止すべくタックルを仕掛ける。

コンタクトプレーで負けないフィジカル的な強さはもちろん、ピッチの全域をカバーする運動量、試合終盤になってもそれが落ちない持久力といった走力にも優れている。

FBref.comより、デローンの今季のヒートマップ。非常に行動範囲が広く、特に自陣はペナルティエリア外全域をカバーしていることがよくわかる。

 

アタランタが採用するマンツーマン守備への適性も十分だ。持ち前の機動力で相手について行き、ボールが入ればガツガツとぶつかってボールを奪い去る。

今季のデローンのタックル数、タックル勝利数はともにリーグで3本の指に入っており、セリエA屈指の潰し屋として躍動している。

その守備性能の高さゆえ、センターバックにもハイレベルに対応できるのもデローンの強みだ。

 

また、ボール保持局面では積極的な縦パスで攻撃を前進させる。

低い位置に降りてプレーするのが得意なデローンは、前を向いて味方への適切なパスコースを選び取ってボールを振り分けていく。このとき、積極的に縦を選択する傾向にある。

 

↓ パスカットからアシストした場面。

 

さらに特筆すべきはロングボールの精度の高さ。特にサイドチェンジに対して積極的で、現スカッドの中ではデローンが最も長いボールを使って局面を変えている印象だ。

 

一方で、危険なパスミスが散見される。デローンは味方の動きは良く見えているのものの、相手の動きを認知できていない場面が見受けられる。そのため、危険なボールロストが生まれている印象だ。

ここは要改善点だろう。

デローンがパスを出そうとしている場面。
相手がパスカットを狙ているのを認知しておらず、インターセプトされてしまった。被カウンターにつながっている。

 

守備能力に関してはセリエAでも屈指であり、低いエリアで攻撃の芽をつぶしまくることで輝くデローンは、「防波堤」に分類できるだろう。

課題だったボール保持面での貢献も年々改善されてきている印象で、完成度の高い守備的MFとして成熟を迎えている。

今が旬のデローンのプレーは必見だ。

 

 

マリオ・パシャリッチ

ドイツのマインツで生まれたパシャリッチは、その後すぐに両親の母国クロアチアに戻り、そこでサッカーを始めた。

地元クラブでのプレーが注目されて11歳で名門ハイデュク・スプリトに加入すると、順調にカテゴリーを上げていった。

U-19クロアチア選手権優勝に大きく貢献して注目を集めたパシャリッチは、2013年にプロデビュー。すると13-14には主力に定着し、11ゴール4アシストを記録した。

これを受けてチェルシーがパシャリッチを獲得することになるのだが、即レンタルに出されて以降エルチェ、モナコ、ミラン、スパルタク・モスクワと異なる4ヵ国のクラブを渡り歩き、ついにはチェルシーでの出場がないまま退団することになってしまった。

挫折を味わったパシャリッチだが、転機となったのは2018年のアタランタ加入だった。ガスペリーニのもと復活し、今季までの6シーズンで公式戦通算48ゴール30アシストと活躍している。

 

パシャリッチの最大の魅力が高い得点能力だ。プロデビュー当初から通じて、多くの得点を決めてきた。

メインのポジションは決して攻撃的MFではなく、セントラルMFでの起用が最も多いパシャリッチ。3列目からの飛び出しの巧みさが彼の得点力を支えている。

低い位置からするすると前線に上がっていき、前線にできたスペースを突いて行く。空いたスペースを見つける戦術眼、味方とタイミングを合わせて動き出す感覚に優れている。

裏に飛び出して冷静に沈めるのがパシャリッチの最も得意な形だ。

 

また、パシャリッチは空中戦に強い。188cmの長身を生かし、ストライカーさながらにヘディングでの競り合いを制して決める。

相手を押し込んだ場面では、第3のストライカーとしても機能できる資質を持っているのだ。

 

さらに、パシャリッチは両足で精度の変わらないフィニッシュが可能だ。

transfermarktによれば、アタランタ加入後のゴールは、左足15点で、右足で22点、ヘディングで7点だ。これだけバランスよくゴールが決められる選手も珍しい。

両利きであることもまたパシャリッチの強みなのだ。

 

↓ 21-22のパシャリッチのゴール・アシスト集

 

非保持時には、そのフィジカルを活かしたデュエルで対面の相手を封じ込める。守備性能も決して低くはない。ゆえに、どのクラブでもセントラルMFとして起用されてきたのだろう。

ガスペリーニはオランダ時代には守備的MFを本職としてきたコープマイネルスをトップ下に置き、パシャリッチをセントラルMFとして起用している。

より低い位置での強度でパシャリッチが勝るとの判断ではないだろうか。

 

一方、パシャリッチには明確なウィークポイントもある。組み立てでの貢献度が低いのだ。

低い位置でボールを持ったパシャリッチは、長いパスで局面を変えたり、ドリブルで相手を動かしたりといった高度なスキルは持ち合わせていない。

インターセプトを狙う相手の動きが見えておらず、パスミスとなってしまう場面も散見される。ビルドアップでの貢献度は低いと言わざるを得ないだろう。

パシャリッチがパスを出そうとしている場面。ロカテッリがインターセプトを狙っている。
ロカテッリの動きが認知できていなかったパシャリッチ。インターセプトをくらってしまった。

 

アタランタでプレーし早6年が経過したパシャリッチ。ガスペリーニスタイルとの相性が抜群ゆえに、今後もアタランタでプレーし続けてほしい選手だ。

あと何点ゴールを積み上げてくれるのか楽しみだ。

 

 

アレクセイ・ミランチュク

地元のサッカースクールでプレーをはじめたミランチュクは、2010年から1年間だけスパルタク・モスクワでプレーしたが即退団、翌年に加入したロコモティフ・モスクワでプロデビュー。2020年にアタランタに移籍するまでの10年間をロコモティフで過ごした。

アタランタ加入後のミランチュクは定位置確保に苦しんだ。これを受けてレンタル移籍したトリノで輝きを取り戻したミランチュクは、今季再びアタランタに復帰。後半戦に入って先発出場の機会も増え、ここまで公式戦通算4ゴール9アシストを記録している。

ちなみに、ミランチュクにはアントンという双子の弟がいる。2人は同じスクールでサッカーを初めてから、アレクセイがアタランタへ移籍するまでまったく同じキャリアを歩んできた。アントンは現在でもロコモティフ・モスクワでプレーしている。

さらにちなみに、アレクセイとは、80年代後半から90年代前半にソ連とロシアで人気を博した歌手アレクセイ・グリジンからとっているそうだ。

 

ミランチュクは、まさにファンタジスタというにふさわしいプレーヤーだ。

左足のボールタッチは繊細で、常に足元にボールを置きながらプレーする。周囲をうかがいながら、ここぞのタイミングで味方にラストパスを供給してチャンスを作り出す。ボールを常に足元に置いているので、タイミングを逃さずにパスを供給することができる。

ミランチュクは先発出場の機会がそこまで多くないにもかかわらず、今季のアタランタで2番目のアシスト期待値を記録している。90分あたりに換算したときのアシスト期待値はセリエAトップだ。今季のセリエAで見ても屈指のチャンスメーカーと言えるだろう。

FBref.comより、今季のミランチュクのヒートマップ。

ミランチュクのプレーエリアはおもに2つだ。

ひとつは相手のMFラインとDFラインの間、いわゆるライン間だ。繊細なボールタッチと高度なテクニックを持つミランチュクは、狭いエリアでもプレーできるプレーヤーだ。ライン間でボールを引き出し、ターンしてラストパスやフィニッシュを繰り出す。

彼のプレーで特徴的なのは、相手のタイミングをずらす駆け引きだ。ボディフェイクや目線によるフェイクを駆使して相手の足を止めた上でボールを持ちだし、瞬間的にコースを作り出すのがうまい

そして、できたコースを正確に射抜く左足キックの精度も見事。特にコースを狙ったコントロールショットは芸術的だ。

これを狭いスペースで完結できるため、ミランチュクはライン間でのプレーを苦にしないのだ。

 

もうひとつのプレーエリアが左サイドの2レーン。左利きのミランチュクは、カットインしながらクロスボールや斜めのラストパスを狙うのだ。

 

フィジカル的に恵まれているわけではないため、非保持時の強度は不安がある。また走力や推進力がなく、ドリブルで長い距離を持ち運ぶようなプレーも得意ではない。

あくまでも足元にボールを引き出して攻撃の最終局面をデザインすることで輝く、「アシストマン」の代表例。現代サッカーでは少なくなったファンタジスタの典型であり、その風貌からも「マエストロ」という単語がよく似合う選手だ。

フィジカル的に頑強な選手がそろうアタランタにあって異端児的な存在となっているミランチュク。ゆえに、チームに変化を加えられる選手だ。

今思えば、アタランタ全盛期におけるイリチッチも同じような役割を果たしていた。ミランチュクは次なるイリチッチになれるのか注目だ。

 

 

ウイング

デ・ケテラーレ、ルックマンともにウイングに分類するのが正しいのかわからないようなプレーヤーだ。

デ・ケテラーレはトップ下としても、ストライカーとしてもプレーできる資質を持つ。見かけに似合わずフィジカルを押し出したプレースタイルを持つ彼は、ウイング分類マトリックス上ではゴリブラーに分類できるだろう。

ルックマンはウイングとしては極めてフィニッシャーに振り切ったプレースタイルを持つ。カットインシューターではあるものの、そのフィニッシュはほぼすべてがペナルティエリア内から放たれる。

ハーフスペースを得意とするそのプレースタイルがガスペリーニのフットボールと相性抜群だ。

 

シャルル・デ・ケテラーレ

デ・ケテラーレは7歳で加入して以降クラブ・ブルージュ一筋で育ってきた。

少年時代には地域のユーストーナメントで優勝するほどにテニスもうまかったようだが、最終的にはサッカーを選択した。

19-20にプロデビューを果たすと、20-21には主力に定着。21-22にはリーグ戦33試合14ゴール6アシストと大活躍し、欧州中から注目を集めた。

そして22-23シーズン、補強の目玉としてミランに迎えられる。大いに期待されたデ・ケテラーレだったが、ノーゴール1アシストと大きく期待を裏切ってしまう。

彼は非常に内気な性格であり(趣味はダーツ鑑賞と法律の勉強だそうだ)、そこが本来の能力を発揮できなかった理由かもしれない。

実際、心機一転加入したアタランタで、今季ここまでで公式戦34試合10ゴール7アシストと輝きを取り戻しているのだ。

 

童顔で王子様系なデ・ケテラーレだが、そんな見かけに似合わずプレースタイルは想像以上にフィジカルなものだ。

伊東さんがいつかのサッカーキングで「カカーっぽい」と言っていたが、言い得て妙だ。

 

192cmと長身であるデ・ケテラーレは、相手を背負って縦パスを収め、起点になることができる。いわゆるポストプレーができるのである。

その特性ゆえに、アタランタ加入後には1トップとして起用される試合も見られている。

 

さらに、そこから強引に前を向いてドリブルで相手を押し込むことができる。いわゆる「ワイドポスト」である。この一連の流れはアタランタで強く求められている動きであり、これを高次元でこなせることはガスペリーニがデ・ケテラーレを重用する理由になっている。

この強引な突破こそがデ・ケテラーレの魅力。テクニックを駆使したきれいな突破ではなく、パワーとスピードを前面に押し出した、いわゆるゴリブルによって局面を打開していく。

 

今季のデ・ケテラーレサイドに流れてボールを受け、そこからのゴリブルによってペナルティエリア内へ侵入してチャンスを広げるというタスクを担っている。現チームの切り込み隊長というわけだ。

ドリブル突破試行数、ドリブルによるペナルティエリア内への侵入数はいずれもチーム内トップとなっている。

 

ここまではウイング的な要素だが、デ・ケテラーレはストライカー的な要素も備えている。

デ・ケテラーレ得点力が高い選手だ。その得点は大部分がペナルティエリア内から生まれている。

最も多いのは、ゴール前に入っていって味方のクロスボールに合わせる形。いわゆるワンタッチフィニッシュが最も多い。

さらに、長身を生かしたヘディングでのフィニッシュも可能。アタランタでの初得点もヘディングから奪っている。

 

↓ クラブ・ブルージュ時代の全ゴール集

 

また、デ・ケテラーレラストパスを引き出す動きもうまい。相手から離れるように外に流れたり、CBの間に鋭く入り込んだりと、様々な動き方でフリースペースを突く。

パスの受け手としても優秀なのがデ・ケテラーレなのである。

 

↓ 裏のスペースを突く動きからストップしてフリーとなり、豪快に決めた一撃。ゴラッソに目が活きがちだが、そのひとつ前の動き出しの巧みさに注目だ。

 

また、デ・ケテラーレは守備に対しても献身的だ。アタッキングサードでのタックル数がチーム内でトップとなっている通り、積極的にタックルを仕掛けてボールを奪う。これもアタランタにハマっている要因だろう。

 

このように、様々な強みを持っているデ・ケテラーレ。彼の課題は、メンタル面に起因するムラっ気が強いことだろう。

大きな期待を持って迎えられたミランでプレッシャーにのみ込まれたように、デ・ケテラーレはメンタルが整わないと途端にプレー精度が落ちてしまう。

これは1試合単位でも言え、決定機をミスしたり、強引さが裏目に出るようなミスが何度か続いたりすると、どんどんとトーンダウンしてしまう試合が見られる。

すべての試合で安定したパフォーマンスを見せるためには、メンタル面を改善しなければならないのではないだろうか。

 

アタランタでの復活で再び人気銘柄になりつつあるデ・ケテラーレ。ミランが来季スカッドに加える気はなさそうで、アタランタが買い取らなければ市場に出ることになるだろう。

来季はどのクラブでプレーすることになるのか。そして、そのクラブで活躍することはできるのか。オフシーズンの動きにも注目したい選手だ。

 

 

アデモラ・ルックマン

ナイジェリア人の両親のもとロンドンに生を受けたルックマンは、古豪チャールトン・アスレティックでプロデビューを果たした。

16-17、イングランド3部で5ゴールを挙げていた1月にエバートンに引き抜かれたもののなかなか主力に定着できず。

19-20からはライプツィヒ、フラム、レスターと3シーズン連続で所属クラブを変えてプレーするなど、なかなかキャリアが定まらなかった。

転機となったのは2022年のアタランタ移籍。初年度から公式戦通算15ゴール6アシストとキャリアハイの数字を残したのだ。

今季もここまで9ゴール5アシスト。1月から2月にかけてはナイジェリア代表の一員として参加したアフリカ・ネイションズ・カップでいずれもチーム最多タイとなる3ゴール1アシストを記録してチームの準優勝に貢献した。

ガスペリーニのもと覚醒し、まさにキャリアの全盛期を謳歌している。

 

ルックマンはウインガーなのか、ストライカーなのかがわかりにくい選手だ。ピッチ中央で相手を背負うプレーヤーではないが、かといってアウトサイドを主戦場とするウインガーかと言われるとそれも違う。ストライカーなのかウインガーなのか分からない、まさにガスペリーニ好みのプロフィールの持ち主だ。

4-3-3を採用するナイジェリア代表でウイング起用されていたことから、ここではウインガーとしてマトリックス上に位置付けていきたい。

 

ルックマンの最大の魅力は得点能力の高さだ。過去の成績を見ても、アシスト数よりもゴール数の方が圧倒的に多い。

彼の得点力を裏付けているのは、シュートとキックフェイントのうまさだ。

ルックマンのシュートは非常にパワフルで鋭い。思い切り打ち抜くから、見ていて気持ちがいい。

インフロントで巻くようなコントロールショットはほぼ使わず、インフロントで思いっきり振り抜くのだ。それでいて非常にコントロールされているのだからすごい。

 

この右足を相手との駆け引きにうまく使うのがルックマンのスタイルだ。

ペナルティエリア周辺でボールを持ったルックマンは、右足シュートを突き付けながらキックフェイントで相手のタイミングを外していく。そうしてシュートコースを作り出したり、持ち出してさらにゴール前へと侵入していくのだ。

ルックマンのドリブルは難しいフェイクは使わず、このキックフェイントのみで突破していく。相手DFの頭の中に彼の強烈なシュートを意識させられるからこそできる芸当だ。

 

↓ 右サイド角度のないところからゴール左下に突き刺したゴールシーン。シュートフェイクで相手に足を出させ、空いた股の下を射抜く見事なゴールだ。

 

↓ 何度もキックフェイントを繰り返しながらシュートコースをつくり出したルックマン。彼の真骨頂が見られた場面だ。

 

また、ルックマンは味方のクロスボールに合わせる形でのゴールも多い。オフ・ザ・ボールでゴール前に飛び込むセンスも持ち合わせている。

長身ではないルックマンだが実はヘディングも得意で、うまくコースを狙って決める。

understatより、ルックマンのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

上の図を見ると、ルックマンのゴールはほぼすべてがペナルティエリア内から決まっていることがわかる。

キックフェイントを駆使しながらペナルティエリア内にまで侵入してからシュートを放っていることの裏付けであると同時に、味方のラストパスを引き出してそれに合わせる形でのゴールも多く決めていることがよくわかる。

 

密集を抜け出すドリブルを得意とするルックマンだが、創造的なスルーパスやアウトサイドからのクロスボールといったプレーはそこまで得意とはしておらず、あくまでもフィニッシャーである。

ハーフスペースが彼の主戦場であり、ゆえにウイングとストライカーの中間的な存在だ。

選手分類マトリックス上では、かなりフィニッシャーに偏ったカットインシューターに分類できるだろう。

 

リバプールを下してEL準決勝に進出したアタランタ。マルセイユを下せば、クラブ史上初の欧州カップ戦決勝戦に進出となる。そして、優勝すればこれもまたクラブ史上初だ。

タイトル獲得にはルックマンのゴールが欠かせない。彼の活躍に期待したいところだ。

 

 

 

フォワード

今冬ムリエルが退団したことで純粋なストライカータイプはスカマッカのみとなっているアタランタのスカッド。ガスペリーニの志向が見えて面白い。

とはいえ、スカマッカは現チームに欠かせないピースとなっており、ここにきて量産体制に入っている。ミドルフィニッシュのほかに頭フィニッシュにも対応可能で、引いた相手を崩す切り札として活躍中だ。

 

ジャンルカ・スカマッカ

ローマで生まれたスカマッカは、生まれてすぐに父親との縁が切れ、人生のほとんどを母と妹とともに過ごしてきた。

ラツィオ、ローマのユースを経てオランダのPSVで技を磨いたスカマッカ。2017年にサッスオーロに獲得されて再び母国に戻りレンタル生活に励んでいたが、19-20にアスコリで、20-21にジェノアでそれぞれ4ゴールを挙げて2年連続カップ戦得点王に輝き注目を集めた。

そしてようやくサッスオーロのスカッドに加わった21-22、セリエA16ゴールを挙げてブレイクを果たしたのだ。

翌シーズンはウエストハムに加入してプレミアリーグに挑戦するも度重なる負傷もあって不発に終わり、今季はアタランタに活躍の場を移している。

 

スカマッカのベースとなっているのは、優れたフィジカル能力だ。

196cmという長身であるスカマッカは、その右足にとてつもないパワーを秘めている。ゆえに、ミドルシュートが非常に得意なのだ。

 

遠距離からでもゴールの四隅を射抜けるスカマッカは、ボールを持てば積極的にシュートを狙っていく。多少ボールが浮いていても、アクロバティックに枠に収めてくるのは相手にとって脅威だろう。

 

難しい状態からでも強引にシュートを狙っていく割には枠内シュート率が非常に高く、90分あたりの枠内シュート数は今季のセリエAトップだ。21-22にも同スタッツでセリエA6位に入っており、彼のシュート技術の高さがよくわかる。

相手DFが立ちふさがっていても、ひとつ持ち出して角度を変えるによってシュートコースを作りだす。

持ち出してからシュートまでのスピードが非常に速いこと、ワンステップでも正確かつパワフルなシュートを放てることが彼の特長だ。

 

また、彼の右足はパワフルなだけではなく、繊細さも持ち合わせている。

スカマッカは安定したテクニックを有しており、相手が足を出してきたときにかわしたり、味方に正確なパスを供給してアシストしたりといったプレーが可能だ。

相手を抑え込む力強さも有しているスカマッカは、技術とフィジカルが融合した高次元なポストプレーが可能だ。

 

一方、スカマッカは長身ながら空中戦を苦手としている。今季ここまでの空中戦勝率はチームで最下位だ。

落下点の確保やアーリーコンタクトなど、競り合いに関する駆け引きがまだ拙い印象で、せっかくの長身を生かしきれておらずもったいない。今後の成長に期待したいところだ。

ただし、スカマッカはヘディング自体を苦手としているわけではない。これまでのキャリアでヘディングからのゴールはたくさん決めている。ボールをミートする技術や、コースを狙うテクニックなども持ち合わせている。

あくまでも苦手としているのは競り合いの部分であり、ピンポイントでボールが入ってくればしっかり得点に結びつけているのだ。

 

スカマッカには空中戦よりも改善すべきウィークポイントがある。

それは、ムラっ気の激しさだ。過去のシーズンを見ても得点を取る時期と取れない時期があり、その差が激しく固め取りの傾向がある。

ゴール数に呼応してポストプレーの成功率も大きく上下動し、悪い時期には簡単にボールタッチが乱れてしまう傾向にある。

継続してトップパフォーマンスを披露できればセリエAを代表するストライカーとなるべきタレントであることは間違いないだけに、もったいないところだ。

 

フィニッシュタイプは「ミドルフィニッシュ」かつ「頭フィニッシュ」、ポストプレータイプは「背負いポスト」だといえそうだ。長身にパワーとテクニックを兼ね備えており、アクロバットなプレーも見せることからイブラヒモビッチを想起させるプレーヤーだ。

 

冬の悪い時期を越えて、ここにきて量産体制に入っているスカマッカ。直近の公式戦8試合で7ゴール1アシストと絶好調だ。この調子を継続してほしいものだ。

今シーズンが終わった時に何得点を重ねているのか、楽しみだ。

 

 

 

ルイス・ムリエル

コロンビア出身のムリエルは、国内屈指の強豪デポルティボ・カリでプロデビュー。

デビュー2シーズン目となった2010年シーズン前半には10試合9ゴールを挙げて大活躍した。

ストライカーながらドリブルを武器とするそのプレースタイルから「フェノーメノ」ロナウドと比較され、「コロンビアのロナウド」の異名をとった。

彼を欧州に連れてきたのはウディネーゼだった。グラナダ、レッチェへのレンタルを経てウディネーゼでプレーしたムリエルは2012年にセリエA最優秀若手選手に選出された。

その後加入したサンプドリアでも活躍したムリエルは、2017年夏にセビージャへ移籍する。当時のクラブ史上最高額となる2000万ユーロでの移籍だった。しかしながら、2シーズンで9ゴールと期待を裏切り、イタリアに出戻ることに。

フィオレンティーナを経てアタランタに加入したムリエルは、ここでキャリア最高の時を過ごすことになる。

19-20シーズンには、先発わずか10試合にして18ゴールを挙げてゴールランキング3位に入る快挙を成し遂げたのだ。このシーズン、途中出場から11ゴールを挙げたムリエルは、セリエAにおける1シーズンで挙げた途中出場からのゴール記録を更新し、2000年以降ではパコ・アルカセルに次ぐ数字となった。

 

スーパーサブとして活躍したムリエル。彼の最大の武器はドリブルである。

フェイクを多用するためにそんな印象はないかもしれないが、彼のドリブルは縦志向が非常に強い。ボディフェイク、キックフェイントなどを駆使しながらも、1回の切り返しで勝負を決めてシンプルに縦へ縦へと進んでいくのだ。

 

基本ポジションのセンターフォワードの位置からサイドに流れ、足元にボールを引き出してから仕掛けていくのがムリエルの最も得意な形。ピッチ中央で相手を抑え込みながら時間を作るようなプレーは得意としていない。ポストプレータイプとしては「ワイドポスト」といえる。

22-23のムリエルのヒートマップ。左サイドにマップが偏っていることがわかる。右利きのムリエルは、左サイドに流れてカットインしながら仕掛ける形を得意としており、これを実現するためにさかんにサイドに流れていくのだ。

 

ドリブルで仕掛けながら最終的にはフィニッシュを目指していくムリエル。彼のゴールの多くは、仕掛けのドリブルからつながる形で生まれている。

understatより、ムリエルのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

上の図を見ると、ムリエルのゴールは期待値が小さい傾向にあるのが特徴的だ。

これも、彼のゴールがドリブルからつながっていることと関係している。目の前に相手DFがいる状態から、仕掛けてかわす、もしくは抜ききらずともシュートコースを作り出して正確に射抜くのがムリエルの得意な形。

コースを狙ったコントロールショットも強烈なパワーショットもともに精度が高い。

 

ドリブラーは得てして足元にボールを引き出そうとしがちだ。ムリエルも同じで、基本的にはワイドに開いて相手の守備ブロックの外に逃げ、フリーでボールを持ちたがる。

一方で、ブロックの中にとどまって、瞬間的にできたスモールスペースに動き出してボールを引き出すプレーにも優れている。

ロングスプリントは特別優れているわけではないムリエルだが、タイミングで相手を出し抜き味方のラストパスを引き出すのに優れているのだ。

 

さらに、キック精度に優れるムリエルは優秀なプレースキッカーでもある。

PKに関してはキャリア通算15本蹴ってすべて成功。直接フリーキックからは通算5ゴールを決めており、実に多彩なフィニッシュワークを持つプレーヤーだといえる。

 

多くの武器を持つムリエル。チームに変化を加えられるコマであることは間違いなく、今冬の退団はアタランタにとってマイナス要素だろう。

キャリア晩年に向けてアメリカへ旅立ったムリエル。最終的には母国コロンビアに戻るのだろうか。今後のキャリアにも注目してみたいところだ。

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