【8年越しの覚醒】ミル・スヴィラルのプレースタイル分析

セルビア人の両親の元ベルギー最大の都市アントワープで生まれたスヴィラルは、ベルギーの世代別代表に選出されながら(A代表は両親の母国であるセルビアを選択している)名門アンデルレヒトでプロ契約にこぎつけた。しかしながら、トップチーム出場歴がないまま、ポルトガル王者ベンフィカに移籍することになる。

加入初年度にクラブの最年少出場GK記録、チャンピオンズリーグの最年少出場GK&最年少PKストップ記録を塗り替えるなど期待が大きく膨らんだスヴィラルだったが、徐々にトーンダウンし、Bチームが主戦場となっていく。結局5年間プレーしたベンフィカでのトップチーム出場は9試合にとどまったまま退団することとなる。

新天地のローマでもルイ・パトリシオの控えGKとしての日々が続いていたスヴィラル。しかしながら、今ようやく定位置をつかみつつある。

スヴィラルを特徴づけるのは、そのアグレッシブなプレースタイルだ。ルイ・パトリシオが堅実なタイプであるからこそ、余計にスヴィラルのアグレッシブさが目立つ。

ミラン戦の失点シーン。スヴィラルはゴールエリアのライン上でセービングを行っている。

ルイ・パトリシオがゴールライン上をスタートポジションとする一方、スヴィラルはそこから1、2歩前に出たポジショニングをとる。さらに、そこから少しずつ前ににじり出て、少しでもボールとの距離を縮めようとするのだ。

相手からすれば、GKとの距離が近いほどゴールが小さく見える。心理的な圧力をかけることで優位に立とうとするスタイルはまさにアグレッシブさの表れである。

少しでも前に出てプレーしようとする姿勢は、クロスボール対応にも反映されている。

スヴィラルは25節終了時点でクロスボール処理率がセリエAトップの数値を残している。積極的に前に出てボールを処理し、シュートを未然に防ごうという姿勢が彼の持ち味だ。

ライン裏に中途半端なボールが落ちてきた場面。スヴィラルはゴール方向に戻ることも、飛び出して処理することもできるポジションをとって様子をうかがう。
敵と味方の状況を見て思い切って飛び出し、パンチングで難を逃れた。

ミドルレンジからのシュートに対する処理も安定している。反射神経に優れているとはいいがたいが、バネがあり体が伸びるため、守れる範囲は広い。ミドルレンジからのシュートであれば反応時間が取れるため、バネを活かして優雅にセーブする。

また、ボール保持に対する積極的な参加もルイ・パトリシオと比較したときのストロングポイントだ。積極的に最終ラインに加わってボールの預け所となれ、プレス耐性もパトリシオとは比較にならない程に高い。シンプルなパス循環への参加に関しては既に問題ないレベルに達している。

まだキックの種類が豊富ではなく、またライン間にいる味方へのパスコースを見出せるほどの戦術眼も持ち合わせていない。しかしながら、キックに飛距離があり深さを取れるのは大きなストロングポイントだ。今後のトレーニングでさらに向上の余地があるだろう。

ウィークポイントとしては、前述のように至近距離からのシュートに対する反射神経がトップレベルと比較すると見劣りすること、シュートを打たれるタイミングで止まることができていない場面が散見されることくらいか。

後者はポジション移動が激しいタイプである以上改善したいポイントだ。アグレッシブに前に出る前提でポジションするならば、そこから後退に切り替えなければならない場面は必ず出てくる。

そうなった時に可能な限り後退しつつ、シュートが飛んでくるタイミングではしっかりと止まって次の反応に備えておかねばならないだろう。

まだ課題も残っているとはいえ、資質として非常に優れたものを持っていることは間違いない。

数々の最年少記録を塗り替えたままくすぶっていたスヴィラルが、ついに日の目を浴びつつある。今後に注目だ。

 

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