セリエAの左サイドバックを分析してみた【選手分類マトリックス】

複雑化する現代サッカーに合わせた選手分類基準として、筆者は以前「選手分類マトリックス」というものを考案した。

今回は、そのマトリックス図に従って実際に選手たちを分類してみたものだ。

お題は左サイドバック。この記事を読めば、セリエAでプレーする(ほぼ)すべての左サイドバックのことがざっとわかるはずだ。

完成したマトリックス図を見てもらった後、各分類ごとに第一人者、プロビンチャの注目株、期待の若手、その他のプレーヤーたちを見ていきたい。

 

 

Table of Contents

LSB分類マトリックス

 

 

フィニッシャーSB

第一人者

ロビン・ゴセンス(フィオレンティーナ)

「ブンデスリーガでプレーしたい」という夢を実現し、セリエAに帰ってきたロビン・ゴセンス。彼はドイツでのプレーを経てもゴセンスのままだった。

ゴセンスと言えば、SBとしては異常に得点数が多いプレーヤーだ。19-20には9ゴール、20-21には11ゴールを挙げている。

understat.comより、ゴセンスのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

 

上の図を見ると、ゴセンスのゴールはいずれもPKスポットよりも前のゴール中央から決められていて、ゴールエリア内からの期待値の大きいシュートによる得点も多いことが読み取れる。

右サイドからのクロスにファーサイドで合わせるゴセンス!というのは、セリエAファンにとってはおなじみのシーンだ。まるでストライカーのように、ゴール前に飛び込んでフィニッシュに絡むプレーこそゴセンスの最大の魅力だ。

それを何度も何度も繰り返せる持久力を持っていること、驚異的な空中戦の強さを持つことも相まって、ゴセンスは「フィニッシャーSB」の第一人者となっている。

 

足元のテクニックは凡庸で、後方からのゲームメイクには期待できないし、高い位置で単独で仕掛けさせてもクロスまで完結することは難しいだろう。

使われる機能に特化したプレーヤーだけに活かし方が難しいが、きちんとハマれば大きな火力を出せることはアタランタで証明済みだ。

今季はここまで4ゴール4アシスト。フィオレンティーナでも得点に絡む能力の高さを誇示している。

 

ゴセンスは非保持時のプレーにも持ち味があり、中でもマッチアップ相手との距離を近く保ちながら積極的にタックルを仕掛けるプレーに定評がある。

今季ここまでのスタッツを見てみると、タックルやブロッキングと言ったスタッツでチーム内トップを記録している。

同じポジションでプレータイムに600分の差があるドドと比較しても有為に数字に差が出ていることを見ると、守備アクション数の多さは彼個人のアグレッシブネスに由来すると言っていいんじゃないだろうか。

 

〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

  • タックル総数:49(チーム内トップ
  • タックル勝利総数:29(チーム内トップ
  • パスブロック数:20(チーム内トップ

 

攻守両面に強度の高さを武器に戦うゴセンス。古き良きドイツ人プレーヤーのイメージを体現する、無骨な男。

近年少なくなってきたタイプだけに、希少性の高いプレーヤーである。

 

 

その他のプレーヤー

ダビデ・ザッパコスタ(アタランタ)

サイドバックなのにゴラッソメーカー」。これがザッパコスタを一言でまとめたフレーズになるだろう。

アタランタにきて4シーズン目になるザッパコスタは、今季ここまで4ゴール2アシスト。今季だけでなく、直近3シーズンにわたってアシスト数よりもゴール数が多くなっている

それも、期待値の小さいミドルシュートによる得点が多いのだ。

understat.comより、ザッパコスタのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

 

左右両サイドをこなせる汎用性を武器のひとつにしているザッパコスタだけど、最も得意なのは左サイドからカットインし右足でコントロールショットを放つ形。左にいてこそ一番怖さが出る選手だ。

クロスボールでのチャンスメイクよりもドリブルでの仕掛けを得意としているザッパコスタ。「ドリブラーSB」に分類するか迷ったところだが、彼のドリブルは突破してからのチャンスメイクよりも、自ら持ち込んでフィニッシュに至ることに特化しているため選手分類マトリックス上の「フィニッシャーSB」としたい。

FBref.comより、5大リーグのSBとザッパコスタを比較したときのパーセンタイル。得点、アシストに関するスタッツはアベレージ90のバグ数値だ。

 

今季すでに4ゴールを決めているザッパコスタ。どこまで得点数を伸ばすのか注目したい。

 

 

 

クロッサーSB

第一人者

フェデリコ・ディマルコ(インテル)

セリエAでプレーするクロッサーSBの第一人者は、フェデリコ・ディマルコを置いて他にいない。

 

〈24-25のスタッツは8節終了時 FBref.comより〉

  • クロス総数:69(24-25セリエAトップ
  • アシスト期待値:7.5(23-24セリエA2位

 

最大の武器は高精度極まりない左足のキックで、アウトサイドレーンからの空間を使ったクロスボールはもちろん、ライン間に流し込むグラウンダーの早いボールまで正確に味方の足元に届く。

多少無理な体勢からでもいいボールが上がってくるから、相手DFからしたら一時も油断できないだろう。

 

キック精度の高さはプレースキックにも転用される。コーナーキッカーとしてはもちろん、直接フリーキックのキッカーとしてもセリエAで指折りだ。

 

クロッサーSBとしての基本的な能力は全て備えているディマルコだが、ただそれだけの選手ではない。大事なのはむしろここからだ。

ディマルコはサイドバックの選手としては非常に得点数が多いという特徴がある。

対5大リーグのSBで比較したディマルコのパーセンタイル。PKを除いたゴールという項目で、ディマルコは98という高数値をたたき出している。

 

なぜたくさん点が取れるのかというと、それは彼のポジショニングが巧みだからだ。

ふつうクロスボールに自信があるSBは、アウトサイドレーンでボールを引き出そうとする。相手から離れてボールを受ければ、それだけ相手からの圧力から遠ざかって余裕をもってクロスボールをあげられるからだ。

一方、ディマルコはボールと相手の動きに合わせて、ペナ幅まで絞ってくる動きが抜群にうまい

相手SBがゴール前で絞る動きを見せたときに、その背後かつボールを受けたタイミングでフィニッシュを狙えるポジショニング、それがペナ角。ここから逆サイドのゴールネットへの対角線のシュートは、ディマルコの十八番となっている。

というわけで、ディマルコは「フィニッシャーSB」の要素を持っている。

 

ディマルコがインサイドに絞った動きを見せるのはフィニッシュ時に限った話ではない。他の味方がアウトサイドで幅をとっているときにインサイドに入ってくる動きもスムーズで、レーンが被らないよう意識したポジショニングができている。

エラス・ヴェローナ時代から、内から外に流れてくるザッカーニに呼応して、ディマルコが開いたチャンネルに侵入していく動きは定番となっていた。

というわけで、ディマルコは「ポジショナルSB」の要素も持っている。

 

また、見逃されがちだけど、ディマルコは走力にも非常に優れている。これは持久力だけでなくスプリント力に関してもそうで、意外と?足が速い。

カウンター時には必ず攻撃参加し、ボールを受ければクロスボールでチャンスを演出。最後の仕上げ役として機能している。「ストレートランナー」としての要素も持ち合わせているわけだ。

 

というわけで、ディマルコの対応可能な範囲を示すとこうなる。

クロッサーSBながら、SBに求められるオフ・ザ・ボールの能力をコンプリートしているというのがディマルコの本当の凄さである。これが今回伝えたかった大切なこと。こんなSBはセリエAではディマルコしかいない。

クロッサーSBとして第一人者であるのはもちろんのこと、セリエAのサイドバック全体としてみても第一人者であるといえそうだ。

 

 

プロビンチャの注目株

アーロン・マルティン(ジェノア)

ブンデスリーガのマインツで長く活躍してきたスペイン産ラテラル。今季でジェノア在籍2シーズン目となる。

彼の武器は何といっても正確無比なクロスボール。相手をかわしてからクロスを上げられるほどのアジリティやスキルは持ち合わせていないので、相手からの圧を受けない大外からのクロスや早い段階からのアーリークロスなど、相手から距離をとった状態からボールを供給する形を好んでいる

とにかく試行数の多さが目を引き、クロスへの積極性は異常。何を隠そう、彼は今季の欧州5大リーグで最もクロスを上げているプレーヤーなのだ。

 

〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

  • クロス総数:221(セリエAトップ欧州5大リーグトップ
  • アシスト期待値:4.6(セリエA9位

 

スタッツ単体で見てももちろん素晴らしい数字だけど、所属するジェノアはボール保持率がリーグ14位と下位で、相対的に攻撃回数は少ないはずであることを考えるとより輝いて見えてくる。

 

 

セットプレーのキッカーとしても優秀で、彼はジェノア最大のチャンスメーカーと言ってもいいだろう。

マインツ時代には直接フリーキッカーとしても鳴らしていたようで、名手ヤン・ゾマー(現インテル)が一歩も動けない芸術的な一発も決めていた。

 

アーロンは元々非保持面に不安が残るプレーヤーだった。

対人守備では不用意に飛び込んでスコンとかわされる場面が散見され、守る局面ではマークが甘くピンチを招くシーンも見受けられていたのだ。

 

アーロンがマークを外して危険なエリアへの侵入を許した

 

それが、ジェノア全体のアグレッシブな姿勢に触発されてアーロン自身もファイターに変貌。粘り強い対応からタックルでボールを奪うシーンが増えており、ポジショニングも改善傾向にある。守備者としても大きく成長している印象だ。

 

〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

  • タックル総数:62(セリエA4位
  • タックル勝利総数:40(セリエ3位

非保持面が伸びたことで、サイドバックとして総合的に完成されたプレーヤーとなったアーロン。ジェノアのキーマンとして注目してみてほしい。

 

 

ジュゼッペ・ペッツェッラ(エンポリ)

エンポリの左WBで絶対的な存在となっているペッツェッラ。彼のスタッツの中で注目すべきはクロスボールだろう。

 

〈FBref.comより9節終了時点でのスタッツ〉

  • クロスボール総数:49(セリエA4位

 

今季のエンポリはここまでボール保持率がセリエAで最下位のチームなので、相対的に攻撃回数は少ないということになる。その中でこのクロス試行数はかなり多いと言えるだろう。

実際にエンポリの試合を見るとペッツェッラによくボールが集まっていることがわかると思う。なぜ彼にボールが集まるのか。

それは、彼が単独で仕掛けてクロスボールまで完結できるから。内に切り返す選択肢は持っていないに等しいにもかかわらず、縦に持ち出すタイミングを読ませないことにより、瞬間的に相手を外してコースを作り、そこにクロスボールを通してくる。

相手に引っかからず、確実にゴール前に放れるからこそクロスボール数が伸びていくわけだ。

クロッサーSB」だけど、「ドリブラーSB」としての要素も併せ持っている、といったところだ。

 

〈FBref.comより9節終了時点でのスタッツ〉

  • ドリブル突破試行数:23(チーム内トップ

 

 

ちなみに、ペッツェッラは運動量と推進力を併せ持っており、自陣からのキャリーによって長い距離を持ち運ぶことができる。チームの前進への貢献度は非常に高い。

カウンター発動時に必ず駆け上がって攻撃に厚みをつけてくれる点も魅力。運動能力が高いプレーヤーでもあるわけだ。

 

〈FBref.comより9節終了時点でのスタッツ〉

  • プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー数:26(2位にダブルスコアでチーム内トップ
  • プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー総距離:598m(チーム内トップ

 

ピッチの縦幅を単騎でカバーできる運動量と、それぞれの高さで必要なプレーができる引き出しの多さを備えている好プレーヤーだ。

 

パルマ時代からの恩師であるロベルト・ダヴェルサのアグレッシブなスタイルとの相乗性も相まって評価を高めるシーズンとなっていくのだろう。

まだ27歳になったばかりで、ビッグクラブ挑戦へ機は熟した…シーズン後にそういわされているかもしれない、注目株である。

 

 

期待の若手

マッテオ・ルッジェーリ(アタランタ)

9歳からアタランタの下部組織で育ったルッジェーリは、昨シーズンにスタメンの座を手にした伸び盛りのレフトバックだ。今季ついにアッズーリ初招集を受けている。

彼の最大の武器はクロスボールで、大外から味方の頭にピンポイントで合わる正確なキックを武器にチャンスを量産する。

 

〈FBref.comより〉

  • ペナルティエリア外からのクロス成功数:23(23-24セリエA4位

※今季も同スタッツでセリエA10位(31節終了時点)。先発出場が17試合だけであることを考えれば、90分あたりのクロス成功数は相当高い。

 

 

対面する守備者がうまくコースを切っていたとしても、ひとつ持ち出してからコンパクトな振りでクロスボールを送り込むことでかわしてくる。

この「ズラしてクロス」を高いレベルでやり抜ける選手は多くなく、ルッジェーリの大きな武器となっている。

 

187cmの大型SBであるルッジェーリは、フィジカルを活かした対人守備も武器にしている。振り切られないようついて行きながら、ここぞのタイミングで体を入れて奪いきる。

コンタクトプレー、空中戦にも安定感があり、守備者としても優秀だ。

 

〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

  • ドリブラーに対するタックル勝率:68.8%(チーム内4位
  • パスブロック総数:22(チーム内2位
  • 空中戦勝率:65.6%(チーム内4位

 

「守れるクロッサー」として、現在では幅取りタスクを徹底している感があるルッジェーリだけど、空中戦という武器があることを考えると「フィニッシャーSB」としてのタスクもやれそうなものだ。逆サイドからのクロスボールに対してターゲットになるという、偉大な先達ゴセンスが得意としていたタスクだ。

いまは一芸で勝負している印象があるけど、彼はまだ若い。プレーの幅を広げれば、おのずとアッズーリでも先発の座が見えてくるだろう。

 

 

その他のプレーヤー

ボルナ・ソサ(トリノ)

クロアチア代表の主戦左SBボルナ・ソサが今夏イタリアに上陸した。

彼は今回紹介した「クロッサーSB」の中でも特にクロスボールに特化したプレースタイルの持ち主。ボールを持ったらまず第一選択肢はクロス。低めの位置だろうが、アーリークロスを放っていく。

 

〈FBref.comより〉

  • クロス総数:255(22-23ブンデスリーガトップ
  • ペナルティエリア外からのクロス成功数:37(22-23ブンデスリーガトップ、同5大リーグトップ

 

ドリブルに関するスタッツは軒並み低数値となっていて、実際にプレーを見ても相手と対面する局面ではすぐにボールを離している。低い位置からの運ぶドリブルもやらない。キック一筋を磨いて生きてきたようなプレーヤーである。

トリノでもそのプレースタイルは健在。先発出場は多くないにもかかわらず、クロスボール総数、ペナルティエリア外からのクロス成功数でいずれもチーム内2位のスタッツを記録している。

 

もうソサの項が終わってしまいそうだが、これは手を抜いているわけではない!それだけ彼のプレースタイルが一点突破だということだと思ってもらいたい!(圧)

現在のトリノには、ドゥバン・サパタ(今季絶望となってしまったが…)、アダムスと本格派のストライカーを多く抱えるスカッドとなっていて、ソサのクロスボールが活用されやすい環境にある。

まずは数字を残して定位置をつかみ取りたいところだ。

 

 

ルカ・ペッレグリーニ(ラツィオ)

ローマのプリマヴェーラで7年間を過ごしたペッレグリーニ。紆余曲折を経て、同じ街のライバルであるラツィオに所属している。

彼は左足のキック精度に自信を持っていて、大外からのクロスボールで多くのチャンスを作り出す。

 

〈FBref.comより、12節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりペナルティエリア外から通したクロスボール数:0.53(チーム内3位タイ

 

プレースキッカーを任される場面もあり、自身のセリエA初ゴールは直接フリーキックから記録している。

 

またプレス耐性が高く、自陣低い位置でプレッシングに出てきた相手アタッカーをドリブルでいなす場面が多くみられる。

相手の矢印を読み取り、それを折るようにして持ち出すプレーからはセンスが感じられる。

FBref.comより、5大リーグのサイドバックとペッレグリーニとを比較したときのパーセンタイル。高い数値を記録しているのはドリブル突破成功で、その大部分は相手のプレスをいなすプレーが占めている。

 

守備面ではアグレッシブな守備対応が持ち味で、タックル、インターセプト、ブロック数と言った守備アクションの数が相対的に多くなっている。

対面のアタッカーに自由を与えないという意味で、彼の守備法は決して悪くはないだろう。

ただ、ラフなプレーで警告を受けがちなのが玉に瑕。特に不用意な場面でもアグレッシブネスを発揮して危険な位置でファウルしてしまうのは悪い癖。状況を見極めた守備ができるようになればより伸びるだろう。

 

今回は「クロッサーSB」に分類したが、「運び屋SB」としての資質も持っていて非保持も悪くない。同ポジションを争うライバル、タバレスよりもプレーの幅が広く、汎用性の高いプレーヤーだといえる。

逆に言えば器用貧乏ともいえ、突出した武器がないのも事実。「クロッサーSB」としてはリーグ戦直近4シーズンでアシスト0という数字はさみしい限りで、その他のプレーにしても大きな武器と言えるレベルではない。

このままでは高質な控えSBという立ち位置で終わってしまいそうだ。

まずは限られた出場時間で目に見える数字を残し、アピールしたいところだ。

 

 

ハッサン・カマラ(ウディネーゼ)

フランスで生まれ育ったコートジボワール代表DFハッサン・カマラ。長くフランスでプレーし、ワトフォードを経由して昨季からセリエAのウディネーゼでプレーしている。

カマラの武器は左足から放つキック。それも球種が豊富で、通常のカーブをかけたクロスだけでなく、ライナー性のストレートボールを蹴ってきたり、パンチのある強烈ミドルを打ったりする。

ゴリゴリフィジカル系の見た目をしておいて、キックで魅せてくるおもしろいプレーヤーだ。

 

 

アウトサイド高めを取った位置から多彩なキックを駆使してチャンスメイクするのが得意なプレーヤーで、ひとりでアウトサイドレーンを担当することが多い3バックのWBにうってつけのタレント。ウディネーゼ加入後すぐさま出場機会を得たのも納得だ。

その中でもクロスボールがメインタスクであることから、SB分類マトリックス上の「クロッサーSB」に分類するべきプレーヤーだ。

 

〈FBref.comより、24-25 16節終了時点でのスタッツ〉

  • ペナルティエリア内に届けたクロス数:12(セリエA2位
  • クロス総数:44(チーム内2位
  • アシスト期待値:1.4(チーム内2位

 

守備に散漫なところがあるとはいえ、攻撃面でのプラスがそれを補って余りある。

ウディネーゼではトヴァンに次ぐチャンスメーカーのひとりとなっている印象で、ルッカやデイビスと言った空中戦に強いストライカーを擁するウディネーゼにあって、その存在価値は大きい。対戦相手からすれば脅威となり続けるのではないだろうか。

 

 

ハラランポス・リコヤニス(ボローニャ)

ギリシャ出身のリコヤニスは、カリアリ時代から数えてイタリアでのプレーが8シーズン目を迎えている。

彼は左足のキック精度の高さで生き抜いてきた職人系SBだ。

最大の武器はアウトサイドからのクロスボール。ぴったりと味方の頭を捉えるそのクロスは芸術的だ。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりクロス総数:7.11(チーム内3位
  • 9分あたりペナルティエリア内に届けたクロス数:0.89(チーム内4位

 

 

キック精度の高さはフィニッシュにも活用される。

直接フリーキッカーとしてもミドルシューターとしても優秀で、自らゴールを脅かすこともできるのだ。

パワーと精度を両立させた左足を駆使し活躍するSBである。SB分類マトリックス上の「クロッサーSB」に分類できるだろう。

 

191cmの大型で空中戦に強く、緊急時にはCB起用にもこたえるなど守備でも計算できるタレントなのだが、アウトサイドレーンからのクロス!しか選択肢がない保持時の柔軟性の低さによってチアゴ・モッタ政権下では出場機会が限られてしまっていた。

それが、ロングレンジのパスをビルドアップに組み入れ、攻撃もサイドからのクロスボールを中心とした戦術をとるイタリアーノ政権下では徐々に出場機会を得ており、今季はキャリアハイの4アシストを記録している。

フィオレンティーナ時代のビラーギのようにビルドアップでもより存在感を示せるようになってくれば、さらに重要な戦力になってくれそうだ。

 

 

ドリブラーSB

第一人者

レオナルド・スピナッツォーラ(ナポリ)

ドリブラーSBの第一人者はレオナルド・スピナッツォーラを置いて他にいないだろう。

爆発的なスプリントを武器にしたドリブル突破は並のウインガーをも凌ぐレベルにあり、それを突き付けながら切り返してのクロス、カットインからのフィニッシュなどと組み合わせながら相手守備網を切り崩していく仕掛けは驚異的だ。

 

また低い位置からの推進力ある持ち上がりも彼の武器で、カウンター時には急先鋒となる。

いずれにしてもボールを足元に引き出してからスタートする形を好み、マトリックスの横軸は大きくオン・ザ・ボールに寄った位置となるだろう。

FBref.comより、5大リーグのSBとスピナッツォーラを比較したときのパーセンタイル。プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー、ドリブル突破成功数が振り切れた数字を記録しているのが特徴的だ。

 

その破壊力はアッズーリが優勝を果たした2021年のEUROで全世界に認知された感があるが、皮肉なことにそのEUROで負った大怪我を境に全盛期のキレは戻り切っていない印象。今でも細かい負傷離脱を繰り返している状態だ。

これは、フィジカル的な「キレ」が命なプレースタイルのスピナッツォーラにとっては余計に致命的だといえるだろうが、それでも「ドリブラーSB」の第一人者としての立ち位置は揺るがない。

彼ほどのドリブル特化型SBは今後もなかなか出てこないんじゃないだろうか。

首位を走るナポリでは完全にオリベラのサブと言った立ち位置だが、ここからの奮起を期待したいところだ。

 

 

プロビンチャの注目株

ヴァレンティノ・ラザロ(トリノ)

パオロ・ヴァノーリ新監督のもと奮闘するトリノの崩しで重要な役割を担っているのが攻撃的WBヴァレンティノ・ラザロだ。

彼は高精度のクロスボールを持っていて、大外からチャンスメイクできる。そのキックを買われてコーナーキッカーも務めているから、すでにアシスト数は3つだ。

 

〈FBref.comより、10節終了時点でのスタッツ〉

  • クロス総数:54(セリエA3位

 

でも、彼の怖さは単にクロス精度が高いだけではなく、むしろドリブルの方にある。

トリノはインテルと並んでセリエAの中でもドリブルをしないチームなのだが、ラザロはチームでも異色の存在となっている。

 

〈FBref.comより、10節終了時点でのスタッツ〉

  • ドリブル突破試行数:13(チーム内トップ
  • ドリブル突破成功数:5(チーム内トップ

 

足元のテクニックは安定していて、ボディフェイクやキックフェイントなどを駆使して相手を剥がし、自分でコースを作り出してクロスボールにつなげられる。

左右両足を器用に使いこなせるから、縦に持ち出してからのクロスも内に切り返してからのクロスも精度が高いボールが飛ぶ。しかも、それを両サイドで見せられるというおまけつきだ。定位置は左サイドだけど、ベッラノーヴァが退団してからは右サイドでの出場が基本線となっている。

2年半オーストリア代表から遠ざかっているのが不思議なくらいの実力者だ。

 

守備面では不安が残るものの、WGばりの攻撃性能がそれを補って余りある。単騎で攻撃を完結できるSBはそう多くはない。

今後もトリノのキーマンとして躍動していくだろう。

 

 

期待の若手

アレックス・ヒメネス(ミラン)

レアル・マドリードのカンテラからミランに引き抜かれた左ラテラル、アレックス・ヒメネス。まだ20歳の誕生日を迎えていないが、徐々に出番を増やし重要な戦力のひとりになりつつある。

本来は左SBを本職とするヒメネスだけど、右サイドでもプレー可能で、何ならSBだけでなくWGでもプレー可能。サイドならどこでもやれるスペシャリストといったところだ。

なぜ彼がサイドならどこでもこなせるのかというと、彼の最大の武器がドリブルだからだろう。

ヒメネスはボールを持てば積極的にドリブルを開始、長い距離を運んだりドリブル突破を仕掛けたりと、縦への推進力をチームにもたらす。サイドバックなのにドリブラー、なんだかサイドバックっぽくない。だからウイングもできるという判断だろう。

FBref.comより、ヒメネスを5大リーグのサイドバックと比較したときのパーセンタイル。キャリーは99、ドリブル突破成功は98とともにカンストと言っていい数字。ドリブル小僧SBっぷりが際立つスタッツである。

 

テオほどスピードはないものの、長い距離を運ぶ推進力はまさにテオをほうふつとさせるそれ。何よりドリブルで仕掛けるんだというメンタリティ。ふつう10代のサイドバックが、セリエAの歴戦の戦士たち相手にこんなにドリブルで仕掛けられない。アグレッシブで、闘争心あふれるパーソナリティこそ彼の武器と言えるかもしれない。

長年探し続けていたテオの後継者がついに見つかったかもしれない。それなら両サイドにテオを置いちゃおう!ということで、最近のヒメネスは右サイドバックとしての出場が増えている。

ただし、大先輩はただのドリブル野郎にあらず。別項で解説している通り、テオは「司令塔SB」としても優秀だし、「ストレートランナー」でもあって「フィニッシャーSB」でもある。ああ見えてかなり万能型なのだ。

それと比べるとヒメネスはまだドリブル特化のドリブル小僧。ゲームメイク、チャンスメイクはまだまだ発展途上で、オフ・ザ・ボールのランニングの質ももっと上げていきたいところだ。

 

また、対人守備にも磨きをかけたい。

初速で出遅れて相手に振り切られてしまう場面が散見され、守備力はお世辞にも高いとは言えない。まだ大きな伸びしろを残しているととらえたいところだ。

 

↓ ヒメネスが振り切られて上げられたクロスから失点したシーン。

 

アレックス・ヒメネスはSB分類マトリックス上の「ドリブラーSB」に分類できるだろう。

良くも悪くも昔のテオを見ているようで、なんだか懐かしい感じだ。

お手本となる先輩のように、プレーの幅を広げて完成度の高いSBになってもらいたいところだ。

 

 

ポジショナルSB

第一人者

マティアス・オリベラ(ナポリ)

24-25セリエA首位を走るナポリの左サイドで定位置を確保しているのがマティアス・オリベラだ。

彼の最大の武器はチームのバランスを整えるポジショニングだ。アウトサイドと、ひとつ内のインサイドレーンを反復横跳びしながら、手薄なポジションを埋めてバランスをとる。

その時に基準点となっているのは、1列前に陣取るクヴァラツヘリア(退団後はダビド・ネレス)。昨季以上に内外使い分けるクヴァラドーナに合わせ、レーンが被らないように立ち位置を調整する。

そればかりでなく、クヴァラツヘリアにボールが入ったら必ず後ろから追い越しをかけてサポートすることにも抜かりがない。その場その場で求められるプレーを淡々とこなしていく様子はいぶし銀という言葉がよく似合う。

クヴァラツヘリアがセンターから仕掛ける場面。彼に替わって左で幅をとっていたオリベラは、斜めにカットインするランニングで裏のスペースを強襲する。
これに釣られた相手DFが空けたスペースへクヴァラが侵入し、左足を振り抜いてゴールゲット。数字には記録されないが、オリベラらしい「アシスト」となった。

 

オン・ザ・ボールで特別なスキルを持っているわけではなく、高精度クロッサーでもなければ試合を組み立てる戦術眼に優れているわけでもない。

ボールを受けたらシンプルにさばいて、自分がいるべきポジションへ移動してまたチームを整える

そこに自分の強みがあるとわかっているからこそ、欲を出したプレーをしないのもまた好印象。寡黙な仕事人と言った面持ちだ。

 

そういうプレースタイルだからこそ、彼のすごみはスタッツには表れない。これはもう、実際にプレーを見てみてくださいとしか言えないのだ。

 

個人技では明らかにスピナッツォーラの方が上。でも、ナポリの左サイドにはクヴァラツヘリアが君臨している。その相棒には突出した個人技よりも、王様に、ひいてはチーム全体に安定と安心を与えるプレーヤーを置きたい、ということなのだろう。だから、オリベラはナポリの左サイドバックで定位置を保っているのだ。

 

ちなみにオリベラは対人守備にも強みを持っていて、どっしり構えた上で相手に仕掛けさせ、それに対するリアクションでボールを奪う余裕を感じる対応が持ち味。ボールと相手の間に体を入れてクリーンに奪うのがうまい。

その守備力が評価されてか、ウルグアイ代表の一員として参加した2024夏のコパ・アメリカでは4バックのCBとして起用されていた。

 

ボールのないところで堅実に仕事をこなし、チームに安定感をもたらす様子はまさにSB分類マトリックス上の「ポジショナルSB」。その第一人者と呼ぶにふさわしいプレーヤーだといえそうだ。

 

 

期待の若手

アレックス・バジェ(コモ)

バルセロナのカンテラ一筋で育ってきたU-20スペイン代表DF アレックス・バジェは、今冬のコモの新戦力。早速左SBの定位置を確保し、安定したパフォーマンスを見せている。

バルサのカンテラ出身者らしく、ポゼッションスタイルとの親和性が高いプレースタイルを持っているバジェ。その特徴は柔軟なポジショニング安定したテクニックだ。

バジェはサイドバックをベースポジションとしつつも、その定位置を頻繁に離れてインサイドに入り込む。相手ウインガーに背中で消されていたバジェが内側で顔を出しパスを受けることでプレスを打開する場面が見られたりする。

あるいは、崩しの局面でも積極的にチャンネルランを見せて相手の陣形を崩そうとする。外に張りつくのではなく、内外柔軟に使い分けながら自らの立ち位置でチームのバランスを整え、パスコースを作り出す。その感覚はバルサで鍛えられたものなのだろう。

SofaScoreより、コモに加入する前に所属したセルティックにおけるバジェのヒートマップ。アウトサイドレーンだけでなく、ハーフスペースまで幅広くカバーしているのが特徴的だ。

 

さらには、相手のプレスを打開する能力も高い。相手に圧をかけられたら少ないタッチでボールを離していなし、相手が突っ込んでくれば体を開いてボールを流し、うまく入れ替わる。そのプレス耐性の高さ、プレス打開力の高さはビルドアップに関与することに慣れていなければ見せられない芸当である。

というわけで、ボール保持を重んじるコモにあって、バジェは理想的なタレントと言える。オン・ザ・ボールでの発信力はまだ弱いものの、チームの組織的なバランスの中でどこに立つべきかを把握する戦術的インテリジェンスの高さは高く評価していいはず。

オンよりもオフに強みがあることから、SB分類マトリックス上の「ポジショナルSB」に分類すべきプレーヤーだろう。

 

まだ非保持時のプレーには粗があって、守備者としてはまだまだこれから大成していくプレーヤーと言った印象。

特段足が速いわけでもなく大柄でもないバジェは、フィジカル的には相手に後れを取る場面も多くなってくるだろう。それをいかにカバーするか、守備の個人戦術の成長が求められる。

まだ20歳と若いだけに、今後の成長を見守りたいタレントである。

 

 

プロビンチャの注目株

リドヘシアーノ・ハプス(ヴェネツィア)

スリナムという国を知っているだろうか。南米大陸、ブラジルの北に位置している国なのだが、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)に所属している。ワールドカップ出場歴はない。

そんな小国なのだが、実は旧宗主国のオランダにとっては貴重なタレントの供給源となっている。たとえばエドガー・ダーヴィッツとクラレンス・セードルフはスリナム出身だし、ほかにもフィルジル・ファン=ダイク、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ステフェン・ベルフバイン、ナイジェル・デヨング、フランク・ライカールト、パトリック・クライファート…。スリナム系移民選手は錚々たる面子だ。

というわけで有望な選手は基本的にオランダ代表を選択していく運命にあるスリナムなのだが、逆にオランダの年代別代表に選出されていたにもかかわらずA代表はスリナムを選択する例もある。リドヘシアーノ・ハプスはその1人である。

 

ハプスはユース時代にはウインガーとしてプレーしていたというプロフィールの持ち主なのだが、プレーは特段ウイング的ではない。むしろ柔軟なポジショニングとシンプルなパスさばきでチームの潤滑油となる、「ポジショナルSB」である。

左CBのバスケスが幅をとっているのを見て、インサイドに侵入しているハプス。ワンツーの壁役となった。

 

FBref.comより、5大リーグのSBとハプスを比較したときのパーセンタイル。PKを除いたゴール期待値やペナルティエリア内でのボールタッチ数などで高い数字を示している。

 

その柔軟なポジショニングを活かしてゴール前にも進出するハプス。「フィニッシャーSB」じゃねえのかよ!とのツッコミが聞こえてきそうだが、彼の柔軟なポジショニングはビルドアップ時にも発揮される。

加えて対人守備性能の高さも彼の魅力で、3バックの左CBとして起用される試合も見られている。フィジカルコンタクトを苦にせず、タイトな寄せで相手の自由を奪いディ・フランチェスコの期待に応えている。

様々なポジションで求められる仕事に応えるいぶし銀の仕事人である。

 

 

その他のプレーヤー

カルロス・アウグスト(インテル)

ブラジル出身のカルロス・アウグストは、コリンチャンスで芽が出ず、当時2部にいたモンツァに加入して徐々にステップアップしてきた苦労人。そこから2023年10月シリーズでブラジル代表デビューを果たすなど、大きく飛躍を遂げた人物だ。

22-23にモンツァでデビューしたとき、カルロス・アウグストは攻撃力の高さを売りにしていた。実際、このシーズンのセリエAで6ゴール5アシストとWBとしてはかなり優れた数字を残している。

このスタッツを支えたのは、優れたオフ・ザ・ボールのセンスだ。後方からのランニングはもちろん、逆サイドにボールがあるタイミングでは積極的にゴール前に進出しフィニッシャーとしての役割を担った。点が取れるエリアに入っていける能力こそが彼の武器となっていたのである。

 

そのポジショニングセンスはインテルでも存分に発揮されている。味方と頻繁に立ち位置を入れ替えるシモーネ・インテルのスタイルにすんなりと順応できたのはこの部分が大きい。

味方に合わせて最終ラインをフォローする場面と幅をとる場面とを使い分け、チームのバランスをとっている。地味だけど、その役割は欠かせないのだ。

 

さらに、インテルに来てからのカルロス・アウグストは左WBだけでなく3バックの左を担当する試合も増えている。

3バックの一角を任されるということは、それだけ守備能力も高いということ。空中戦に強く(FBref.comによれば23-24の空中戦勝率は69.4%でセリエAトップ10入り)、単純に跳ね返し性能が高い

その上、マーキングの技術が非常に優れている。常にマーカーに触れる距離感を保ちながら、ボールを見ている場面でも腕で相手の行動を把握・制限し、危険なスペースから遠ざけつつマークを外さない。

だから、彼が中央を守っているとそう簡単にはゴールを割られないのだ。

 

〈FBref.comより、24節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたり空中戦勝利数:4.02(チーム内トップ

 

自らチャンスメイクする能力はそこまで高くはなく、アシストを量産するタイプではないカルロス・アウグスト。ただし、組織の中で適切にふるまいつつ危険なエリアをアタックする感覚は鋭敏で、シモーネのポジショナルかつ流動的なサッカーとの相性は抜群。ディマルコ、バストーニというチームの要2人のバックアップとして重要な存在だ。

 

 

アナス・サラー=エディン(ローマ)

アナス・サラー=エディンではモロッコ系オランダ人。名門アヤックスユース出身で、レンタル先のトゥベンテで活躍し今冬にローマが引き抜いている。

個人的には全く知らない選手だったので、ローマ加入を知ってからどんな選手なのかいろいろとサイトを眺めていた。出てくる情報としては、起用できるポジションが非常に多いということ。

レフトバックがメインだけど逆サイドでも起用できるし、なんならセントラルMFもこなせるらしい。守備的なポジションならどこでもできるようだ。

transfermarktより、過去の起用履歴。

 

そして、実際にそのプレーを見て納得した。

サラー=エディンはポジションを崩すことをいとわない。ハーフスペースに潜ることに何の抵抗もなく、アンカー脇でボールを呼んでさばける。サイドバックだけど「360度の感覚」を持っている。こういう選手、オランダに多いイメージ。さすがアヤックス産。

その他にも、マヌ・コネが流れてくるためのスペースを空けるためにあえて相手のウイングにつかまった状態で列を上げるなど、自分のポジション移動でチームのバランスを整えたり、相手の陣形を崩したりする感覚を持っているなと感じた。

SB分類マトリックス上の「ポジショナルSB」の理想的ムーブである。

今季エールディビジでのサラー=エディンのヒートマップ。アウトサイドレーンだけでなく、ハーフスペースにまでプレーエリアが広がっていることがわかる。

 

さらに、サラー=エディンはこのタイプのプレーヤーとしては足元のテクニックも確かな部類だ。後方からの配球である程度試合を組み立てられる。

また、スピードと持久力を併せ持ち、上下運動を繰り返す走力も持っている。オン・ザ・ボールで長い距離を運ぶプレーも持ち味で、キャリーに関するスタッツは90分あたりに換算するとローマの中でもトップクラスだ。

 

〈FBref.comより、29節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりプログレッシブ(縦方向の前進)キャリー数:4.71(チーム内2位
  • 90分あたりプログレッシブ(縦方向の前進)キャリー総距離:152.2m(チーム内トップ

 

課題は崩す局面での貢献度か。特にアウトサイドで幅をとるタスクを担うとき。縦に持ち出してクロスとか、ドリブルで仕掛けたりとか言ったプレーが求められる場面でのプレーだ。

サラー=エディンは個人での仕掛けはあまり得意ではなさそうで、相手の準備が整っている場面では自分で仕掛けず、味方に預けてしまう場面が多かった。

また大外からのクロスボールもそこまで精度が高くなく、こちらも積極性に欠けたことからあまり自信がないように見えた。

ラニエリローマのWBは幅取りタスクを求められる傾向が強く、ゆえに崩す局面での消極性が悪目立ちしやすい印象を受ける。ライバルのアンヘリーニョが優れたクロッサーであることを考えても、ここを改善できなければ定位置奪取は難しいはず。敵陣でのプレークオリティはこれから磨きをかけたいところだ。

 

またこちらはプレー集でしか確認できていないものの、守備に関しても要改善に見えた。

相手と対面するときに足が完全に横並びになっていて、縦に仕掛けられた時に反転に時間がかかって後れを取ってしまう場面が多いのだ。

持ち前のスピードと瞬発力で何とかしてしまっているものの(それはそれですごい)、ここは要改善だろう。

ポジショニングも含めて、イタリアで磨かれてほしいものだ。

 

というわけで、サラー=エディンはSB分類マトリックス上の「ポジショナルSB」に分類したい。柔軟なポジショニングと確かなテクニックでチームのビルドアップを円滑にするオランダらしさと、縦の上下動を精力的にこなすエネルギッシュさが融合したサイドバックだ。

サイドは違えど、理想像はフィオレンティーナのドドだろう。今後の成長に期待したい。

 

 

マスターSB

第一人者

アンドレア・カンビアーゾ(ユベントス)

万能SBに与えられる称号、マスターSBの第一人者として名前を挙げたいのがアンドレア・カンビアーゾだ。

ユベントスの試合で、カンビアーゾの動きだけを追ってみてほしい。彼が縦横無尽に動き回っていることがわかるだろうから。

大外で幅を取ったかと思えば、中盤に侵入しMFたちと連動する。ポジショニングが非常に柔軟であることは、彼の特徴となっている。

カンビアーゾの24-25シーズンのヒートマップ。さながらMFのごとくピッチ全域にヒートマップが分布している。

特筆すべきは、最終ラインがボールを持っているタイミングでのパスを引き出すプレーのうまさ。ここぞのタイミングで入ってきてほしいエリアにスッと顔を出し、縦パスを引き出して相手のプレッシャーラインを置き去りにするプレーは職人技だ。SBにおけるライン間レシーバーで彼の右に出る者はいない

 

ここまでなら、完成度の高い「ポジショナルSB」で終わってしまう。カンビアーゾが特別なのは、それぞれのポジションで求められるボールテクニックを高次元で備えているところだ。

たとえば、ライン間でボールを引き出したタイミングで背後から強烈にプレスを受けたとしても、ボディフェイクなどを駆使して相手を剥がすことができる。場合によってはそのままターンし、ドリブルで数十メートル運んで大きく前進させるプレーを見せてくれることさえある。

オフ・ザ・ボール、オン・ザ・ボールが高次元に融合しているからこそ、カンビアーゾはボール保持の潤滑油として極めて優秀なのだ。

 

それだけでなく、カンビアーゾは大外で幅をとるウイングタスクを任せてもハイクオリティだ。

縦に仕掛けてからのクロスボールとカットインからのコントロールショットの2択をハイレベルに使いこなすプレーヤーは、本職ウインガーでもそうそう多くはない。

カンビアーゾはこれを両立させており、ウインガーとしても優秀だ(ゆえにチアゴ・モッタによってウインガーとしても起用されている)。

 

さらに、両利きであるためにこれらのプレーを左右両サイドで見せられるというおまけつきだ。

カンビアーゾの対応可能なタスクをマトリックスに落とし込むとこんな感じに。ウインガーとして優秀ゆえに低い位置でプレーしていないが、たぶん司令塔SBもやろうと思えばハイレベルにこなせるだろう。

SBでありながら、MFとしてもWGとしてもハイクオリティ。年々課されるタスクが複雑化し多様化しているSBに求められる能力を高次元で兼ね備えている、マスターSBの、いやSB自体の第一人者と呼ぶにふさわしいタレントと言えるだろう。

 

 

プロビンチャの注目株

ギオルゴス・キリアコプーロス(モンツァ)

ギリシャ代表DFギオルゴス・キリアコプーロス。ここ数シーズンはくすぶっていたが、今季はかつての輝きを取り戻している。いや、今が全盛期かもしれない。

彼はサイドバックからウインガーまでこなす左サイドのスペシャリストだ。なぜどのエリアでも起用できるのかといえば、プレーの引き出しが非常に多いからだろう。

 

低い位置でボールを持てば、くさびを味方の足元に入れるか、自らドリブルで持ち上がるかを選択する。

もともと推進力があり長距離ドリブルのイメージが強いかもしれないが、味方の足元に入れる鋭いくさびもハイクオリティだ。

組織としても個人としてもボールを前線へ運べる選手だと言える。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • ファイナルサードに届けたパス数:46(チーム内2位
  • プログレッシブ(縦方向の前進)パス数:44(チーム内2位タイ
  • プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー数:35(チーム内トップ
  • キャリーによるファイナルサード侵入数:17(チーム内2位

 

↓ 低めの位置から送り込んだくさびから生まれた得点

 

↓ キリアコプーロスの持ち上がりから生まれた得点

 

崩す局面でもクロスボールとドリブル突破と、両方を選択肢に持っているキリアコプーロス。

大外からシンプルにクロスを放っても精度が高く、多くのチャンスを演出している。

だが、それ以上に相手の脅威となるのはドリブルで仕掛けた時。決して瞬間的なキレがあるわけでも、テクニカルなドリブルができるわけでもないのだが、強引に仕掛けてパワーでこじ開ける。華麗ではないけど驚異的だ。

さらに、より低めの位置でボールを持ったら、左足一閃のミドルシュートも選択肢に持っている。

強烈な一撃で何もないところからゴールを生めるのは、チームにとって大きなプラス要素だと言っていいはずだ。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • クロス総数:89(セリエA4位
  • ドリブル突破試行数:25(チーム内3位
  • キャリーによるペナルティエリア侵入数:6(チーム内トップ

 

↓ アーリークロスからのアシスト

 

↓ ドリブルでの仕掛けからの得点

 

↓ サッスオーロ時代に決めたミドルシュート

 

攻撃時にサイドバックに求められるスキルをほぼコンプリートしているといっても過言ではないキリアコプーロス。SB分類マトリックス上の「マスターSB」に分類されてしかるべしだろう。

低いエリアから高いエリアまで、アウトサイドレーンを一手に引き受けるWBは、彼の万能な能力を余すことなく発揮できるハマり役だ。

粘り強い対人守備も魅力で、総合的な能力値はビッグクラブでスタメンを張ってもおかしくないクオリティを持っている。

降格圏をさまようモンツァにあって、リーグ戦全試合フル出場で2ゴール3アシスト(15節終了時点)。今季終了後には評価を上げていることは間違いないはずで、ビッグクラブ挑戦に期待したい。

 

 

フアン・ミランダ(ボローニャ)

ベティスとバルセロナのカンテラで育ったフアン・ミランダは、スペインの各年代別代表に選出されてきたエリート。2大会連続でオリンピックに出場していて、東京五輪銀メダル、パリ五輪金メダルを獲得している。

その実力をボローニャでもしっかり発揮し、左サイドにガッチリと定位置を確保しているミランダ。彼の武器はマルコス・アロンソとも比較される左足からの高精度キックだ。

ビルドアップでも崩しでもサイドを起点とするイタリアーノ監督の戦術において、高いキック精度を武器にするミランダはまさに理想のタレント。

特に崩しの局面での貢献度は抜群で、クロスボールに関するスタッツで軒並みセリエAトップクラスの数値を記録。特にペナルティエリア外から通したクロスの数は今季のセリエAで堂々のトップ。アシスト数も6とサイドバックとしては十分に高い数字を残していて、リーグを代表するSBに上り詰めようとしている印象だ。

 

〈FBref.comより、29節終了時点でのスタッツ〉

  • クロス総数:163(セリエA4位
  • ペナルティエリア内に通したクロス数:26(セリエAトップ
  • アシスト総数:6(セリエA4位
  • キーパス総数:42(セリエA9位

 

もともとリーガ時代からクロッサーとしての能力に定評はあったものの、ボローニャに加入してからビルドアップにおいても左足を活かせるようになってきていて、彼のところから効果的な縦パスが入って前進する場面が多くみられるようになってきた。

 

〈FBref.comより、29節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりファイナルサードに届けたパス数:6.07(チーム内2位
  • 90分あたりプログレッシブ(縦方向の前進)パス数:6.22(チーム内3位

 

ボールを前に進めた後、さらにそこから追い越しをかける走力も持っていてウインガーに対するサポートを怠らない点もGOOD。

対人守備にも安定感が出てきていて、決して攻撃一辺倒の選手ではない。

サイドバックに求められる基礎的な能力をまんべんなく、なおかつ平均値高く備えているプレーヤーと言った印象だ。

これが、ミランダを「クロッサーSB」とせず、SB分類マトリックス上の「マスターSB」に分類する理由である。

 

運ぶ局面でも、崩す局面でもサイドを重視するイタリアーノが率いることになった今季、ミランダがスカッドに加わったことは極めて大きな意味があったと思う。

ボローニャの今季の好調を支えるタレントだと言っていいだろう。

 

 

アルベルト・モレーノ(コモ)

セビージャ、リバプール、ビジャレアルという錚々たるクラブ遍歴を持つビッグネームがコモに加入、さすがの格の違いを見せている。

タッチライン際を疾走するオーソドックスなSB…というイメージを勝手に持っていたのだが、実際のプレーを見てみたら想像以上の万能っぷりで驚かされた。

セスク監督のもと、ボール保持に機軸を置いたスタイルを志向するコモ。そのビルドアップにおいて中核となっているのがこのモレーノだ。

左足のキック精度の高さはもちろんのこと、それ以上に目を引くのは柔軟なポジショニング。さかんにMF化して中盤からボールを配給、攻撃の方向を司る司令塔として躍動しているのだ。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • パス総数:735(チーム内2位
  • ファイナルサードに届けたパス数:44(チーム内2位
  • プログレッシブ(縦方向の前進)パス数:53(チーム内2位

 

SofaScoreより、今季のモレーノのヒートマップ。ハーフスペースにも広くプレーエリアが分布しているのが特徴的だ。

 

さらに、崩す局面ではWGをサポートしながら機を見たクロスボールを供給しチャンスメーカーとしても振る舞う。

縦にえぐってからの折り返しも、アーリークロスも質が高いのはさすがと言ったところだ。

 

柔軟なポジショニングと高いキック精度を活かして攻撃の全局面に絡んでいくアルベルト・モレーノ。SB分類マトリックス上の「マスターSB」に分類するべきプレーヤーだろう。

ピッチ上で見せているポジティブな印象とは裏腹に結果がついてこず、降格圏すれすれをさまよっているコモ。残留に向けたキーマンは間違いなくモレーノだ。

 

 

その他のプレーヤー

ジョーダン・ゼムラ(ウディネーゼ)

イングランドで生まれ育ったジンバブエ代表DFジョーダン・ゼムラは、万能性の高いSBだ。

まず、左利きだけど右足もそん色なく使え、両利きと言っていいレベルにある。

セリエAにおけるジンバブエ人史上初ゴールとなった昨季の得点も、左足で切り返して右足で決めたものだった。

 

この場面のように、左足で縦に持ち出すことも、右足で内に持ち出すこともできるのが両利きゼムラの最大の特徴であり特権。なおかつ状況を読み取る能力にも長けているから、どちらのほうがより適切かを判断して器用に使い分ける。

だから、相手からすれば非常に対応しづらい相手だろう。

これは彼のドリブル突破成功数というスタッツに目に見えて現れている。ゼムラは特別スピードに優れているわけでもないのに、するすると相手の隙間を抜け出していくようなドリブルができる。

内外自在に進路を変えながら、相手の届かないところにボールを運んでいく巧みなドリブルは見ていて癖になる。

 

〈FBref.comより、16節終了時点でのスタッツ〉

  • ドリブル突破成功数:19(セリエA8位

 

さらに、ゼムラオフ・ザ・ボールでも内外柔軟に立ち分けて相手を混乱させる

大外に張ってクロスボールを送り込む通常のSBタスクを担うこともあれば、内に立ってライン間でパスを引き出したり、外から内へのダイアゴナルランで相手の守備網を陥れたりと、オフ・ザ・ボールでも柔軟性と戦術眼が光る。

どうやら大学でスポーツ科学を専攻した秀才らしく、その知性がプレーから垣間見られるのが面白い選手だ。

SofaScoreより、今季のゼムラのヒートマップ。敵陣に行くにしたがって、プレーエリアがハーフスペースにも広がっているのが特徴的だ。

 

オン・ザ・ボールでもオフ・ザ・ボールでも、柔軟なプレーの使い分けが光るゼムラ。SB分類マトリックス上の「マスターSB」に分類されるべきプレーヤーだろう。

4バックのSBで起用された試合では後方からの配球でも水準以上のクオリティを発揮していて、こなせるプレーの幅が本当に広い選手だ。

ポゼッション志向のクラブでこそ輝きそうなタレントゆえ、来夏のステップアップを期待したいところだ。

 

 

ストレートランナー

第一人者

アントニーノ・ガッロ(レッチェ)

8歳からプレーしてきた故郷のクラブ・パレルモが破綻するという事態を経験したガッロは、そのタイミングでレッチェに入団。以降同クラブでプレーし続けていてるチーム最古参だ。

彼の魅力はエネルギッシュな上下動。タッチライン際を疾走し、攻守に奔走する。

攻めては味方をシンプルに使いつつ、サイド裏のスペースを突くランニングでパスを引き出しそこからクロス、というのがひとつの形。ランニングで攻撃に変化を加えるスタイルはSB分類マトリックス上の「ストレートランナー」の理想的なそれだ。

ランニングの質(特にタイミング)が高くて、彼のところから多くのチャンスが生まれている。

さらに言えば、ストレートランナーとしてはクロス精度が高い印象。大外からの放り込みで、レッチェ最大のチャンスメーカーとなっている。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • ペナルティエリア内に届けたクロス数:32(23-24セリエA2位23-24 5大リーグ3位
  • アシスト期待値:1.5(今季チーム内トップ

 

 

さらに、ガッロは安定した守備でもチームに貢献する。

粘り強い対人守備ももちろん魅力だけど、それ以上にきちんとしているのはボールがないところでの準備の部分。

常に周囲を警戒して認知できていない相手を減らすように努めているし、逆サイドからクロスが上がってきそうな場面ではCBの後ろに絞り込んで危険なスペースをケアする「第3のCB」としての役割を怠らない。

組織の一員として機能する守備の戦術眼に非常に優れているのだ。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • タックル勝利数:16(チーム内2位タイ
  • パスブロック総数:14(チーム内2位トップ

 

ガッロのプレースタイルは、古典的なSBのそれ。しっかりした守備とアウトサイドレーンの上下動、そこからのクロスボールの供給だ。

そのクオリティが高くて、いまや「ストレートランナー」の第一人者と称して問題ないレベルまで来ていると思う。

まだ24歳と伸びしろを残していることからも、ビッグクラブからお声がかかってもおかしくないタレントだと思っている。レッチェの中でも再注目タレントのひとりだ。

 

 

プロビンチャの注目株

エマヌエレ・ヴァレーリ(パルマ)

ラツィオ下部組織出身のエマヌエレ・ヴァレーリは、セリエD、セリエC、セリエBでそれぞれ2年ずつ研鑽を積んでセリエAの舞台に這い上がってきた苦労人だ。

彼の最大の武器は左足のキック。それも、精度が高いだけでなくパンチのある強烈なキックを蹴ることができる。

初めてセリエAに挑戦したクレモネーゼ時代には、そのキック精度を活かし、アウトサイドかつ高めの位置から攻撃を操るサイドの司令塔として機能していた。

 

〈FBref.comより、クレモネーゼ時代(22-23)のスタッツ〉

  • ペナルティエリア内に届けたクロス数:32(セリエAトップ5大リーグ2位

 

 

一方、今季のヴァレーリはまた違った一面を見せている。

現在所属しているパルマは自陣でのブロック守備とそこからの縦に速い攻撃を志向していて、ヴァレーリもこれに合わせて縦への速さを見せている。

特筆すべきはランニングの鋭さとタイミングの良さ、そしてそれを90分間繰り返す持久力だ。

特にカウンター局面では、必ずと言っていいほど左サイドを全力で駆け上がるヴァレーリの姿を見ることができる。それも味方が前を向いてスルーパスを出せるタイミングで視界に入ってくるのが絶妙だ。

 

↓ 最終的にアシストするヴァレーリのランニングに注目。

 

今季のプレースタイルと、その中で見せているランニングの質の高さから「ストレートランナー」に分類したけど、「クロッサーSB」としてもハイクオリティに振る舞えるだけのキックを持っている。

インサイドに絞り込んで強烈なミドルシュートを打つこともできて、よりポジショナルなサッカーに組み込まれたら新たな才能が開花しそうな感もある。

万能性が高く、ビッグクラブでスタメンを張っていてもおかしくないタレントだ。

 

 

その他のプレーヤー

リベラト・カカーチェ(エンポリ)

セリエA史上初のニュージーランド国籍プレーヤーであるリベラト・カカーチェ。母国で16歳でプロデビューを果たした早熟で、ニュージーランドの未来を担うタレントだ。

184cm・81kgというがっしりとした体格を持つカカーチェは、持ち前のフィジカルを活かしたエネルギッシュなプレーで攻守に躍動する。

攻撃時には脚力を活かしたランニングで攻撃にアクセントをつけていく。相手ウインガーが仕掛けるタイミングでのサポートランはもちろんのこと、中央3レーンで味方が前を向いた際にはラストパスを引き出すようにペナルティエリア内を強襲することもできる。

そのため、SBの中ではシュートが多くなっている。

FBref.comより、カカーチェを5大リーグのSBと比較したときのパーセンタイル。シュート数が多くなっていることがわかる。

 

 

クロスボールの質も悪くなく、ボールを受ければ大外からチャンスメイクする能力も高い。

 

〈FBref.comより、12節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりアシスト期待値:0.10(チーム内トップタイ
  • 90分あたりキーパス数:2.26(チーム内トップ
  • 90分あたりクロス数:4.52(チーム内2位

 

 

非保持では持ち前のストレングスとアジリティを活かし、対人守備に挑む。自ら積極的にタックルを仕掛けるのが特徴的で、ゆえにカード数が多いのが玉にきずだけど、相手からすれば嫌な守備者だといえるだろう。

 

〈FBref.comより、12節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりパスブロック数:1.29(チーム内2位

 

オーソドックスなSBの動きを高い質で実現する、そんな堅実なプレーヤーだ。SB分類マトリックス上では「ストレートランナー」に分類できるだろう。

 

 

トンマーゾ・アウジェッロ(カリアリ)

トンマーゾ・アウジェッロは アマチュアクラブ出身で、セリエDで3シーズン、セリエCで3シーズン、セリエBで2シーズンを経てセリエAの舞台にたどり着いた苦労人である。

なぜ彼がここまで上り詰められたのかというと、サイドバックの基本にとても忠実だからだろう。

運動量豊富で、90分通してタッチライン際を上下動できる

非保持時には対面の相手に対してしつこくついて行き自由を与えない

保持時には高い位置をとってクロスボールを送り込みチャンスメイクする。

ザ・サイドバックというスタイルを忠実に遂行し続けるのがアウジェッロという男だ。

特に今季はカリアリの左サイドのキーマンとなっていて、アウトサイドラインはアウジェッロに一手に任されている印象。

彼がシンプルにクロスを放り込むことをチーム戦術に組み込んでいて、クロス数はセリエA屈指の数字になっている。

決して質がめちゃくちゃ高いわけではないけど、それを補う量で勝負するスタイルでチャンスメイクを積み重ねている。

 

〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

  • クロス総数:174(セリエA3位
  • ペナルティエリア内に届けたクロス総数:24(セリエA2位
  • アシスト数:5(チーム内トップ

 

 

守備に関しても、引いて守る時間が長いカリアリにあって対面のウインガーをしっかりと封じ込める試合が多い。

クロスが上がってくるタイミングで距離を詰めてのブロッキング、相手と並走しながらのタックルは見ものだ。

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • ドリブラーに対するタックル数:19(チーム内2位
  • ドリブラーに対するタックル勝利数:19(チーム内2位
  • ドリブラーに対するタックル勝率:68.4%(チーム内2位

 

インサイドに入ってのプレーはほとんど見せず、アウトサイドラインを上下動しながらプレーする古典的なスタイルからSB分類マトリックス上の「ストレートランナー」に分類したい。

サンプドリア時代からいいプレーを継続してた印象があり、どのクラブ、どの試合でも安定したパフォーマンスを見せてくれる好プレーヤーだ。

 

 

ドマゴイ・ブラダリッチ(ヴェローナ)

若くから将来を嘱望され、20歳にしてクロアチア代表レビューを果たした経歴があるブラダリッチ。今季のヴェローナの左SBのファーストチョイスとなっている。

ブラダリッチはエネルギッシュな左SBだ。タッチライン際を上下動しながら攻守に絡んでいく。

攻撃時の主なタスクは攻め上がってからのクロスボール。浮き球のクロスよりも、GKとDFラインの間に送り込む速いグラウンダーのクロスを得意としているようだ。

 

〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

  • クロス総数:21(チーム内4位
  • アシスト期待値:1.0(チーム内3位

 

非保持時にもアグレッシブな姿勢は変わらず、果敢に対面のアタッカーに対してデュエルを仕掛けていく。

自分よりも大柄なアタッカーに対してもひるまずに立ち向かっていく姿は頼もしいところだ。

 

総じてオーソドックスなSBタスクを愚直にこなすプレーヤーと言った印象で、その上下動に最大の魅力があることからSB分類マトリックス上の「ストレートランナー」に分類したい。

 

 

運び屋SB

第一人者

テオ・エルナンデス(ミラン)

運び屋SBの第一人者はミランでプレーするテオ・エルナンデスだ。

 

〈縦方向のキャリー総距離〉

  • 4840m(21-22セリエAトップ
  • 5573m(23-24セリエAトップ

 

スピードはもちろんのこと、それ以上にストレングスとボディバランスが卓越しているのがテオの強み。ゆえにドリブル中にコンタクトを受けても全くバランスを乱さないまま突き進むことができ、相手からすればファウルでもしない限り止めることは困難だ。

ピッチを縦に切り裂き、一気に運ぶドリブルはビルドアップはもちろんのこと、カウンターにおけるミランのメインウェポンとして機能している。

シーズンに1つは自陣からの独走ドリブルからゴラッソを叩き込んでおり、理不尽極まりないプレーヤーである。

 

テオは、ミランにやってきたからこの走力をオフ・ザ・ボールでも活用する術を身に着けた。特に、ペナルティエリア内への走り込みを習得してから、得点数の多いSBに進化している。

 

テオの前に構えるのは、リーグ屈指のドリブラーであるラファエル・レオン。彼の「引力」によって相手のDFラインが引き延ばされたタイミングで、テオがチャンネルに侵入しラストパスを引き出す。

レオンtoテオのフィニッシュはミランの必殺技で、一瞬の隙さえあれば試合の流れ関係なしに得点を生み出す飛び道具となっている。

 

オン・ザ・ボール、オフ・ザ・ボールともに走力を活かしたプレーで相手の脅威となるテオなのだが、イタリアにやってきてからプレーの幅を大きく広げている。

特に低い位置でボールを持ってからの配球能力が大きく向上。「司令塔SB」としてもそん色ないパス出しが可能となっている。

特にレオンとの連携は阿吽の呼吸。相棒を自在に操り、テオtoレオンでも得点を量産している。

 

また、ボールの受け手としてもランニングで相手の急所を突くばかりでなく、大外からライン間にスッと入ってきてくさびを引き出すことも。いわゆる偽SB的な動きも可能で、オフ・ザ・ボールにおいてもプレーの幅は広い。

23-24のテオのヒートマップ。インサイドにも多く侵入していることが読み取れる。

 

というわけで、テオの対応可能なタスクをマトリックス図に落とし込むと下のようになる。

サイドバックに必要なオフ・ザ・ボールの動きをコンプリートしており、なおかつ低めのエリアで求められるオンオフ両方のタスクをコンプリートしていることが読み取れる。

逆に、高いエリアでのオン・ザ・ボールのプレーは凡庸。狭いエリアで仕掛けるにはアジリティとボールタッチの繊細さが不足しており、得意とするところではない。

クロスボールも正確だが、縦突破してからの並行クロスというよりはアーリークロスによるチャンスメイクが主だったところだ。

ハイエリアでのプレーは苦手だが、そこはレオンが高次元にこなしてくれる。補完性が抜群だからこそ、ミランの左サイドはリーグ屈指の破壊力を創出しているということだ。

 

ちなみに、テオは攻撃的SBで守備は粗っぽいという言説が(特に日本では)聞かれることがあるが、それはもう過去の話だ。スピードとフィジカルに恵まれているため地空ともに対人に強く、ポジショニングもよくなっている(開幕数試合は危険なスペースを埋められる失点に絡んでしまったけれど、あれはフィジカルとメンタルのコンディションの問題だろう)。

攻守ともに完成度が高く、名実ともにセリエAを代表するSBであると結論して問題なさそうだ。

 

 

ヌーノ・タバレス(ラツィオ)

近年のセリエAでは、プレミアリーグでうまくいかなかった選手が輝きを増していく現象が多くみられるようになってきた。ヌーノ・タバレスは、その最新にして最高の例になりつつある。

ラツィオに加入後、8試合で8アシストを記録。リーグのアシストランキング首位を快走している。

アシストを量産しているだけあって、彼のクロス精度はなかなかに高い。というか、試合を重ねるごとにどんどん上がっているように見える。

フワッとしたクロスからGKとDFラインの間に入れるグラウンダーの早いボール、マイナスの折り返しと球種も豊富だ。

 

さらに、対面の相手に対して積極的にドリブルで仕掛けることもできて、単独で仕掛けからクロスまで完結させられる。ザッカーニの負傷離脱後は、以前にもまして「ウイングSB」色を強めている。

 

でも、ヌーノの本来の強みは爆発的なスプリント能力にあると思う。

サポートランはもちろん、自らボールを持ってのドリブルも強力。単純に速いだけでなくボディバランスにも優れているから、コンタクトを受けても全く止まらない。

 

ピッチを縦に切り裂くストレートなプレーにこそ、彼の最大の怖さがあると思う。「ウイング化も器用にこなすストレートランナー(あるいは運び屋SB)」というのがヌーノを正確にとらえた表現なのではないだろうか。

タバレスの対応可能なタスクをマトリックス図に落とし込むとこうなる。

 

ずっとサイドバックに物足りなさがあったラツィオだけに、彼の獲得は大きな戦力アップとなっている。

ちなみに、1シーズンでの最多アシスト記録は19-20にパプ・ゴメスが記録した16.タバレスはすでに半分に到達していて、記録更新も視野に入りそうだ。

シーズン終了後にいくつまでアシスト数を伸ばしているか楽しみだ。

 

 

期待の若手

ファビアーノ・パリージ(フィオレンティーナ)

育成の名門エンポリ出身のパリージ。22-23に一躍ブレイクた際には多くのクラブ間で獲得レースが展開され、最終的にフィオレンティーナに加入している。

彼の武器はドリブルを置いて他にない。

 

〈FBref.comより、22-23のスタッツ〉

  • ドリブル突破試行数:129(セリエA4
  • ドリブル突破成功数:64(セリエA3位タイ
  • キャリーで稼いだ縦方向の距離:3716m(セリエA9位
  • キャリーによるファイナルサード侵入:75(セリエA4位タイ

 

彼のスタッツを見てみると、サイドバックに求められるスキルである運ぶドリブルだけでなく、ドリブル突破に関しても優れた数字を残していることが特徴的だと思う。

これは自陣低い位置で相手からのプレッシャーを受けたときに、それをかわすスキルが際立って高いからだ。

このような状況に直面すると、ふつう怖がってロングボールで逃げたりするところだけど、パリージは相手に対して正対し、プレスの矢印を読み取ってそこから逃げるように持ち出して行ける。

内にも躊躇なく持ち出すことができ、適切な進路を取れる緩急の使い方がうまく、相手に矢印を出させてからそれを折るスキルも持っている。相手の前に入ってからは、ボールと相手の間に体を置いてブロックするのもうまい。

サイドバックとしてみれば、ドリブルスキルは卓越していると言っていい。

 

そんな彼がフィオレンティーナで苦戦しているは、キックが発展途上だから。後方からの球出しも、敵陣に上がっていってのクロスボールも、大きな武器と言えるレベルではない。

直近4シーズンでリーグ戦でのアシストはわずかに2。チャンスメイク能力でいえば、平均以下となってしまっている。

パッラディーノのフィオレンティーナは、まずケーンに長いボールを当てたところから攻撃を組み立てる。低い位置でボールを持ったDFたちに求められているのは精度の高いロングフィードであり、ここがパリージにとってネックになっていると考えられる。

 

現状ドリブル特化のプレースタイルとなっているパリージ。今後の課題はプレーの幅を広げられるかどうかだ。

ドリブルに関して一流のスキルを持っているのは間違いないだけに、さらなる成長を待ちたいところだ。

 

 

その他のプレーヤー

フランチェスコ・ザンパーノ(ヴェネツィア)

いかついあごひげがトレードマークのザンパーノ。見かけ通り?無骨なタッチライン際の上下動を武器とするワイドプレーヤーだ。

ヴェネツィアは3バックシステムを採用しているので、ザンパーノには一人でアウトサイドレーンをカバーすることが求められる。だから、サイドでの連携よりも単独で何ができるかが問われている感が強い。

ザンパーノ最大の魅力はゴリゴリとした持ち運び。推進力を武器に長い距離を運ぶことができる

そこから縦に持ち出してクロスボールまで完結させられる。精度がそこまで高くないのが難点だけど。

 

〈FBref.comより、10節終了時点でのスタッツ〉

  • プログレッシブキャリー:24(チーム内トップ
  • キャリーによるファイナルサード侵入数:12(チーム内2位
  • キャリーによるペナルティエリア侵入:5(チーム内2位
  • クロスボール数:23(チーム内トップ

 

非保持時のネチっこい守備対応も彼の武器のひとつで、アジリティを活かして対面のウインガーの動きに粘り強くついていき、チャンスがあれば積極的にボールをハントする。

 

〈FBref.comより、10節終了時点でのスタッツ〉

  • タックル総数:17(チーム内2位
  • タックル勝利総数:12(チーム内トップ

 

攻守両面でエネルギッシュにプレーするヴェネツィアの元気印。ホームではさかんに観客を煽るなどアツい一面を見せ、ゲームキャプテンを務めることもある。

両サイドでプレーできる汎用性も相まってディ・フランチェスコからの信頼も厚く、ここまで全試合に出場中だ。ヴェネツィアのキーマンのひとりである。

 

 

司令塔SB

第一人者

アンヘリーニョ(ローマ)

アンヘリーニョは、数シーズン前までは高精度のキックを活用するクロッサーとしてプレーしてきた。

ブンデス時代のプレーを見たわけではないけれど、スタッツを見ればそれは明らかだ。

 

〈FBref.comより、ペナルティエリア内に通したクロスボール総数〉

  • 20-21:28(ブンデスリーガ3位、5大リーグ9位
  • 21-22:36(ブンデスリーガ3位、5大リーグ5位
  • 22-23:29(ブンデスリーガ3位、5大リーグ9位

 

プレー動画を見た感想は、相手のブロックの外から高精度のクロスを届けて得点を生み出すクロスマシーンであり、ミドルシュートも打てる高性能の砲台といったところだろうか。

 

だが、ローマにやってきてからのアンヘリーニョは、その高精度のキックを違ったやり方で活用している。

ユリッチ就任後、アンヘリーニョの定位置は3バックの左CBとなっていて、最終列から的確な配球で試合を組み立てる「司令塔SB」に変貌しているのだ。

 

〈FBref.comより、8節終了時点のスタッツ〉

  • 縦パス総数:65(セリエAトップ
  • ファイナルサードに届けたパス数:52(セリエA5位

 

キックの巧みさはもちろんのこと、ライン間でフリーになっている味方を認知する視野の広さと空間把握能力が卓越していることが現在のタスクとぴたりと合致した格好だ。

自身のキックレンジの広さを逆手にとって、キックモーションを使ったフェイクで相手にパスの出し先を読ませないようにするなど駆け引きの面でも成長が見られている。

中央エリアを認知するアンヘリーニョ。
体を縦方向に向けながらキックモーションに入る。こうなるとどこにボールが入ってくるかわからず、相手からすればアーリークロスも選択肢として考えなければならないだろう。
アーリークロスを警戒して相手の最終ラインが下がったため、ディバラがぽっかりとフリーになった。その足元にボールが届き、決定機となった。

 

SBとしての組み立て能力は非常に高く、セリエAの左SBにおけるレジスタSBの第一人者と評して遜色ないだろう。

守備面でも、低身長ながら注意深いマーキングで3バックの一角としても十分に機能している。プレーの幅をさらに広げ、進化するアンヘリーニョに注目だ。

 

 

その他のプレーヤー

フアン・カバル(ユベントス)

コロンビアの名門アトレティコ・ナシオナルで育成を受け、エラス・ヴェローナを経て今季ユベントスに加入したカバル。加入時にはノーマークの存在だったが、チアゴ・モッタのもと一定の出場機会を得ている。

カバルは低い位置でのプレーを得意としている。これはコロンビア時代にCBを定位置としていたからで、どちらかというと守備性能の高さを売りにしているのもそのためだ。

186cmと長身で、サイドバックとしては空中戦に滅法強い。空中戦勝率はチームトップの72.7%だ(13節終了時点でのスタッツ)。

長身ゆえにリーチが長く、相手に前に出られても数歩で追いつけるのは彼の武器。長い足でボールをからめとるように奪う技術に長け、スライディングタックルもうまい

地空両面で突破困難な壁となる。

 

〈FBref.comより、13節終了時点でのスタッツ。数値は90分あたりに換算〉

  • ディフェンシブサードでのタックル数:1.37(チーム内3位
  • ドリブラーに対するタックル数:2.35(チーム内トップ
  • ドリブラーに対するタックル成功数:1.57(チーム内トップ

 

攻撃面では、低い位置からの配球で貢献するのが得意。SB分類マトリックス上の「司令塔SB」だ。

アタッキングサードの攻略にはあまり関与せず、必要なタイミングでランニングによるサポートを行う程度。基本的には後方で予防的カバーリングを行いつつ、チャンスがあればアーリークロスを供給する程度にとどまっている。

 

「司令塔SB」としても、プレー選択やポジショニング、体の向きの作り方など細かい改善点が多い。チアゴ・モッタの指導を受けながら成長中の段階だ。

まだ定位置奪取とは至っていないカバル。今後の成長に注目したい。

 

 

クリスティアーノ・ビラーギ(トリノ)

クリスティアーノ・ビラーギは在籍7年目となるフィオレンティーナのチーム最古参にしてカピターノだ。

彼の武器は高精度の左足だ。それも、キックレンジが非常に広いことが特徴である。

細身でとてもパワフルなプレーヤーには見えないし実際そうなのだが、足を鞭のようにしならせて蹴りだすキックにはよくパワーが乗るし、何より精度が高い。

特に止まったボールを蹴らせれば右に出るものはなかなかおらず、コーナーキックからアシストを量産し毎シーズン直接フリーキックから得点する。リーグ屈指のプレースキッカーと言って差し支えないだろう。

フィジカルではなくテクニックを活かしたそのキックは、お手本にすべきものだ。

 

昨季まで指揮を執ったヴィンチェンツォ・イタリアーノは、ビラーギのレンジの広いキックをビルドアップにおける砲台として活用した。サイドバックtoウイングの縦パスでサイドの深さをとることを主な選択肢とした彼の戦術において、ビラーギは核となった。

長いパスを入れてからタッチライン際を駆け上がりウイングからパスを受けてアーリークロスを上げるまでが一つの流れとして確立されていたのだ。

パッラディーノ新監督もそのスタイルを活用すべく3バックの左CBでの起用を試行したけれど、非保持時のプレーが不安定すぎて挫折している。

ポジショニングが悪くてクロス対応時に危険なスペースを空けてしまうし、対人守備もどちらかと言えば苦手項目になるビラーギは、CB起用に応えられなかった。

ゴセンスという実力者が左WBの定位置に収まり、終われるようにして冬のメルカートでトリノに移籍している。

 

 

メルギム・ヴォイヴォダ(コモ)

コソボ代表として51試合の出場歴がある(同代表で5番目の数字だ)メルギム・ヴォイヴォダ。

ベルギーの名門スタンダール・リエージュで育ち、トリノで長く活躍。今季冬のメルカートでコモに移籍している。

右利きのヴォイヴォダはもともと右サイドバックとして育ってきたのだが、トリノに移籍してからは左サイドが主戦場に。右足で内に切り込みながらクロスやスルーパスを供給する、カットイン型WBとして異彩を放っていた。

 

そんな彼は、3バックの右を主戦場とするようになっている。もとはと言えばイバン・ユリッチがスポット的に起用したのが始まり。23-24にこのポジションで起用されたのはわずか4試合だったけど、これに目を付けたパオロ・ヴァノーリ新監督によって今季は右HVでの出場が最も多くなっている。

このポジションで起用されるヴォイヴォダは、持ち前のビジョンとキック精度を武器に積極的な縦パスで攻撃を加速させるプレーを見せている。

トリノの陣容における本職CBたちと比較したときにヴォイヴォダが特徴的なのはドリブルによる持ち上がりへの積極性。前が空いていればどんどん持ち上がって味方との距離を縮められるのは、機動性に優れる彼ならではの武器と言える。

 

〈FBref.comより、18節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりキャリー総数:44.3(チーム内トップ

 

ただし、前への意識が強すぎてポジショニングも前へ立ちすぎるのは玉に瑕。相手アタッカーとの距離が近すぎて味方がヴォイヴォダにパスを出すのを渋る場面が散見され、選択肢になり切れていない場面が多い。

また、多少リスキーで難易度が高いパスでも積極的に通そうとしているのが印象的。ただ、やり直してもいい場面でも縦へ急いでパスミスしてはあせっているような印象を受けてしまう。

WB起用時にはリスキー志向でもいいのだろうけど、より自陣ゴールに近い3バックで起用される試合では、緩急を使い分けたビルドアップができると定位置奪取も見えてきそうだ。

 

187cmとワイドプレーヤーとしては身長にも恵まれ、非利き足からでもある程度精度のあるボールが蹴れる。ゆえに、最終ラインならどこでもプレーできるのがヴォイヴォダの魅力だ。チームに一人いると助かるユーティリティープレーヤーである。

CB起用時のプレーを踏まえてSB分類マトリックス上の「司令塔SB」としたが、敵陣でのプレークオリティも高く「マスターSB」に極めて近いプレーヤーだ。

まだCBでのプレー経験が浅く、前述のビルドアップ面に加えて守備時にもポジショニングが怪しい場面がちらほらみられる。

経験を重ねていけばさらになじんでいきそうなだけに、動向を注視したいタレントのひとりだ。

 

 

アダム・オベルト(カリアリ)

同胞ミラン・シュクリニアルをアイドルに、イタリアのプロビンチャから飛躍を目指しているアダム・オベルト。プロデビュー後はカリアリ一筋でプレーし、20歳でスロバキア代表デビューを果たすなど将来を期待されるプレーヤーである。

CBとしてもLBとしてもプレーできるオベルト。彼の武器は左足から繰り出す正確なキックだ。

今季のカリアリではサイドバックとしての起用が多くなっているオベルト。タッチライン際に張り出し、ボールを受けては前線のアタッカーにボールを配球するタスクを担っている。

 

〈FBref.comより、25節終了時点でのスタッツ〉

  • 90分あたりプログレッシブ(縦方向の前進)パス数:4.76(チーム内2位
  • 90分あたりファイナルサードに届けたパス数:3.33(チーム内4位

 

その左足は敵陣でも火を噴く。積極的には攻撃参加しないオベルトだけど、相手のクリアボールを拾った場面など敵陣でボールを持てば積極的にミドルシュートを狙っていく。

可能性を感じさせるシュートが多く、レッチェ戦では見事なミドルシュートを決めている。

 

一方でポジショニングに関しては今後の課題。足元にボールを引き出したいがためにタッチライン際に張って待つことに固執してしまう場面が散見。相手から離れるために低い位置に降りすぎ、前線との距離ができすぎる場面もみられる。

今のカリアリには、得意なプレーエリアが被るCBルペルトがいて、彼が窮屈そうにしている場面もみられる。

状況に応じて幅とり役を担ったり、中盤に入ったりといった柔軟な判断ができるとより効果的に機能できるはずだ。

 

また、守備に関しても伸びしろが多い。

スプリント力、ストレングスともに平均を下回るオベルトは、ウインガーとの対人守備で後手に回る場面がみられる。

特にフィジカルに優れた相手に手を焼いている印象で、こうしたアタッカーをどう止めるかは今後に向けた課題になりそうだ。

 

SB分類マトリックス上の「司令塔SB」に位置づけられるオベルト。彼ほど高度なキック技術を有するSBは多くなく、まだ22歳という年齢を考えても将来性のあるプレーヤーだ。

身長186cmとSBとしては長身で、空中戦勝率60.5%と高い数字を記録するなどエアバトルには自信を持っている。

このことを考えると、ベストポジションは3バックの左かもしれない。

いずれにせよ、今後どのような選手として大成していくのか楽しみだ。

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