レオナルド・スピナッツォーラ【プレースタイル詳解】

レオナルド・スピナッツォーラとは何者か?

来歴

  • ヴィルトゥス・フォリーニョというクラブで6歳でサッカーを始めたスピナッツォーラは、14歳でシエナのユースに移籍。3年後にはユベントスのユースに加入、2012年のヴィアレッジョ・トーナメントで優勝し大会最優秀選手に選出されるなど期待の若手として注目された。
  • 2012年、エンポリにレンタルされセリエBでプロレビューを果たした。その後は7回レンタルに出され、セリエAとセリエBを往復しながら長い下積みに励んだ。
  • 彼がブレイクを果たしたのは7つ目のレンタル先(14-15にレンタルされて以来2回目)であるアタランタ。ジャン・ピエロ・ガスペリーニに継続的に起用されて16-17のクラブ史上最高位である4位フィニッシュに貢献したのだ。しかし、翌17-18に前十字靭帯の損傷を負い、不完全燃焼のままアタランタを退団した。
  • 1年間ユベントスですごしたのち、19-20にローマに完全移籍すると、特にパウロ・フォンセカ体制で不動の存在となり、リーグ屈指の左サイドバック/ウイングバックとしての地位を不動のものとし、2020EUROではアッズーリの一員として大会ベスト11に選出される活躍を見せ、ヨーロッパ制覇に大きく貢献した。
  • しかし、そのEURO2020準々決勝でアキレス腱断裂の大ケガを負い、10か月間プレーできない事態に。復帰後もトップフォームを取り戻せないまま23-24終了後にフリーでローマを退団する運びとなった。
  • 2024年7月にフリーでナポリに加入。初年度は思うようにプレーできなかったものの、加入2季目となる今季は不動の存在になりつつある。

 

エピソード

  • 14歳でシエナユースにいた時、ホームシックを起こしたスピナッツォーラ。両親に電話してもう地元に帰りたいと告げると、母親からサッカー選手になるチャンスをつかむよう説得されて踏ん張ったそう。「母の力がなければ、私はサッカー選手になっていなかった」と語る。
  • 元々はウインガーだったが15-16にレンタルされたペルージャにてサイドバックに転向したスピナッツォーラ。同じ経歴を歩んだザンブロッタをアイドルとして挙げている。
  • 子どもを愛するよきパパで、トレーニングのスケジュールで不都合がない限り、学校への送り迎えは奥さんではなく自分がしているという。「私の一日は子どもとサッカーだ」と語る。
  • EURO2020でのアキレス腱断裂を受けて精神的にかなり参ってしまっていたようだが、妻と今でもフォローしてくれている心理学者の助けを借りて乗り越えている。
  • 実は2020年1月、スピナッツォーラはインテル加入が近づいていた。当時インテルに所属していたマッテオ・ポリターノとのトレードは成立間近で、メディカルチェックまでいったもののスピナッツォーラの健康状態を理由に契約は白紙に。その後スピナッツォーラはブレイクし、EURO2020で欧州屈指のSBとしての評価を確立し、そして大ケガを負うことになる…。

 

 

プレースタイル分析

EURO2020にて、イタリア代表は欧州制覇を成し遂げた。まるでクラブチームかと思うような組織的な攻撃サッカーで、見ていて楽しいチームであった。

そんなイタリア代表で欠かせない存在だったのがスピナッツォーラだった。インシーニェとのコンビは強力で、左サイドはアッズーリの攻撃の中核を担っていた。

スピナッツォーラはそのEURO2020準々決勝でアキレス腱断裂の重傷を負って長期離脱、その後もフォームを取り戻せずにいたのだが、今季ついに本来の輝きを取り戻しつつある。

 

スピナッツォーラの武器は、優れた攻撃性能にある。

特に目を引くのはドリブルだ。彼はサイドバックとしては異質なまでのドリブラーである。ソースは不明だが、欧州7大リーグのサイドバックで最もドリブル成功を記録しているという投稿が流れてきていた。

ちゃんとしたスタッツもこれを支えていて、FBref.comによれば5大リーグのサイドバックと比較したパーセンタイルではプログレッシブキャリーが99のカンスト値、ドリブル突破成功数が91という高数値である。

FBref.comより。4.55、1.36はそれぞれ90分あたりの数値だ。

 

彼の優れたドリブルを支えているのは、爆発的なショートスプリントである。瞬間加速がすさまじく、よーいドンで走り始めればほぼ全勝してしまえる。

これを活かし、スピナッツォーラは緩急を活かしたドリブルで仕掛ける。いったんボールを止めて相手の足を止めたうえで縦に持ち出し、一気に抜け出す。ここに切り返しを織り交ぜられると、もう相手からすればどうしようもないだろう。

 

さらに厄介なのは、彼が右利きの左サイドバックであるという事だ。

縦勝負が最も得意な形でありながら、切り返して内を向けば利き足を突き付けられる

内を向いてからのクロスボールの精度はどんどん向上してきている印象で、こうなると相手からすれば止めるのは容易ではない。

 

さらに、クロスだけでなく内に進路を取って切り込み、フィニッシュというウインガーのようなタスクまでこなせる。ピサ戦では貴重な勝ち越し弾をもたらしていた。

 

このように、サイドバックでありながら実質的にウインガーとして機能できるという稀有な存在がスピナッツォーラである。

アウトサイドで足元にボールを引き出してからの仕掛けでチャンスメイクし、機を見て内にも切り込める。完全に担っているタスクはウイングのそれだ。

 

こうした特徴を持つスピナッツォーラが、今季のナポリで輝きを取り戻したのは偶然ではない。コンテが採用した戦術が、スピナッツォーラの存在を強く求めたのだ。

デブライネという新たな核となり得るスターの加入を受け、昨季スクデットを獲得しながらそのバランスをイチから見直す必要に迫られているナポリ。

特に、昨季スクデット獲得の原動力となったロボツカ、アンギサ、マクトミネイの中盤トライアングルと共存する形でデブライネを加えることは簡単な話ではない。

コンテが出した答えは、マクトミネイの「偽ウイング」起用だった。

4-3-3の左ウイングにマクトミネイを起用しながら、実質的なタスクとしては中盤のそれを任せ、デブライネとの共存を目指したのである。

左ウイングに置かれたマクトミネイが中盤に入っていくため、左の幅とり役は左サイドバックになる。

開幕当初、コンテはマティアス・オリベラを試していた。しかし、オリベラはアウトサイドを占有するウインガーのサポート役として輝くタイプであり、外で基準点となる選手がいない中では個人で解決する力の欠如がモロに出てしまう形になってしまった。その結果、ナポリの攻撃は右一辺倒になってしまっていたのである。

ここに登場したのが、ウインガータスクの名人スピナッツォーラであった。

彼が外で仕掛けを担い、マクトミネイを開放することで今季のナポリは完成に至る。スピナッツォーラは完全にマスターピースとなっている

SofaScoreより、ナポリのインテル戦における平均ポジション。37のスピナッツォーラは、逆サイドの21ポリターノとほぼ同じ高さをとっており、彼がウイングタスクを担っていることがよくわかるだろう。8のマクトミネイは中盤の一角を占める形となっている。これが今季のナポリの形であり、その完成にスピナッツォーラは欠かすことができない。

 

スピナッツォーラが最も得意とするタスクをチームが求めてきた。それにきっちり答え続けることでスピナッツォーラ自身が全盛期の輝きを取り戻す。

戦術と選手は不可分であるわけだが、こうもキレイにハマるものかという例である。スピナッツォーラはアキレス腱断裂以来のアッズーリ復帰を果たし、一時右サイド一辺倒だったナポリは逆に左サイド、スピナッツォーラが崩しの中核として機能しより止められないチームとなりつつある。まさにWin-Winである。

 

こうしたウイングタスクを中心に担いながらも、後方からのパス出しが向上しているのは面白い現象だ。

これはあくまでも筆者の妄想だけど、フォームが上がらなかった時期に個人での突破力が下がったことを受けて、スピナッツォーラは周囲を活かそうとして視野の広さを手に入れたのではないか。

今季セリエAですでに2アシストを記録しているスピナッツォーラだが、それはいずれも後方からのスルーパスによってである。

スピナッツォーラはよりプレーの選択肢が広い、完成されたサイドバックに変貌しつつあるのだ。

 

というわけで、スピナッツォーラサイドバック分類マトリックス上では「ドリブラーSB」に位置づけられる。このタイプの第一人者と言って差し支えないだろう。

 

ユベントス時代、9つのクラブで武者修行に励むという長い下積みを経てローマでブレイク、EURO2020でヨーロッパ屈指の攻撃的SBという評価を確立しかけたところでアキレス腱断裂の大ケガを負い、復帰後は全盛期の輝きを取り戻せない…なかなか実力に見合った評価を得られず苦しんだスピナッツォーラだが、今ようやく大輪の花を咲かせようとしている。

今季ナポリにスクデットをもたらし、再び世界に名をとどろかせられるか。いまこそ、スピナッツォーラに注目だ。

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