選手分類マトリックス

サッカーにおいて、攻撃時と守備時で配置を変えることはすでに当たり前のこととして浸透している。守備時の陣形は4-4-2で、攻撃時には3-2-5に可変する…といった分析は現場サイドではもちろんのこと、サポーター層の中でも普通に聞かれる内容となった。もはや現代サッカーにおいてフォーメーションは均一ではなく、配置と陣形の組み合わせが非常に多様化していることは広く理解されている感がある。

一方で、そのことによって選手に求められるタスクが非常に多様化してきており、ひとりの選手ではそれにこたえられないことは見過ごされている感がある。

各選手には適性があるにもかかわらず、得意ではないタスクを求められて苦戦している選手はごまんといる。監督をはじめとした選手を起用するサイドが各選手の特徴と噛み合わないタスクを求めているケースも見受けられるし、サポーターサイドもそれを理解できずに理不尽な批判をしてしまっているケースも見受けられる。

なぜこんなことが起こるのか。個人的には、選手を区分する枠組みがサッカーの進化に追いついていないことが大きな原因であると感じている。

各選手の役割を表記するとき、一般的に用いられているのはGK、DF、MF、FWという大分類、さらに詳しくDFをCB、HV、SBに分けるような小分類である。これらはいずれも守備時の陣形においてどこを守るかを基準にした分類方法である。

たとえば、同じサイドバックでもボール保持時にはアウトサイド高い位置でウイング化する選手もいれば、中盤に入ってゲームメイクに加わる選手もいるし、3バックの一角と化してビルドアップの起点となる選手もいる。さらに言えば、ウイング化したサイドバックの中でも、足元でボールを受けて仕掛けることが得意な選手もいればクロッサーもいるし、逆サイドからのクロスボールに飛び込むターゲットとなることで最大限輝く選手もいるわけだ。

これだけタスクが多様化しているところを「サイドバック」とひとくくりにしてしまうことには限界があるように感じる。だから、先ほど紹介したような勘違いが起こってしまうわけだ。

そこで、各ポジションごとにさらに選手を細分化するための指標を作りたいと思った筆者は、選手分類マトリックスなるものを作ってみた。

 

選手分類マトリックスでボール保持時のタスクに重きを置く理由

そもそもマトリックス図とは何なのかというと、とある対象に対して検討したい2つの要素を縦軸・横軸とし、対象がどの程度の度合いなのかを縦軸と横軸の交点で表したものだ。中学の数学で出てくるx軸、y軸のグラフもマトリックス図の一種である。

まあ、見ればこれのことね!とわかるはずなので、小難しい話はどうでもいい。ポイントはマトリックス図の縦軸・横軸に何を選ぶかだ。

先ほどサイドバックの例で紹介したように、各ポジションごとの保持時のタスクは多様化の一途をたどっている。しかし逆に言えば、サイドバックが保持時にどんなポジションをとっていようと、非保持時には最終ラインの一番アウトサイドを守ると決まっている。チームの採用する戦術によってその濃淡はあれど、非保持時に各選手に求められるタスクには大きな差はないのである。

つまり、多様化する各選手の分類を行うにあたっては、ボール保持時のタスクに重きを置いてマトリックス図の縦軸・横軸に何を選ぶかを決めるべきであるということだ。

そこで、特に非保持時のタスクが重要なゴールキーパーとセンターバックを除いて、各ポジションごとの選手分類マトリックスは保持時のタスクを割り振る上で重要な要素を縦軸・横軸としている。

それでは、さっそく具体的に見ていきたい。

 

ゴールキーパー

まずはゴールキーパーのマトリックス図。縦軸はビルドアップ能力、横軸はゴールを守る能力とした。

ここの分類は非常に単純で、

  • ビルドアップ能力×ゴールを守る力マスターGK
  • ビルドアップ能力×ゴールを守る力ビルドアップGK
  • ビルドアップ能力×ゴールを守る力ビッグセーバー
  • ビルドアップ能力×ゴールを守る力セカンドGK

と4象限がそのまま分類と対応する形となっている。

 

保持局面を軸に据えることが望ましい!という説明をしておきながらいきなりゴールを守る能力を軸としてしまったが、さすがにGKにおいてここを外すわけにはいかない。

実際、足元のテクニックに不安があったとしても、ゴールを守る能力が非常に高ければGKとして十分に戦っていけるし、実際にそうしたタイプは各国リーグで活躍している。これがビッグセーバーである。

逆に、ゴールを守る能力はプロレベルでは凡庸だとしても、足元のテクニックに優れていることを重視して起用されるGKが出てきているのは時代の流れだといえる。これがビルドアップGKだ。

この両方の能力が高いGKがマスターGK。現代サッカーにおけるゴールキーパーの理想像である。多くのビッグクラブはこのタイプのGKを正守護神に据えている、または据えようと市場を漁っている。

対して、残念ながらゴールを守る能力とビルドアップ能力がともに十分でないゴールキーパーもいて、これをセカンドGKと呼びたい。5大リーグでスタメンレベルのGKにこのタイプはなかなかいないが。

以上がゴールキーパーの分類だ。

 

センターバック

続いてセンターバックのマトリックス図だ。縦軸はビルドアップ能力で、横軸は機動力とした。

CBの軸に機動力と聞いて疑問符が浮かんだ人もいるかもしれない。けれども、現代CBに求められる能力として機動力は攻守にわたって重要だ。

昨季CLを制覇したマンチェスター・シティにおいて、ストーンズのMF化が話題となったことが代表例だが、現代サッカーではCBにも保持時に流動性が求められている。特に3バックのサイドに起用されれば、攻撃参加を求められることも多い。

非保持時にも、マンツーマン守備の隆盛によって相手アタッカーにしつこくついていけるアジリティやハイラインの裏をカバーするスピードが求められている。保持、非保持両面において、CBの機動力は大きな注目ポイントだといえる。ここにおける機動力とは、スピード、アジリティ、スタミナといった総合的な能力だと思ってほしい。

この軸にのっとった分類もGKと同じく4象限と対応する形で、

  • ビルドアップ能力×機動力ポジショナルCB
  • ビルドアップ能力×機動力レジスタCB
  • ビルドアップ能力×機動力ハードマーカー
  • ビルドアップ能力×機動力エアバトラー

としている。

 

ビルドアップ能力も機動力も高いタイプは現代センターバックの理想形だ。4バックで起用されれば、後方からゲームを作りつつカウンター対応時には相手との背走にも負けないスピードを見せてハイラインを支えてくれるだろう。3バックのサイド(HV)で起用されれば、持ち前の機動力を生かして中盤やサイド高い位置に自在に表れ、チャンスシーンに絡むテクニックを発揮してくれるだろう。いずれにせよポジショナルプレーとの相性がいいことからポジショナルCBとしたい。

ビルドアップ能力は高いが機動力が低いタイプは、後方からゲームを作る能力を買ってレジスタCBと呼ぼう。非保持時には最終ラインにどっしり構えて安心感を与えてもくれるはずだ。

逆に、ビルドアップ能力が低いが機動力が高いタイプは、非保持時のしつこいマンマークやライン裏のカバーに特徴を持つことが多い。このことから、このタイプをハードマーカーとしたい。3バックのサイドで起用されれば、保持時に縦のランニングで攻撃に変化を加えることもできるはずだ。

それでは、ビルドアップ能力も機動力も低いタイプは?こうしたタイプは、得てしてゴール前にどっしり構えて跳ね返す能力が非常に高い。いわゆる古典的なCBタイプだ。そのイメージが湧きやすいよう、エアバトラーと命名した。

以上がセンターバックの分類だ。

 

サイドバック

サイドバックの分類を見ていこう。ウイングバックもここに含まれると思ってほしい。

ピッチの縦の幅をすべてカバーするサイドバックは、アウトサイドだけでなくインサイドにもプレーエリアを広げており、その分類は複雑になる。これをしっかりを分類するために、縦軸には得意なプレーエリアの高低、横軸にはオン・ザ・ボールとオフ・ザ・ボールどちらに特徴があるかを置きたい。

ここで注意したいのは、縦軸の中ほどは、高いエリアと低いエリアの両方でプレー可能であることを意味していることだ。

  • プレーエリア×オン・ザ・ボールウイングSB
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボールフィニッシャーSB
  • プレーエリア×オン・ザ・ボールマスターSB
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボールポジショナルSB
  • プレーエリア×オン・ザ・ボール司令塔SB
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボールストレートランナー
  • プレーエリア×中間運び屋SB

 

得意なプレーエリアが高いサイドバックには、アウトサイドで幅を確保するタスクを担ってもらうのがいいだろう。その中でもボールを持った時に特徴を発揮するタイプをウイングSBとしたい。文字通りタッチライン際でボールをもらったところからのプレーを得意とするウイングのようなサイドバックだ。

このタイプは、さらにドリブラー型クロッサー型に分かれることに注目したい。このどちらに分類されるかで、チームのサポートの仕方も変わってくる。前者はクアドラードが、後者はコスティッチが代表例だ。

逆に高い位置が得意かつオフ・ザ・ボールが得意なタイプとはどんなプレーヤーか。イメージしたいのはゴセンスで、相手サイドバックの死角からゴール前に飛び込みクロスに合わせることで相手の脅威となるのだ。主に担うタスクはフィニッシュということで、フィニッシャーSBとしたい。

 

一方、得意なプレーエリアが低いサイドバックは3タイプに分けられる。

プレーエリアが低くかつオン・ザ・ボールに特徴があるタイプは、相手のプレッシャーが厳しい中央エリアにかわって、サイドから攻撃を指揮する司令塔として機能してくれるはずだ。司令塔SBである。インサイドに入って中盤でもプレー出来れば、その希少性はさらに高まる。代表例はマリオ・ルイだ。

プレーエリアが低くかつオフ・ザ・ボールに特徴があるタイプは、司令塔SBほどの高度な組み立ては期待できなくとも、持ち前の走力を活かした縦のランニングでウイングをサポートしてくれるだろう。後方からの追い越しに持ち味があるこのタイプはストレートランナーと呼びたい。

そして、よりオン・ザ・ボール寄りのストレートランナーとして運び屋SBというタイプも存在する。文字通り、低い位置でボールを持ったところから、ドリブルで一気に持ち上がるプレーに長所がある。パリージはこのタイプだ。

 

そして、高いエリアと低いエリアの両方でプレー可能なタイプはどうか。保持時に特別なプレーができなくとも、状況に応じてCBやMFをサポートし1列前のWGと連携できるポジショニングセンスと、後方からの追い越しで攻撃に変化を加える走力を兼ね備えていれば、ボール保持を主体とするクラブにとって貴重な存在となってくれるだろう。このタイプをポジショナルSBとしたい。ナポリのマティアス・オリベラはこのタイプと言える。

さらに、前述のようなオフ・ザ・ボールの能力に加え、司令塔やクロッサーとしても機能し得るテクニックと戦術眼を兼ね備えていれば、オン・ザ・ボールとオフ・ザ・ボールの両方で、高いエリアと低いエリアの両方でハイレベルということになる。この完全無欠なタイプがマスターSBで、ディ・ロレンツォは文句なしでここに分類されるだろう。

以上がサイドバック(とウイングバック)の分類だ。

 

ミッドフィルダー

ミッドフィルダーの分類を見ていこう。

ここでいうミッドフィルダーには、アンカーからセントラルMF、トップ下までを含めた中盤センターのポジションをすべて含んでいる

縦軸は得意なプレーエリアの高低とし、真ん中に行けば行くほどプレーエリアが広い(守備的なポジション、攻撃的なポジションの両方をこなせる)とする。

横軸はオン・ザ・ボールとオフ・ザ・ボールのどちらに特徴があるかを示し、真ん中に行けば行くほどその両方がハイレベルであることを意味している。ちなみに、ここでいくオフ・ザ・ボールとは、保持時のポジショニングやランニングに加え、非保持時のプレー、いわゆる守備能力も含まれると思ってもらいたい。

  • プレーエリア×オン・ザ・ボールアシストマン
  • プレーエリア×オン/オフ両用モダン10番
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボール侵入者
  • プレーエリア×オン・ザ・ボールダイナミックレジスタ
  • プレーエリア×オン/オフ両用マスターMF
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボールボックス・トゥ・ボックス
  • プレーエリア×オン・ザ・ボールコンダクター
  • プレーエリア×オン/オフ両用マスターレジスタ
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボール防波堤

 

プレーエリアが高いMFたちは、その特徴を生かすべく保持時にはトップ下のようにプレーさせてあげるべきだろう。

そんな彼らの中でも特にオン・ザ・ボールに特徴があるタイプは、積極的に足元にボールを引き出し、ラストパスやミドルシュートなどで攻撃の最終局面をデザインしてくれるだろう。このタイプをアシストマンとしたい。

逆にオフ・ザ・ボールに特徴があるタイプは、FWと連携しながら相手最終ライン裏に飛び出し直接的にフィニッシュに絡む、あるいはフィジカルを活かして1トップに代わる第2のターゲットとして機能してくれるだろう。彼ら侵入者はそのプレースタイルゆえ、アシスト数よりも得点数が多くなる傾向にある。

そして、その両方の特性を備えているのがモダン10番だ。ボールを持った時のクオリティがハイレベルにありながら、足元でボールを持つことだけにこだわらずオフ・ザ・ボールの動きでスペースをアタックできる彼らは、現代トップ下の理想像だ。

 

一方、プレーエリアが低いMFたちは、その特性を生かすべくレジスタの位置で起用するのがいいだろう。

中でもオン・ザ・ボールに特徴があるタイプは、低い位置を動きながら前を向き、縦パスで攻撃を前進させていくプレーを得意とする。CBの間やサイドバックの位置に降りて、最終ラインの一員となる可変も得意とする。彼らはコンダクターと呼びたい。

対して、プレーエリアが低くかつオフ・ザ・ボールに特徴があるタイプとは?ここでのオフ・ザ・ボールとは、非保持時のプレーだと考えてもらいたい。保持時にはシンプルなさばきでチームにリズムを与えてくれれば十分で、保持時の不足を補って余りあるほどのボール奪取性能で最終ライン前の番人となる。彼らは防波堤と呼ぶにふさわしいだろう。

コンダクターの中でもボール奪取力が高いプレーヤーは、攻守ともにハイレベルなパフォーマンスを期待できる。マスターレジスタだ。へその位置に彼らがいるだけでチームのレベルはグンと上がるだろう。

 

最後はプレーエリアが広いプレーヤーたちだ。トップ下にもレジスタにも対応可能なタイプが多いものの、攻守両面に関われる彼らを最大限生かすためには3センターのインサイドハーフで起用するのがいいのではないか。

プレーエリアが広くかつオン・ザ・ボールに特徴があるタイプは、動いてはまた受け、さばき、また動いてボールを受け…を繰り返し、自分とともにボールとチームを前進させていくスタイルをとることが多い。ダイナミックレジスタと呼ぶのがイメージしやすいのではないだろうか。

一方、オフ・ザ・ボールに特徴があるタイプは、保持時には前線への飛び出しでアクセントをつけ、非保持時には広範囲をカバーしながらボールを刈り取る。特にネガティブトランジション時の被カウンター対応では非常に頼りになるだろう。ピッチ全域をダイナミックにカバーする彼らはボックス・トゥ・ボックスと呼びたい。

そして、プレーエリアが広くかつオフ・ザ・ボール、オン・ザ・ボールともにクオリティが高い完全無欠なタイプは、マスターMFと呼ぶにふさわしいだろう。彼らが中央にきていることからもわかるように、このマトリックス図は中央に向かうにつれて万能であることを表している。

以上がミッドフィルダーの分類だ。

 

ウイング

続いてウイングの分類を見ていこう。

縦軸にはプレースタイルを、横軸にはプレーエリアを置いた。

ウインガーのプレースタイルはチャンスメーカーとフィニッシャーに大きく二分することができる。そして、ウインガーの得意なプレーエリアはアウトサイド寄りかインサイド寄りかに二分することができる。その程度によって分類していきたい。

  • プレーエリア×チャンスメーカー→トップ下型ウイング
  • プレーエリア×フィニッシャー→ターゲットWG
  • プレーエリア×プレースタイルゴリブラー
  • プレーエリア×プレースタイルマスターWG
  • プレーエリア×オン・ザ・ボールドリブラー
  • プレーエリア×オフ・ザ・ボールカットインシューターorカウンターエース

 

アウトサイドでのプレーをより得意とするプレーヤーは2つに分類できる。

よりチャンスメーカー寄りなのがドリブラーだ。ここで注目したいのは、ドリブラーはどのフィジカル能力を武器とするかによって3つに分類されることだ。

スピードを武器とするタイプはアウトサイドでボールを持ち、縦方向に突破するプレーが得意。カウンター時には広大なスペースを得てもはや止められない特急列車と化すだろう。レオンが典型例である。

対して、クイックネスを武器とするタイプは密集地帯も苦とせず、スピードを武器とするタイプと比較するとより内側でもプレー可能だろう。

もうひとつのタイプはパワーを武器とするゴリブラーで、クイックネスを武器とするタイプよりもさらにインサイドでのプレーを得意とするため、アウトサイドを主なプレーエリアとするドリブラーとは別の分類としたい。

そして、アウトサイドかつフィニッシャーなタイプは、さらに2つに分類できる。

ひとつはカウンター時に圧倒的なスピードを武器に裏に抜け出し、あるいは相手をかわして1対1を決めるプレーを得意とするタイプ。チャンスメイク能力が高くないスピード型ドリブラーと言ったところだろうか。彼らはカウンターエースと名付けたい。

一方、相手に引かれた状態でも得点を量産できるタイプは足元にボールを引き出したうえで、自ら内に持ち込んでフィニッシュを決めるプレーを十八番とすることが多い。カットインシューターという呼び名がふさわしいだろう。

 

インサイドでのプレーエリアを得意とするプレーヤーは、そのプレースタイルによって3つに分類した。

インサイドに入り込んでラストパスを供給するプレーを得意とするのはトップ下型ウイングだ。以前はタッチライン際でプレーするのがウインガーの通例だったが、現代サッカーでは多く見られるタイプのプレーヤーとなっている。

一方、中央エリアからのフィニッシュを得意とするタイプは、大外からゴール前に飛び込んで第二のストライカーとして機能する、あるいはタイミングのいい裏抜けでサイドバックの背後のスペースにラストパスを引き出す。彼らはラストパスの目的地となることから、ターゲットWGと呼びたい。

そして、その中間の位置に分類したいのがゴリブラーだ。前述したように、パワーを利したドリブルを得意とするプレーヤーである。彼らはフィジカルに優れており、DFを背負って起点になることができる。そこから強引に前を向き、相手をなぎ倒すように突破して見せる。スピードもアジリティもないのでタッチライン際では突破力を発揮できないかもしれないが、中央エリアでは強引な突破からフィニッシュもチャンスメイクもできる驚異的なプレーヤーになれるだろう。ザニオーロが典型である。

 

そして、内寄りでも外寄りでもプレー出来て、得点力とアシスト能力の両方が高いプレーヤーがマスターWGである。このタイプはチームの攻撃の核となれる存在であり、どんなチームでも重用されるだろう。

MFのそれと同じくマスターWGが中心部にきていることから、このマトリックス図も中心に向かえば向かうほど万能であることを示していることがわかる。

以上がウイングの分類だ。

 

フォワード

最後にフォワードの分類を見ていきたい。

今回のマトリックス図はこれまでのモノとは異なり、軸上のどこに位置するかが程度を表すものではない。フォワードに求められる主要タスク、フィニッシュポストプレーがどのタイプに分類できるかを掛け合わせる形で表記していきたい。そのため、同じエリア内にいればタイプ的に大小はないと考えてもらいたい。

 

さて、ポストプレータイプによる分類では、フォワードは大きく5つに分類できる。

ワイドポストは文字通り中央からサイドに流れて起点となるようなプレーで、そこから前を向いてドリブルで仕掛け、単独で相手最終ラインを大きく押し下げるところまでが一連の流れとなることが多い。テュラム、オシメンらが得意とするプレーだ。

背負いポストは相手を背負ってボールをキープし、チームが押し上げる時間を作るポストプレーだ。ルカクやサクセスら大柄な選手が得意とする。

ダイナミックポストは前後左右を広く動き回って起点となるタイプ。裏に飛び出したかと思えば中盤に引いてMFとも絡む、機動力のあるプレーヤーだ。インモービレはこれに当たる。

ダイレクトポストは文字通り、縦パスをダイレクトではたいてMFたちに前向きな状態を提供するポストプレーである。連携力とテクニックに優れたタイプが分類される。ジルーやジェコら、大柄でもこのタイプに分類される選手がいるので要注意だ。彼らを誤って背負いポストだと思ってしまうと、チームの設計を誤ることになる。

フォルス9は、いわゆる偽CFやゼロトップを意味する戦術用語だ。中盤に降りて攻撃の組み立て局面にさかんに絡むタイプで、フィニッシュだけでなくアシストの数も多いタイプだ。ウインガーやトップ下といった本来アタッカータイプの選手が起用されるとここに分類されることが多い。

 

フィニッシュタイプによる分類では、フォワードは大きく4つに分類できる。

1対1フィニッシュとは、裏への飛び出しで相手最終ラインを攻略し、GKとの1対1を沈めるプレーを得意とするストライカーのことだ。

頭フィニッシュとは、アバウトなボールを相手と競り合いながらねじ込むプレーを得意とするストライカー。たいていがヘディングでのフィニッシュが多くなるだけで、ボレーなど相手と競り合いながらのフィニッシュであれば形を問わないイメージだ。

ダイレクトフィニッシュとは、相手と競り合うのではなく、駆け引きをしながら相手のマークを外し、フリーになって押し込むタイプのフィニッシュを得意とするストライカー。ラストパスを出す側は、頭タイプに対してはアバウトなボールを放ればいいものの、ダイレクトタイプに対しては点で合わせる絶妙なラストパスを送り込むことが求められる。

ミドルフィニッシュとは、ミドルシュートだけでなく、正対する相手DFがいる状態からのフィニッシュ全体を含むと思ってほしい。だから、ミドルシュートの他にも、相手DFに対して仕掛けてシュートコースを作ってからのフィニッシュ、あるいは相手を完全に抜き去ってからのフィニッシュも含まれるのだ。

 

フォワードは、これらポストプレータイプ×フィニッシュタイプの欠け合わせでタイプを表記したい。たとえばジルーはダイレクトポスト×ダイレクトフィニッシュであり、インモービレはダイナミックポスト×1対1フィニッシュである。

さらに、複数のタイプのポストプレー/フィニッシュを得意とするフォワードももちろんいて、たとえばオシメンは頭フィニッシュと1対1フィニッシュを兼ねるフォワードであり、ルカクは背負いポストとダイレクトポストを巧みに使い分ける。このように考えていくと、その分類は無数に広がっていく。かなり解像度高くストライカーを分析できるマトリックス図だと自負している。

以上がフォワードの分類だ。

 

あとがき

いかがだったでしょう。

今回紹介したマトリックスの分類方法はあくまでも筆者が考えた一例でしかない。マトリックスの軸に何を置くかで、また違った選手分類方法があることだろう。フィジカルorテクニックという軸もあるだろうし、スピードorパワーという軸も考えられる。こっちの方がもっといいんじゃないか、という意見があればどしどしコメントしていただきたい。

そして、選手分類名でもっとカッチョイイ命名があればこれまた教えていただきたい。

 

さて、せっかくマトリックスを作ったので、次回以降はこのマトリックスに実際に点を打っていきたい。対象となる選手がマトリックスのどこに位置するのか、具体例を見ていくということである。最終的には「セリエAの全選手を分類してみた」的なものを出せればいいな、なんて考えているのでぜひお楽しみに。

ここまで読んでくださりありがとうございました。また次回もぜひご一読ください!

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