【セリエA全選手詳解】ASローマの23人を分析してみた

ゴールキーパー

シーズン開幕当初はルイ・パトリシオが正守護神を務めていたが、ここ数試合でスヴィラルが定位置を奪取したというホットなポジションがGKだ。

モウリーニョが指揮していた当初からチームとしての重心が若干上がっていた今季のローマにあって、ルイ・パトリシオの堅実なスタイルとのミスマッチが徐々に拡大していった感は否めない。

特に、スモーリングからジョレンテにCBが交代したことによってより後方での組み立てが多くなった影響で、パトリシオのプレス耐性の低さが際立ってしまった。

一方、スヴィラルは積極的に組み立てに参加できる。ビルドアップ能力が特別に高いわけではないのだが、ボールの中継地点となってくれるだけでもチームとしての機能性が全く異なる。よりボールを持って試合を組み立てるようになったデロッシ政権移行後はなおさらだ。

ゴールを守る能力に対しても、ファンブルが目立つなど衰えが見え始めていたパトリシオに対し、スヴィラルが優位性を示しているのは事実だ。

このままスヴィラルがゴールを守っていく可能性が高そうだ。

 

ルイ・パトリシオ

ポルトガルのマラゼスで生まれたルイ・パトリシオは、9歳の頃にサッカーを始める。当時はストライカーとしてプレーしていたらしい。

中学年代に入るタイミングでスポルティングのユースチームに入団したパトリシオは、そのまま18歳の時にトップチームデビュー。以後12シーズンにわたってスポルティングのゴールマウスを守り続け、プリメイラリーガ年間最優秀GK賞を2度受賞するなどリーグを代表するGKとしての地位を確かなものとした。

2016年にはEURO優勝に正守護神として貢献し、大会最優秀選手にも選出されている。

30歳になってウォルバーハンプトンに移籍し国外挑戦に踏み出したパトリシオは、3シーズンイングランドで活躍したあと2021年にローマに加入している。

ルイ・パトリシオのプレースタイルをひとことで表すと、「堅実なGK」ということになるのだろう。

データを見てみると、守備アクションのゴールからの平均距離はリーグでも最も短い部類に入る。つまり、基本的にはゴールから離れた位置でのアクションは行っていないということだ。

ここら辺のデータはクラブのスタイルに左右される部分も大きい。しかし、実際のパトリシオのプレーを見てみても、クロスボールに対して出ていかずにゴールラインで待ち構える場面が多い。アグレッシブネスよりも堅実さが際立つGKだという印象が強い。

そんな彼の武器は、ポジショニング反射神経だ。

36歳になった百戦錬磨のルイ・パトリシオは、正しいポジションを常に取り続ける。ここらへんは経験値と堅実さがよく表れている。

そして、年齢を重ねたものの反射神経の鋭さはまだ鈍っていない。特に至近距離から放たれたシュートであっても、手足を伸ばして届く範囲であれば確実にセーブしてくれるという安心感がある。

↓ クロスボールが上がってきた場面で、正しいポジションを取り直し、至近距離からのシュートを防いだ場面。パトリシオの良さが見えた。

一方で、遠距離からのシュートに対する処理には疑問符が付くと言わざるを得ない。ミドルシュートをはじけずに失点してしまう場面が散見されるのだ。数シーズン前であれば止められていたのでは…と思うこともしばしばだ。

簡単にセーブできそうなシュートに関してもファンブルすることが多いというのも悪印象。何でもない場面でバタバタしてしまう要因となってしまっている。

また、ビルドアップへの貢献が見込めないのもマイナスポイント。特にプレス耐性の低さは顕著で、相手アタッカーが圧力をかけに来たら長いボールで逃げる場面がほとんどだ。

ミドルフィードの精度は悪くないだけに、もう少し落ち着いて状況判断ができればまた違った評価になりそうなものだが…。

(今季は特に)攻守両面で物足りなさが残るルイ・パトリシオ。ここ数試合ではスヴィラルに定位置を奪取された印象で、シーズン終了後の退団が噂されている。

もう一花咲かせられるか。名手の意地に期待したい。

ミル・スヴィラル

セルビア人の両親の元ベルギー最大の都市アントワープで生まれたスヴィラルは、ベルギーの世代別代表に選出されながら(A代表は両親の母国であるセルビアを選択している)名門アンデルレヒトでプロ契約にこぎつけた。しかしながら、トップチーム出場歴がないまま、ポルトガル王者ベンフィカに移籍することになる。

加入初年度にクラブの最年少出場GK記録、チャンピオンズリーグの最年少出場GK&最年少PKストップ記録を塗り替えるなど期待が大きく膨らんだスヴィラルだったが、徐々にトーンダウンし、Bチームが主戦場となっていく。結局5年間プレーしたベンフィカでのトップチーム出場は9試合にとどまったまま退団することとなる。

新天地のローマでもルイ・パトリシオの控えGKとしての日々が続いていたスヴィラル。しかしながら、今ようやく定位置をつかみつつある。

スヴィラルを特徴づけるのは、そのアグレッシブなプレースタイルだ。ルイ・パトリシオが堅実なタイプであるからこそ、余計にスヴィラルのアグレッシブさが目立つ。

ミラン戦の失点シーン。スヴィラルはゴールエリアのライン上でセービングを行っている。

ルイ・パトリシオがゴールライン上をスタートポジションとする一方、スヴィラルはそこから1、2歩前に出たポジショニングをとる。さらに、そこから少しずつ前ににじり出て、少しでもボールとの距離を縮めようとするのだ。

相手からすれば、GKとの距離が近いほどゴールが小さく見える。心理的な圧力をかけることで優位に立とうとするスタイルはまさにアグレッシブさの表れである。

少しでも前に出てプレーしようとする姿勢は、クロスボール対応にも反映されている。

スヴィラルは25節終了時点でクロスボール処理率がセリエAトップの数値を残している。積極的に前に出てボールを処理し、シュートを未然に防ごうという姿勢が彼の持ち味だ。

ライン裏に中途半端なボールが落ちてきた場面。スヴィラルはゴール方向に戻ることも、飛び出して処理することもできるポジションをとって様子をうかがう。
敵と味方の状況を見て思い切って飛び出し、パンチングで難を逃れた。

ミドルレンジからのシュートに対する処理も安定している。反射神経に優れているとはいいがたいが、バネがあり体が伸びるため、守れる範囲は広い。ミドルレンジからのシュートであれば反応時間が取れるため、バネを活かして優雅にセーブする

また、ボール保持に対する積極的な参加もルイ・パトリシオと比較したときのストロングポイントだ。積極的に最終ラインに加わってボールの預け所となれ、プレス耐性もパトリシオとは比較にならない程に高い。シンプルなパス循環への参加に関しては既に問題ないレベルに達している。

まだキックの種類が豊富ではなく、またライン間にいる味方へのパスコースを見出せるほどの戦術眼も持ち合わせていない。しかしながら、キックに飛距離があり深さを取れるのは大きなストロングポイントだ。今後のトレーニングでさらに向上の余地があるだろう。

ウィークポイントとしては、前述のように至近距離からのシュートに対する反射神経がトップレベルと比較すると見劣りすること、シュートを打たれるタイミングで止まることができていない場面が散見されることくらいか。

後者はポジション移動が激しいタイプである以上改善したいポイントだ。アグレッシブに前に出る前提でポジションするならば、そこから後退に切り替えなければならない場面は必ず出てくる。

そうなった時に可能な限り後退しつつ、シュートが飛んでくるタイミングではしっかりと止まって次の反応に備えておかねばならないだろう。

まだ課題も残っているとはいえ、資質として非常に優れたものを持っていることは間違いない。

数々の最年少記録を塗り替えたままくすぶっていたスヴィラルが、ついに日の目を浴びつつある。今後に注目だ。

 

 

 

センターバック

ハイセンとジョレンテはともにビルドアップ能力がセリエAでも屈指のCBだ。マンチーニもビルドアップ能力が高く、ポジショナルCBに分類できるだろう。

エンディカは非常に機動力が高く、ハイライン裏のカバーはお手の物。組み立てに参加する能力も低くない。総じてポゼッションスタイルとの相性がよく、事実モウリーニョ解任前も昨季と比較してボール保持傾向が強まっていた。

さらにポジショナルなスタイルに舵を切ったデロッシ政権とスカッドの相性は抜群だ。

他の4人と比較すると、ひとり体格にいるのがスモーリングだ。ビルドアップ能力・機動力に疎い代わりに、抜群の跳ね返し性能を誇る。昨季のMVPのひとりだろう。

彼の負傷によって3バック中央がジョレンテに替わったのは、スタイル転換の象徴と言えるだろう。

 

ジャンルカ・マンチーニ

フィオレンティーナのユース出身のマンチーニは、レンタル先のペルージャでプロデビュー、2シーズンをセリエBで過ごした。

ここでの活躍ぶりを注視していたのが、選手発掘に長けたアタランタだった。移籍したマンチーニは名将ガスペリーニのもと2年間プレーし、アッズーリデビューも果たした。

そして2019年夏、ローマに加入する。以降5シーズンで公式戦207試合に出場しており、ペッレグリーニ不在時には腕章を巻くなど今やクラブの象徴的な選手のひとりとなっている。

 

彼のベースとなっているのは機動力の高さだ。自分のマッチアップ相手にボールが入った瞬間の出足の早さは圧巻で、インターセプトの多さもここからきている。また、ローマ加入当初はセントラルMFで起用されていた通りカバー範囲の広さと持久力を備えており、出足の鋭さが試合終盤になっても落ちないのも魅力だ。

唯一、スプリント能力では見劣りする部分があり、スピード勝負で分が悪い場面が散見される。しかしながら、相対的な運動能力は非常に高いと評価できる。

これを活かし、マッチアップ相手にボールが入った瞬間にギアを入れて距離を詰め、ファウル上等のぶちかましで攻撃の芽を摘み取るのがマンチーニの得意技だ。

長身ゆえに空中戦も強く、勝率は60~70%を維持している。

地空問わず対人に強い彼は、相手選手だけでなく味方もシバき上げる。とにかく人をシバいてシバいてシバきまくるのがマンチーニだ。

ボール保持時には、正確なロングフィードで魅せる。サイドチェンジの精度はなかなかに高い。

それだけでなく、運ぶドリブルによって相手を引き付けたり、機を見てくさびを入れたりといったプレーの選択肢も持つ。状況に応じて実質右サイドバックとしてふるまうなど、配置の柔軟性も魅力だ。

また、激しいプレーを身上とするわりに負傷が少ないのも素晴らしいポイントだ。

transfermarktより、マンチーニの負傷歴。細かい離脱が散見されるものの、長期離脱はプロ生活においてゼロだ。

そのプレースタイルゆえにカードコレクターなのが玉に瑕。ファウル数、イエローカード数は常にランキングの上位で、21-22には5大リーグ最多のイエローカード数を記録したこともある。

激しいながらも攻守両面において貢献度が高いモダンなCBで、選手分類マトリックスにおけるポジショナルCBに分類できるだろう。

 

 

ディエゴ・ジョレンテ

8歳のころからレアル・マドリードの下部組織一筋でプレーしてきたディエゴ・ジョレンテ。Bチームやレンタル先のラージョ・バジェカーノ、マラガで研鑽を積んだ後、2017年にレアル・ソシエダに移籍する。

ソシエダで3シーズン、プレミアのリーズで1シーズン半プレーした後、2022年1月にローマにレンタルで加入。今シーズンもレンタルを継続しローマでプレーしている。

 

彼の最大の魅力は、ハイレベルなビルドアップだ。

長短にパス技術が高く、かつ試合を組み立てる戦術眼を備えているジョレンテは、非常に高性能なレジスタCBだ。今季ここまでのパス成功率は91.4%でセリエA8位という高数値だが、決して安全なパスをつなぎ続けているわけではない。むしろ、積極的なくさびで攻撃を前進させながらのこの数値は高く評価していいだろう。

ボールを持った状態で周囲の状況を認知するジョレンテ。
体をひねりながらサイドバックの足元にくさびをつけた。

上記のシーンにジョレンテのよさが詰まっている。

ひとつはパスコースを見出す視野の広さ。通常の選手であれば引っ掛かると考えるコースでも、ジョレンテはパスコースとして認識できる。相手からプレッシャーを受けながらでもその認知能力が変わらないことも高評価だ。

そして、その細いコースを通すためにボールの置き所や体の向きで相手をだますスキルを持っている。上の場面でも、右足でボールを持って右に展開すると見せかけたところから体をひねってパスを通している。

それも、ただ通すだけでなくグラウンダーでパスを通しているのがポイント。普通の選手なら、幅をとっている選手に対してフワッとしたロブパスで相手の頭の上を通すだろう。だが、ジョレンテは置き所や体の向きなどを駆使してグラウンダーでパスを通す。くさびでもしかりだ。

ボールの受け手からしたら、浮き球のボールよりもグラウンダーのボールの方が処理しやすいは当然のこと。ジョレンテのパスは通りやすいだけでなく、受け手の次のプレーがスムーズになりやすいという点で他の選手とは一線を画しているのだ。

 

このように非常に高いビルドアップ能力を発揮するジョレンテだが、非保持時の貢献度も高い。モウリーニョ政権時には3バックの中央を任されていた通り、迎撃性能は低くない。線が細くスプリント能力も特段高くないが、タイミングを見計らってボールをつつく能力は高い。

また、しっかりとコースに入ってブロックする技術も高い。シュートブロック数はここまでリーグトップテンに入っている。

全体的にフィジカル能力は高くなく、スプリント勝負や空中戦は不安要素となる。だが、それを持ち前のクレバーさで埋めてプレーする、賢いCBだ。

 

今季ここまでの活躍はキャリア最高の出来と言ってよく、パリ・サンジェルマンからの関心がさかんに報道されるなど今季のローマの注目選手となっているジョレンテ。

出場試合数に関する条項を達成したことで、来夏500万€でリーズから完全移籍で獲得することが可能だ。苦しい財政事情のローマだが、この金額であれば確実にジョレンテを手に入れるはず。そこから転売して大きな利益を得ることも可能だろう。

リーグ全体で見ても屈指のレジスタCBであるジョレンテ。今季の活躍とともに、来夏の動向にも注目だ。

 

 

エバン・エンディカ

フランスの首都パリで生まれたエンディカは、パリのクラブを経てオセールの下部組織に入団、リーグ2(フランス2部)でプロデビューを果たしている。

18歳になったエンディカはドイツの強豪フランクフルトに引き抜かれて5シーズンプレーし技を磨いた。長谷部とともに最終ラインを構成し、鎌田ともプレーしている。

21-22にはリーグ戦4ゴール4アシストの活躍を見せて注目を浴びたが残留、2023年夏の契約満了を待ってフリーでローマに加入し今シーズンを迎えている。

パリ生まれのエンディカはユース年代まではフランス代表としてプレーしていた。一方で父はカメルーン人、母はコートジボワール人であり、A代表の選択が注目された中、エンディカは2023年6月にコートジボワール代表からの招集に応える。今冬にはアフリカネイションズカップ優勝に主力として貢献しており、さっそく実力を見せつけている。

 

そのアフリカネイションズカップで、エンディカはとある記録を更新した。大会を通して367本のパスを成功させ、単一大会でのパス成功数の新記録を樹立したのだ。

これは決してフロックではなく、ローマにおいてもパス関連のスタッツは優れたものを残している。90分あたりでのパス成功数はチーム内3位、パス成功率は2位である。

非常に高いパス成功率を記録しているエンディカだが、これは確実に通るパスを選択して配球しているからだ。彼のパス出しは非常にシンプル。遠くのパスがリスキーだと判断したら無理はせず、隣のMFやSBにボールを預けた上でポジションを取り直し、また受けて角度を変える。1本のパスで打開するのではなく、簡単なパスを何本もパスをつないで相手をずらしながら攻撃を組み立てていくのである。

そのため、エンディカはロングボールが非常に少ない。FBref.comによれば、今季ここまで17試合に出場している中で、記録したサイドチェンジはわずかに1本だ。

難易度の高いくさびを積極的に供給しながらも高いパス成功率を記録しているジョレンテとはプレースタイルが全く異なるということだ。

下の動画にてクライフターンによる突破を見せている通り、足元のテクニックレベルは非常に高い。にもかかわらず、それをひけらかすことなく堅実な選択を続けている。

 

彼の堅実なスタイルは守備にも表れている。エンディカはタックルもインターセプトも数としてはそこまで多くない。しかしながら、タックルの成功率は高い数字を記録している

守備時にもエンディカは無理をせずにいいポジションを取り、相手についていく。そうしてここぞのタイミングでタックルを仕掛けるのだ。マンチーニとは対照的な守り方である。

これを裏付けるのは非常に高いフィジカル能力だろう。エンディカのスプリント能力は驚異的で、相手にスピードで振り切られることはまずない。アジリティにも優れており、相手のドリブルに対してついていける。

そのため、相手の出方を見てから対応しても無理が効くのだ。

また、空中戦も得意分野。特にセットプレー時に脅威となれ、ここまでキャリア通算12ゴールのうち半分の6ゴールを頭で奪っている。

 

攻守ともに能力値の高さを見せるエンディカだが、まだまだ改善できるポイントもある。

前述のように安全なパスをつないで攻撃を組み立てるエンディカだが、持っているテクニック的にはもっと積極的にくさびを入れたり、サイドチェンジで相手を揺さぶったりと言ったプレーができる選手のハズだ。時に消極的に過ぎる場面も散見される。

FBref.comより、ローマにおけるファイナルサードへ通したパス数のチーム内ランキング。エンディカはマンチーニの半分以下になっている。

また、ボールの置き所が悪い場面も見受けられる。パス選択の角度が狭まる(もしくは、広げるためにはひとつ持ち出す必要がある)ようなボールの持ち方をしてしまう場面があるのだ。こうした細かい部分の修正はイタリアの得意分野のハズなので、ローマのコーチに教えを乞うてほしい。

また、HVとしては攻撃参加が少ないことも挙げられる。これも彼の堅実さの表れだろうか。

 

エンディカは非常に高いポテンシャルを持っているCBだ。CB分類マトリックス上で見ると、能力的には十分にポジショナルCBとしてプレーできるにもかかわらず、現在のプレーはハードマーカーにとどまっている、という評価になるだろうか。

今後の成長次第ではクリバリのような攻守に完全無欠のCBになることだって可能なはず。まずはローマでの1シーズンをどのように終えるのか注目したい。

 

 

クリス・スモーリング

当時7部相当のリーグに所属していたメイドストン・ユナイテッドでデビューしたスモーリング。そこからフラムを経由してマンチェスター・ユナイテッドで9シーズンにわたってプレー、206試合に出場するなど一時代を築いた。ちなみに、少年時代はアーセナルファンだったらしい。

そして、19-20シーズンからはイタリアにプレーの場を移し、ASローマでプレー。恩師モウリーニョ就任後は全盛期の輝きを取り戻し、昨季はクラブMVP級の活躍を披露した。

 

彼の最大の魅力は、圧倒的な空中戦の強さだ。イタリアにやってきて以来、常に空中戦勝率は70%代後半を維持している。これは驚異的な数値だ。194cmの長身に加えて跳躍力も抜群である。

これを活かし、セットプレーでは得点源となる。ローマにやってきてから、昨季までの4シーズンで10ゴールを挙げている。

 

空中戦だけでなく、クリア数やシュートブロック数など、構えて守るときのスタッツは軒並み高数値。こと跳ね返し性能に関してはセリエAトップクラスと言え、地空問わず対人には絶対の自信を誇る。

学生時代には柔道のイギリスチャンピオンになった、それどころか国際大会で準優勝したこともあるスモーリング。当時の経験が生きている、のかもしれない。

対してインターセプトなど前に出て守るプレーに関しては低数値となっている。これは、彼の機動力の欠如を表している。相手に背後に走られたときや前向きに仕掛けられたときにはアジリティの低さが露呈してしまうことも。横の揺さぶりに弱いのだ。

23-24開幕節サレルニターナ戦、2節ヴェローナ戦と2試合連続で彼の揺さぶりへの弱さが直接失点につながってしまった。

 

また、ビルドアップ能力も高いとは言えない。昨季、ローマは3バック中央のスモーリングを中盤に上げていた。これは相手を陽動するためではなく、スモーリングをビルドアップから除外することを目的としたアプローチであった。

得意なプレーと苦手なプレーがはっきりとしているため、戦術への合う合わないが激しいタイプだといえる。ただ、がっちりとハマったときにスーパーな存在となることは、モウリーニョとの旅路で示してくれた。

負傷による長期離脱期間中に恩師が去り、よりボール保持を重視するデ・ロッシが就任した。新しい環境でどんなプレーを見せてくれるか注目だ。

 

 

ディーン・ハイセン

ディーン・ハイセンはユベントス・ネクストジェネレーションが輩出した超有望株だ。

オランダの首都アムステルダムで生まれたハイセンは、5歳のときにスペインに移住。サッカーを始めたのもスペインだった。

ちなみに、ユース年代ではオランダ代表としてプレーしてきたが、A代表はスペインを選択する意向であることが先日ニュースになっていた。

マラガのユースでプレーしていたハイセンは、2021年、レアル・マドリードとの争奪戦に勝利したユベントスに加入。そして今シーズン、ユベントスのトップチームデビューを飾った。

そして2024年1月、出場機会を求めての武者修行を考慮していたハイセンは、フロジノーネからの関心を受けていたものの、急転直下でASローマにレンタルで加入。直後から重要な存在となって現在に至る。

 

↓ ハイセンのローマにおけるデビュー戦

 

上のタッチ集を見ていただければわかる通り、ハイセンの最大の武器は極めて高いビルドアップ能力だ。パスコースを見出す戦術眼に優れるだけでなく、球種が豊富。鋭いボールからふわっとしたロブパス、あえてスピードを落としたゆるいくさびまで自在に蹴り分ける。

利き足は右だが、左足もほぼ遜色なく使いこなすため、左CBとしての起用でも全く問題がないのも魅力だ。

また、プレス耐性も非常に高く、被プレッシャー下でもパス精度が落ちない。また、相手を剥がすドリブルも得意で、自らパスコースを作り出すこともお手の物だ。

そのテクニックはMF級、いやMF超級で、戦術的要素も含めた総合的なビルドアップ能力は、18歳にしてすでにセリエA全CBの中でも5本の指に入ると評価して差し支えない。

 

↓ フロジノーネ戦ではこんなスーパーゴールも決めている。

 

守備面に関しては、195cmの長身なだけあって空中戦の強さをすでに見せており、ローマでの初ゴールもヘディングで奪っている。

相手に背負われた状態では、距離を詰めつつもハードには寄せず、相手の出方を見て対応する冷静さを見せる。足が長いため、相手とボールに距離ができれば、すぐに絡めとることができるのだ。決して悪くない。

 

一方、背後に走られたときの競走では一抹の不安がある。インテル戦でも、オープンスペースでの競走で入れ替わられかけて足を引っかけ、イエローカードを頂戴している。7試合でイエロー3枚は少し多いだろう。

そしてもう一点、精神面での成熟も必要だろう。

冬の移籍市場でフロジノーネからの関心を退けていたハイセンは、25節の対戦時に大きなブーイングを受けた。その試合で先述のスーパーゴラッソを決めた際、「黙れ」のジェスチャーを見せて警告を受け、デ・ロッシ監督にハーフタイムで交代させられているのだ。

とはいえ、18歳にしてここまでの完成度を誇るCBはなかなかいない。セリエAでプレーする若手CBの中でも、最も大きなポテンシャルを秘めていると評価できる。

特にビルドアップ能力に関してはすでにトップクラス。今後、世界で数本の指に入るポジショナルCBになっていくのではないだろうか。

 

 

サイドバック

左サイドバックのスピナッツォーラとアンヘリーニョはともにオン・ザ・ボールに特徴を持つタイプ。ともに完成度の高いサイドバックで、ウイング型の前者と、司令塔としても振る舞える後者とで状況に応じた使い分けが可能だろう。

一方、右サイドバックも多士済々だが、ワイドの高い位置でディバラのフォローが可能なウイング型が不在。ゆえに、3名が入れ代わり立ち代わり起用されてスタメンが固まっていない理由だろう。戦術的な要請から求められているタイプとスカッドが釣り合っていないのだ。

シーズン終了後に補強対象となるポジションではないだろうか。

 

 

レオナルド・スピナッツォーラ

レオナルド・スピナッツォーラはシエナユースを経てユベントスに引き抜かれ、そこからのレンタル先であるエンポリでプロデビューを果たした。その後レンタルで5クラブを渡り歩いたのち、16-17から2年プレーしたアタランタでブレイクする。

18-19に所属元のユベントスで1シーズンだけプレーした後、2019年夏にローマに加入。これが本格ブレイクのきっかけとなった。3バックの左WBとして絶対的な存在として君臨、アッズーリでもレギュラーになるなどリーグを代表するサイドバックに成長する。

2021年に行われたEURO2020での活躍で、その実力を世界中に知らしめた。しかしながら、その大会で負った大けがで21-22シーズンを棒に振ったあと、いまだ全盛期の輝きを取り戻せずにいる印象だ。

 

スピナッツォーラは右利きの左サイドバックとしてプレーしており、得意とするプレーエリアはアウトサイド高め。足元にボールを引き出し、カットインしながらドリブルで仕掛けていく。典型的なドリブラーSBだ。

彼の最大の武器は爆発的なスプリント。特に10~20mのショートスプリントに関しては驚異的で、数歩で相手の前に出てしまう。

いったんゆったりとボールを持って相手DFの足を止めた上で急加速し一気に置き去りにする、あるいはカットインの姿勢を見せてキックフェイントで縦に切り返し急加速で置き去りにする、というのが彼の突破のパターンである。

 

しかしながら、EURO2020でそのスタイルが全世界にバレた感がある。ケガからの復帰後、彼の縦突破を警戒するチームが多くなってきた。

これを受けて、スピナッツォーラ縦突破を匂わせながらじりじりと相手を押し込んで深い位置に侵入し、そこからインサイドに切り込むなどプレーの幅を広げている印象だ。

 

↓ じりじりと深い位置まで運んだあと、カットインから得点

 

また、相手を抜ききらずにクロスボールをあげることも増えている印象で、負傷離脱前よりもむしろクロスボールはうまくなっている。切り返しての右足はもちろん、縦突破してからの左足クロスも精度が上がってきている印象だ。

負傷離脱前のようなキレキレのドリブルが見られなくなったのは、彼個人のコンディションの問題はもちろんなのだが、それ以上に相手の対策による部分も大きいと考えている。

 

↓ 加速と切り返しで相手を翻弄した後、クロスボールでアシスト。スピナッツォーラらしいプレーだ。

 

ウィークポイントとしては、アウトサイドでの仕掛け以外のプレーでは凡庸であること、負傷癖などが挙げられるだろう。

スピナッツォーラは長期離脱前から細かい離脱が多い選手であった。セリエAでリーグ戦30試合以上出場したのは、アタランタ時代の16-17ただ一度のみだ。シーズンを通した稼働を見込みにくいのは大きなウィークポイントだろう。

しかしながら、一度プレーすれば相手の脅威となる選手なのは間違いない。特に、貴重なドリブラー型のサイドバックとしてリーグの第一人者的存在であることは高く評価していいはず。

ウイング顔負けの打開力で、今後もローマに貢献していくだろう。

 

 

アンヘリーニョ

スペインのガリシア州で生まれたアンヘリーニョ。本名はホセ・アンヘル・エリモリス・タセンデである。

彼は10歳でデポルティボの下部組織に加入して5年間プレーした後、高校のカテゴリーに入るタイミングでマンチェスター・シティの下部組織に加入した。

シティではFAカップ1試合のみの出場にとどまり、その後MLSのニューヨーク・シティにレンタルに出されて実質的にはアメリカでキャリアをスタートさせたという異色の経歴の持ち主だ。

その後スペインとオランダを渡り歩き、オランダのPSVでブレイクしたというのもこれまた異色だ。18-19にエールディビジで1ゴール9アシストを記録している。

その後、マンチェスター・シティに出戻った後はドイツで4年間プレー。そして昨夏加入したレンタル先のガラタサライが、あと1試合出場したら買取条項が発効されるのを嫌ってベンチに座らせていたところに救いの手を差し伸べたのがローマだった。

ちなみに、現在の背番号69はマンチェスター・シティのトップチームで初めて着けた思い入れのあるものだそう。ニューヨーク・シティ、NACブレダなど、事あるごとにこの背番号を選択している。

 

加入直後から早速ポジションを奪ったように見えるアンヘリーニョ。彼の最大の強みが高精度のクロスボールだ。

特にアウトサイドレーンからのクロスボールが際立って高精度で、相手のプレッシャーが届かない範囲から一気にチャンスを作り出す飛び道具として機能する。

 

〈ペナルティエリア外から通したクロスボール〉

  • 20-21:28(欧州5大リーグ9位)
  • 21-22:36(欧州5大リーグ5位)
  • 22-23:29(欧州5大リーグ6位)

 

と、ここ3シーズンは欧州5大リーグトップ10に入るクロス成功数を記録している。まさにワールドクラスの左足の持ち主だ。

また、ライプツィヒでWBとして起用されていた時期には得点力も発揮していた。タイミングよく中央に侵入したり、左足から強烈なミドルを繰り出したりと、直接ゴールを生み出していた。

 

という前情報を持っていたので、筆者はアンヘリーニョのことを典型的なクロッサーSBと思い込んでいた。

ところが、実際のプレーを見てみたら、それ以上に目を引いたのは高いレジスタ性能だった。

低い位置でボールを受けると、長短のパスで攻撃を組み立てていく。鋭いくさびで攻撃のスイッチを入れたかと思えば、細かいパスアンドゴーを繰り返して組織的に相手のプレスを破壊することもできる。浮き球で相手の頭をフワッと超すこともでき、サイドチェンジも蹴れる。

キックの精度、戦術眼ともに申し分なく、サイドのレジスタとしてもハイレベルだったのだ。シティのユースで鍛えられた部分かもしれない。

たとえば、この場面。アンヘリーニョは味方に縦パスを入れ、自らはスペースヘラン。
ダイレクトで落としを受けることで、味方に無理をさせない。
その間に相手の背後に回ったペッレグリーニにダイレクトパスを入れることで、相手のMFラインまで突破することに成功した。パスによってだけでなく、このように動きを交えた連携によっても相手のプレッシングを突破できる。

サイドバックに対して組み立てに参加することを求めるデロッシ・ローマにあって、アンヘリーニョは低い位置でレジスタとして機能しつつ、アタッカーの斜め下にサポートしてボールを受ければアーリークロス、というひとつの流れを確立しつつある。

低い位置でも、高い位置でもプレーできる能力はまさにマスターSBに分類するにふさわしいだろう。

 

一方で、非保持時の守備対応には若干の緩さがあるのが気になるところ。ここまで5試合に出場して記録したタックルはわずかに1、ブロック数も2のみだ(それだけチームとしての守備が機能している裏付けでもあるのだが…)。

また小柄であるためクロスボールでファーサイドを狙われたときに怖さがあること、またスプリント能力がそこまで高くないことなどフィジカル面でも不安要素が散見される。

 

とはいえ、ボール保持を軸にチームを組み立てたい監督ならだれもが欲しがる能力を持つアンヘリーニョ。今冬最大の補強だったと言っていい。

今シーズン終了までにどこまで評価を高めるか注目だ。

 

 

ラスムス・クリステンセン

6歳の頃にブランデIFというクラブでサッカーを始めたクリステンセンは、2012年にデンマーク屈指の強豪ミッティランに加入、そのままプロデビューを果たしている。

その後、1年半アヤックスでプレーしたのち、オーストリアのRBザルツブルクで3シーズンプレー。声価を高めて昨季はリーズ・ユナイテッドでプレーし、今季はリーズからのレンタルという形で、ASローマでプレーしている。

これまでのキャリアではアヤックスでリーグ優勝・カップ戦優勝各1回、ザルツブルクで3度のリーグ優勝・カップ戦優勝各3回と、計8つのタイトルを獲得している。

なお、背番号43はデビュー当初につけていた番号であり、ミッティラン退団後もアヤックス、ザルツブルク、ローマでこの背番号をつけ続けている。

 

クリステンセンを一言で表すならば、「質実剛健」である。187cmと大柄なサイドプレーヤーである彼は、地上戦・空中戦ともに対人に自信を持つ

ピッチの縦幅を単独でカバーできる運動量と、90分間それを持続できる持久力は見事だ。ロングスローも武器とするなどフィジカル面に関しては非常に優れた能力を持っている。フィジカル的に欠点と言えるのはスピードくらいだ。

ザルツブルク時代には副キャプテンに就任し、ウルマーが不在の試合ではキャプテンマークを巻いたクリステンセン。勤勉ゆえに模範的なキャプテンだったであろう。そう思わせるのは、プレーからその真面目さが伝わってくるからだ。いや、もはや髪型からも真面目さがあふれ出している。

彼の真面目さがよく出ているのがオフ・ザ・ボール。カウンター時には精力的に攻撃参加して厚みを加え、CBがボールを持ったタイミングでは素早くポジションを取り直して選択肢を提供する。ともに、ポジションを取り直すスピードが非常に速いのがGOODだ。

様々にストロングポイントを持つクリステンセンだが、その中でも最も大きな武器が得点能力だ。サイドバックをベースポジションとしながら、ここまでのプロキャリアで通算20ゴールを記録している。特に、ザルツブルク最終年となった21-22には7ゴールをマークした。

ここまでのキャリアでは、アシスト数よりも得点数が多いシーズンがほとんどになっている。

FBref.comより、クリステンセンを5大リーグのサイドバックと比較したときの相対的なスタッツ傾向。得点に関して非常に優れた数値を残していることがわかる。

彼の得点パターンは二つ。ひとつは逆サイドからのクロスボールに頭で合わせて決めるというそれ。空中戦の強さを活かし、第2のストライカーとして機能する。

もう一つがミドルシュートだ。状況に応じてペナルティエリア手前のスペースに侵入するのを得意としているクリステンセンは、味方のラストパスを受けて、あるいは相手のクリアボールを拾って、ミドルシュートを放つ。昨季もペナルティエリア外から2ゴールを決めており、相手にとって脅威となる飛び道具だ。

 

様々な強みを持つクリステンセンだが、ここまでの試合出場は先発16試合。完全にスタメンをつかんでいるとはいいがたい。実際にプレーを見てみても、そのポテンシャルを完全に発揮しているとはいいがたいだろう。

原因は、チームの構成にあると見る。今季のローマの中心はディバラだ。彼の項を見てもらえばわかる通り、ディバラは右ハーフスペースから攻撃を司る。ゆえに、ローマの攻撃の中心地は右サイドになる。

一方で、クリステンセンはことボール保持に関しては味方からのクロスボールの受け手となったりこぼれ球を拾ってからのミドルシュートを放ったりと、最後の仕上げの部分を担うときに輝く選手。

反面、テクニックに関しては凡庸なので、後方からの組み立ては得意ではないし、狭い局面での細かい連係プレーも得意ではない。連係プレーを得意とするディバラの補佐役を求められるローマの右サイドバックとしては好ましくない欠点だ。

SofaScoreより、今季のクリステンセンのヒートマップ。アウトサイドレーンのみに色がついていることがわかる。
ザルツブルク最終年のクリステンセンのヒートマップ。アウトサイドレーンだけでなくハーフスペースでもプレーしているのが特徴的だ。

ディバラにハーフスペースを譲るため、クリステンセンはアウトサイドレーンを上下動しながらプレーしている。

しかし、クリステンセンが最も輝くのはピッチ片側を全面的に任され、上下左右にダイナミックにふるまった時なのだ。チームがダイナミックな戦術を採用しているとなお良いだろう。

一方で今季のローマではより狭い局面でのプレーを強いられている。デロッシ政権移行後はよりボール保持を重視する戦術に舵を切っており、逆風が吹いているといっても過言ではない。

 

決して器用ではないクリステンセンだが、自分にできる範囲内の求められた仕事をきっちりとこなす仕事人だ。

チーム構成的に逆風が吹く中、スタメンの座を確固たるものとできるか注目だ。

 

ゼキ・チェリク

9人兄弟の末っ子として生まれたチェリクは、母国トルコのブルサスポルユースを経て、レンタル先のトルコ3部カラカベイスポルでプロデビュー。翌年、同じく3部のイスタンブールスポルへ移籍してプレーした。

その後、イスタンブールスポルの3部優勝に貢献し、翌季も2部で好パフォーマンスを継続したことによって注目を集め、2部にいながら2018年にトルコ代表初招集を受け、翌年にはリーグアンの強豪LOSCリールに引き抜かれるというサクセスストーリーを歩むことになる。そのため、トルコでは1部でのプレー経験がない。

リールでも戦力として定着し、PSGを押しのけ優勝した20-21でも主力として活躍したチェリクは、2022年夏にASローマに引き抜かれ、今季2シーズン目を迎えている。

 

近年攻撃面での貢献度が高い選手が重宝される傾向があるサイドバックにおいて、チェリクは守備力に特長があるプレーヤーだ。

対面のアタッカーに対してボールが入れば素早く距離を詰めて圧力をかけ、タイミングを見計らって積極的にタックルを仕掛ける

リーグアン時代から通してみてもタックルに関する数値は非常に多い部類に入っていて、チェリクが優れたタックラーであることを表している。

サイドで縦に仕掛けられたときも、しっかりとついていってクロスボールをブロックできる。このクロスブロックができるサイドバックは意外なほどに少ない。これだけでも大きな武器と言えるだろう。

 

一方の保持時には、オフ・ザ・ボールの面で強みを持つ。低い位置ではボールの動きに合わせたポジション修正の早さが際立つ。素早く角度を作り、CBやMFに対して選択肢を提供する。

ただし、その後ボールを受けた後はシンプルな散らしで潤滑油になるところまでが彼の役割で、相手のプレスを打開する鋭いくさびなどは持ち合わせていない。特にプレス耐性が低いように見えるのは気になるところだ。

また、味方アタッカーにボールが入った時には鋭いスプリントによって積極的にサポートする。この時にアウトサイドだけでなくインサイドにも侵入できるのがチェリクの強みだ。

understatsより、チェリクのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさとして表現したもの。

チェリクはリール時代の4シーズンで6ゴールを挙げており、オープンプレーから得点にも絡めるサイドバックとして鳴らした。タイミングのいいランニングでペナルティエリア内に侵入できていることがうかがえる。

 

一方で、アウトサイドでボールを持った場面でのプレーには課題を残す。特にクロスボールの精度は要改善である。単独での突破力も持っておらず、基本的には味方のサポートを待ってボールを預けることが多くなっている。

ローマに来てからのチェリクは2シーズンでわずか1アシスト。リール時代にも、初年度の18-19で5アシストを記録して以降、2もしくは3アシストで推移しており、チャンスメイクという面ではあまり能力が高い選手ではないのだ。

 

彼のプレー特性からして、1人でアウトサイドレーンを担当しなければならないWBでは強みが活きにくい。このチェリクの苦手項目をまさに求めていたのがモウリーニョ。だからチェリクが起用される場面が限られたのではないだろうか。

一方、1列前にアタッカーがいる4バックのサイドバックなら、得意のオフ・ザ・ボールが活かしやすい。ゆえに、デ・ロッシ体制への移行はチェリクにとってはアピールのチャンスだといえる。

このチャンスをつかんで定位置奪取なるか注目だ。

 

 

リック・カルスドルプ

カルスドルプはオランダ東部の都市スクーンホーフェンで生まれた。父親がトレーナーをしていたクラブ、VVスクーンホーフェンでサッカーを始め、フェイエノールトからのスカウトを受けて移籍。フェイエノールトでトップチームデビューを果たし、3シーズンを過ごした。

なお、カルスドルプはユース年代には攻撃的MFとしてプレーしていた。プロデビュー試合もMFとして途中出場している。カルスドルプが右サイドバックでプレーし始めたのはプロになってからだったのだ。

15-16には10アシストを記録して注目を集めると、16-17にはフェイエノールトの18年ぶりリーグ優勝に主力として貢献した。

これを置き土産に、ローマに1400万€の移籍金で加入。19-20にフェイエノールトにレンタルされた以外はローマでプレーし続けており、今年で加入7年目だ。

 

カルスドルプは元MFなだけあって、右足から繰り出すキック精度には自信を持っている。また、パスコースを見出す視野の広さにも長けている。

これを活かし、後方からの配球によってチームに貢献するプレーを得意としている。

チェリク、クリステンセンがこの項目を苦手としているだけあって、これはカルスドルプの強みだといえるだろう。

 

チェリク、クリステンセンと比較してクロスボールの精度も高い。ただし、高い位置からのクロスボールよりも、低めの位置からのアーリークロスを得意としている。全体的に低めのエリアからの配球を得意としていて、まさに「司令塔SB」としての資質を持っているといえるだろう。

 

非保持時にはマーク相手との距離を詰めて積極的にタックルを仕掛けていく。両腕と首にびっしりと刺青が入ったその風貌からいかにもハードタックラーな印象を受けるが、実はクリーンなタックルがカルスドルプの持ち味。

21-22を除くと、1シーズンにもらうイエローカードは非常に少なくなっている。無理なタックルは仕掛けず、ボールをつつけるタイミングでのみ足を出す。狙えるタイミングではインターセプトにも積極的な印象だ。

 

それでは、カルスドルプの弱みはどこにあるのか。

ひとつはドリブルである。アジリティや加速能力に欠けるカルスドルプは、ドリブルで相手をかわして局面を打開したり、長い距離を運んだりと言ったプレーは得意にしていない。そのため、あくまでもパスによって局面を打開していく

これが相手に読まれると、パスをカットされまくって低パフォーマンスに終始する試合も…。

また、高い位置に張ってウイング的にふるまうタスクも得意ではない。前述のように、ドリブルによる打開も、角度がないところからのクロスボールも得意ではないからだ。

 

チェリク、クリステンセンとは異なる強みを持っているカルスドルプ。その強みをアピールできれば、定位置を奪取することも十分に可能なはずだ。

右サイドバックの三つ巴のスタメン争いがどう決着するか注目したい。

 

 

 

 

ミッドフィルダー

攻守両面でハイレベルなタレントをそろえるローマ。このスカッドの中ではオフ・ザ・ボール寄りのボーヴェも足元が拙いわけではなく(むしろポゼッションスタイルでも輝ける)、デロッシが標榜するスタイルとの親和性は高い。

アンカーを務めるパレデスの非保持に不安感があるが、インサイドハーフの面々はいずれも守備がうまいためバランスが取れている。

キャプテンのペッレグリーニとタイプが似ている新戦力アウアーは少し苦しい立ち位置か。現在起用されているエル=シャーラウィとザレフスキがいずれもアウトサイドレーンを主戦場とする左ウイングでアクセントになる起用法を見てみたいところだ。

 

ブライアン・クリスタンテ

地元のアマチュアクラブ、リヴェンティーナ・ゴルゲンセを経てミランの下部組織に入団したクリスタンテは、当時から将来を嘱望されていた。プロデビューはUEFAチャンピオンズリーグで、16歳278日でのチャンピオンズリーグ出場はクラブ最年少記録であった。

神童として期待されたクリスタンテだったがなかなか出番に恵まれず、2014年に移籍したベンフィカでも状況は変わらず。パレルモ、ペスカーラへのレンタルによる武者修行を繰り返した。

17-18シーズン、ガスペリーニ監督のアタランタでようやくブレイク。36試合で9ゴール2アシストという数字を残し、2018年にローマに加入する。以降6シーズンローマ一筋でプレーするクリスタンテはチーム最古参のひとりであり、第3キャプテンに就任するなどいまやローマの中心人物のひとりだ。

ちなみに、父親がカナダ系イタリア人で、クリスタンテ自身もカナダ国籍を保持している。

 

守備的MFが主戦場のクリスタンテだが、インサイドハーフやセンターバックにも対応可能。フォーメーション上だけでなく、プレーにおいても非常に万能性が高い

アンカーとして起用されれば、ボール保持時にはレジスタとして機能する。最終ラインに吸収されたり、その手前にとどまったりしながらボールを受けると、積極的な縦パスで攻撃を加速する。この縦への志向性がクリスタンテの大きな特徴で、ファイナルサードへ届けたパス数はここまでセリエA3位だ。

アタッカーの足元へのくさびはもちろん、サイドの選手への対角線のロングパスも用いて攻撃をデザインしていく。レジスタとしての能力は高い。

 

↓ アシスト未遂

 

インサイドハーフで起用されれば、適切なポジショニングが光る。味方の立ち位置を見ながら常に空いたポジションに陣取り、チーム全体としてのバランスを整える。地味だが、非常に効果的なプレーだ。

サイドバックの位置に斜めに下りてボールを引き出した場面。
パレデスが空けたレジスタの位置に降りてきてGKからのパスを引き出した場面。
ウイングが空けたサイド高い位置に飛び出した場面。

このようにチームのバランスを整えつつ、オフ・ザ・ボールのランニングで前線に飛び出すプレーも見せる。アタランタ時代には点が取れるMFとしてブレイクした通り、インサイドハーフでの起用が続けば得点能力も発揮するはずだ。長身なクリスタンテはゴール前でターゲットになることもでき、オフ・ザ・ボールでいろいろなことができる選手だ。

 

↓ クロスボールに合わせて得点した場面

 

また、攻撃の最終局面ではミドルシュートも装備。ここ数年は毎シーズン素晴らしいミドルシュートを決めている。

 

非保持時の貢献度ももちろん高い。

運動量豊富でカバー範囲が広いクリスタンテは、最終ライン前を幅広く動いてはタックルを仕掛けてボールを刈り取る。ここまでファウル数がセリエAトップとなっているが、これも彼のカバー範囲の広さ、ボールへのチャレンジの多さをよく表しているのではないだろうか。

フィジカル能力に優れたクリスタンテは、当たり負けする場面が皆無。体を当てて相手のバランスを崩し、そのすきに体を入れて着実にマイボールにする。防波堤としての能力は非常に高い

また、長身ゆえに空中戦も悪くないのもGOOD。3バックのCBとしても機能できるほどの総合的な守備性能を誇っている。

さらに、負傷離脱が非常に少ないこともクリスタンテの魅力のひとつだ。イエローカードの累積を除くと、欠場する試合はほとんどないのだ。

 

穴らしい穴がないクリスタンテ。強いて欠点を上げるなら狭い局面を打開するほどのアジリティやクイックネスに欠けることくらいだろうか。

総合的に見て、攻守両面で非常にハイレベルな完成されたMFだ。派手なプレーこそ少ないものの、地味な仕事を100点満点で遂行し続ける仕事人である。マスターMFに分類するにふさわしいだろう。今後もローマの要としてプレーし続けるのではないだろうか。

 

 

レアンドロ・パレデス

アルゼンチンの名門ボカ・ジュニアーズのユース一筋で育ったパレデスは、そのままボカでプロデビューを飾った。

彼の欧州キャリアはイタリアで始まった。キエーボを経由しエンポリ、ローマでプレー。アルゼンチン代表デビューも飾った。

その後、ロシアのゼニト、フランスのパリ・サンジェルマンを経由し、昨季はユベントスへのレンタルで5年ぶりにイタリアに復帰。11月にはワールドカップ優勝メンバーとなっている。

そして今シーズン、400万€の移籍金でローマに加入し、ここまでチームで3番目に多い25試合に出場しており、完全に主力に定着している。

 

パレデスのプレースタイルは、古典的なレジスタのそれ。中央3レーンに常駐し、長短のパスを振り分けて試合を組み立てるのだ。

23-24シーズンのELにおけるパレデスのヒートマップ。中央3レーンにのみヒートマップが分布している。

サイドチェンジによって局面を変えたと思えば、縦パスを入れて攻撃のスイッチを入れる。文字通りの司令塔として機能している。パス関連のスタッツは軒並みチーム内でもトップクラスの数値だ。

彼を際立たせているのは、判断の早さと寄せられたときのボールキープ力。ボールの流れをよどませることがなく、多少の圧力ならいなしてくれる。ボール保持を志向するチームにとっては重要な存在たりえる能力の持ち主だ。

 

一方で、非保持時のふるまいには課題が残る。

相手のCBから、フリーのMFに縦パスが入る場面。
本来、このMFに対してはパレデスがマークにつくべきだった。1列前のペッレグリーニも、ここがフリーだったことに不満を表現している。
その後もパレデスはまったくプレッシャーをかけず、完全フリーで展開することを許している。

ハードなタックルによりカードを多くもらう印象があるパレデスだが、想像以上に淡白な守備が多い。また、カードをもらうにしても事前の準備の不足からくるもったいないものも少なくない。

ポジショニングをサボったために対応が遅れる→ファウル覚悟で無理やり止めに入る→カードをもらう、という流れだ。

そのため、今季ここまで25試合で11枚のイエローカードを提示されているパレデス。これはセリエAトップ、欧州5大リーグでも2位の数字だ。

このように、ストロングポイントがボール保持に、ウィークポイントがボール非保持に偏っているパレデスは、かなりオン・ザ・ボールに偏ったコンダクターに分類できるだろう。

 

その能力を考えると、デロッシ体制への移行は願ってもない吉報だろう。ボール保持に軸を置くチームにおいて、欠かせない司令塔となっている。

チームの心臓の位置に陣取るパレデスのゲームメイクに注目だ。

 

 

ロレンツォ・ペッレグリーニ

9歳でローマのアカデミーに入団して以降ローマ一筋で育ってきたペッレグリーニ。キャリアの序盤にはセンターバックとしてプレーしていたらしい。

その後MFに転向して2015年3月にローマでプロデビューを果たした後、2015年夏にサッスオーロに移籍。加入2年目の16-17に公式戦通算8ゴール7アシストの活躍を見せてローマに買い戻される。

以降再びローマ一筋でプレー、今季で8年目となる。フロレンツィ退団後にはキャプテンに就任し、名実ともにローマを代表するプレーヤーとして活躍している。

 

ペッレグリーニは中盤ならどこでもこなせるユーティリティーなプレーヤーだ。マンチーニ監督時代のイタリア代表では、一時左ウイングを定位置としていたこともある。

様々なポジションをこなせるペッレグリーニだが、最も得意とするのはトップ下もしくは3センターのインサイドハーフだろう。

ペッレグリーニは攻撃の最終局面でクオリティを発揮できるプレーヤーだ。これまでのキャリアで通算60のゴールと54のアシストを記録しており、得点に絡む能力は抜群だ。これを活かすべく、高めのポジションで起用するのがいいのではないだろうか。

FBref.comより、5大リーグのMFと比較したときのペッレグリーニの相対的なスタッツ。ゴールとアシストに関するスタッツが非常に優れており、敵陣ペナルティエリアニアでのボールタッチや縦パスレシーブ、ドリブルなどでも優れた数値を記録している。

ペッレグリーニはダイナミズムを備えたMFだ。上に示した指標でも運ぶドリブル(Progressive Carries)やドリブル突破(Successful Take-Ons)で優れた指標を示している通り、ボールを運びつつパスを散らすようなプレーを得意としている

相手からプレッシャーを受けても1枚剥がしてくれるため、味方からしても楽だろう。

ドリブルをしながらでも精度高いスルーパスを供給できるテクニックも魅力だ。浮き球のふわっとしたパスは出せないが、グラウンダーでも通せるコースを見出してラストパスを供給する。

 

↓ レテギのイタリア代表初ゴールをアシストした場面

 

また、ペッレグリーニは得点が取れるMFである。まずは下の画像を見てもらいたい。

understats.comより、ペッレグリーニのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。黄色で囲ったものは直接フリーキックからの得点。

これを見ると、ペッレグリーニのゴールの多くはペナルティエリア内から放ったものであり、ペナルティスポットよりも前のから打ったものも少なくないことがわかる。

なぜこうなっているのかというと、彼はオフ・ザ・ボールの動きでゴール前に侵入し、味方からのラストパスを引き出して決める得点が多くなっているからだ。ここでも彼のダイナミズムが活きている。

ドリブルで運ぶプレーが得意なペッレグリーニだが、自ら持ち込んでの得点は実は少ないのだ。

 

また、ペッレグリーニはプレースキッカーの名手でもある。

キャリア通算で11のPKを決めており、21-22シーズンには直接フリーキックで3ゴールを挙げて話題となった。

またコーナーキックも正確で、彼のアシストはプレースキックからのそれが大きな部分を占めている。

 

さらに、非保持時のボール奪取能力も高い。特にタックル技術はハイレベルで、相手とボールとの間に距離ができたタイミングでボールをつついて奪い去る。スタンディングタックルはもちろん、スライディングタックルも巧みだ。

決して屈強ではないペッレグリーニだが、フィジカルの不足を技術によって補っている。

守備的MFを任されても問題なくこなしてしまうのは、彼の守備能力があってのことだろう。

 

攻守に能力値が高いペッレグリーニ。

欠点を上げるとしたら細かい負傷離脱が非常に多いことだろう。継続性に欠ける点は大きなマイナスポイントだ。

transfermarktより、ペッレグリーニの負傷履歴。こうした細かい離脱がなければ、もっと数字を伸ばしていたはずだ。

また、ペッレグリーニはゴール前でラストパスの受け手となって得点を奪うことが多い。しかし、せっかくドリブルと正確な右足を持っているのだから、もっと積極的にミドルシュートを狙ってもいいような気がする。得点に関する幅を広げれば、より驚異的な選手となれるはずだ。

 

今シーズンのカピターノとしてチームを引っ張ってきたペッレグリーニ。モウリーニョのフットボールよりもデロッシのフットボールとの相性がよく、デロッシ就任後の公式戦9試合で4ゴール3アシストと絶好調だ。

クラブをCL出場権獲得とEL制覇に導き、さらに声価を高めてほしいところだ。

 

 

エドアルド・ボーヴェ

ナポリ出身の父と、ドイツ系イタリア人の母のもと生まれたエドアルド・ボーヴェは、2012年にトライアウトに合格してローマに入団。以降ローマ一筋でプレーしプロデビュー、トップチームに定着している。ロマニスタの期待を一身に背負う新世代のバンディエラ候補だ。

3つの言語を操り、現在もグイド・カルリ社会科学国際自由大学で経済学を学ぶ大学生でもあるという知性派で、プロを目指せるほどテニスもうまかったようだ。

 

私生活ではインテリな一面を見せるボーヴェだが、ピッチ上ではそれを全く感じさせない。そのプレースタイルを一言で表すなら「狂犬」。ピッチを幅広く動き回っては相手にタックルを仕掛け、ボールを刈り取るハンターなのだ。

タックルに関するスタッツは軒並みチーム内トップ。90分平均値で見れば頭一つ抜けている状態だ。

彼はやみくもにボールに襲い掛かるわけではなく、タックル技術が高いのがポイントだ。正確にボールのみを捉えるため、危険なファウルが少ない。タックル数ではチーム内トップでありながら、ここまで頂戴したイエローカードはわずかに2枚だ。

また豊富な運動量も彼の魅力。ボーヴェは常に足を止めない。特にプレスバックの早さは特筆もので、相手の最終ラインにプレッシャーをかけた後、プレスバックしてきて味方DFとともに相手アタッカーを挟撃するプレーは彼の得意技だ。

 

ボール非保持時には闘志むき出しの積極的な姿勢を見せるボーヴェだが、ボール保持時には一転してシンプルなプレーに徹する。少ないタッチでボールをさばいてくのだ。

目を見張るのはその判断の早さ。ボールを受けたときにはもう次のプレーをイメージしているのだろうなと思わせるほど、流れるようにボールをさばいてチームのリズムを淀ませない。いや、むしろリズムを生み出していく。

それを可能にしているのは、彼の高い認知能力だ。ポジションをとってボールを引き出してはさばき、また動く。これを繰り返してボールを循環させていく。今のローマには彼以外いないタイプのスタイルだ。

 

↓ 少ないタッチによるボールさばきでアシストした場面。

 

一方で今後への課題としては決定力の強化が挙げられる。

運動量豊富なボーヴェは前線へ飛び出してフィニッシュに絡める素質を持っている。しかしながら、それを得点につなげられていない場面が散見される。

今季ここまでの実得点-得点期待値(つまりどれかで決定機を逃しているか)は-1.9となっておりチームの中で断トツのワーストとなってしまっている。

さらなる決定力を身に着ければ、もっと怖い選手に化けるだろう。

 

ボーヴェは自身のアイドルをデ・ロッシだと語っていた。そのアイドルが自身の指揮官になるとは思ってもみなかっただろう。

デ・ロッシは、ボーヴェのことを「みんなが自分の娘と結婚してほしいと思うような男だ」と表現している。

あこがれの指揮官のもと、さらなる進化を遂げるボーヴェ。アッズーリ招集が待たれる逸材だ。

 

 

ウセム・アワール

フランスに移住していたアルジェリア人の両親の元生まれたウセム・アワールは、11歳のころフランス屈指の名門オリンピック・リヨンのアカデミーに入団。そのままトップチームデビューを果たしている。

プロデビューの翌シーズン、アウアーはリヨンにとって象徴的な背番号である8番(クラブのレジェンド、ジュニーニョ・ベルナンプカーノが着用していた)を任されると、当時まだ19歳にして主力に定着、6ゴール5アシストの活躍で期待に応えた。

その後もリヨンで戦い、7シーズン通算28ゴール24アシストを記録している。

しかしながら、負傷離脱が重なったことなどもあって22-23にはベンチ要因に降格、2023年末で切れる契約を更新することはかなわず、昨夏フリーでローマに加入している。

 

代表キャリアでは、ユース年代からずっとフランス代表としてプレーし、親善試合でフランスのA代表としても1試合出場している。しかしながら、その後両親の母国アルジェリアへ代表変更を決断、今冬のアフリカ・ネイションズカップのメンバーにも選出されている。

 

アワールはリヨン時代、守備的MFから攻撃的MFまで中盤すべてのポジションで起用されたほか、左ウイングとしてもプレーした。中盤のほぼ全域に対応するユーティリティーである。

しかしながら、アワールを分類するとしたらやはり攻撃的MFということになるだろう。得意なエリアは明確に前寄りだ。

sofascoreより、19-20のアワールのヒートマップ。敵陣左寄りのエリアで色が濃くなっている。

左サイドのハーフスペースやタッチライン際でボールを受け、そこから右足でカットインしつつクオリティを発揮するのがアワールの得意な形。これが可能になるのなら、スタートポジションはウイングでも、インサイドハーフでも、トップ下でも構わないのだろう。

アワールの武器のひとつになっているのがドリブルだ。

FBref.comより抜粋。Take-Onとはドリブル突破のこと。アワールは3度リーグアンのドリブル突破数でトップ10入りしている。

ドリブル突破というとウイング的なサイドをえぐる突破だと思われそうなので補足しておくと、アワールが得意とするのはボールを奪いに来た相手DFを剥がすドリブルだ。

ダブルタッチや急加速、重心移動によるフェイントで相手を1枚かわし、そこからラストパスを供給するなど次のプレーにつなげていくのだ。

 

さらに、アワールは得点能力も兼ね備えている。

understats.comより、アワールのゴールに関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

上の図を見ると、ペナルティスポットよりも前に多くの点が分布していることが特徴的だ。彼がMFであることを勘案するとなおさらである。

アワールの得点の多くは、オフ・ザ・ボールの動きでゴール前に侵入しラストパスを受けて決めたものである。ボールを持ってこそ輝くプレースタイルを持っていながら、ゴール前でフィニッシャーにもなれるプレーヤーは貴重だ。まさにMF分類マトリックスにおける「モダン10番」の典型である。

 

↓ カリアリ戦の得点シーン。CBからスッと離れてフリーになった場面は彼のうまさが凝縮されている。

 

また、非保持時のタイトな守備もアワールの持ち味だ。プレッシング時には精力的に相手に対して距離を詰め、タックルを仕掛けていく。

今季のローマにおいても、90分あたりのタックル数はボーヴェに次ぐ2位だ。

守備においても一定の貢献を果たせるからこそ、守備的なポジションでの起用歴があるのだろう。

 

ジュニーニョやジダンを参考にしていると語ったことがあるアワール。その言葉通り、ボールを持ってこそ輝く10番タイプでありながら、同時にゴール前に侵入するダイナミズムと守備に対する献身性を兼ね備えている。特異なプレーヤーだ。

 

そんな彼だが、まだローマでは活躍しきれずにいる。

コンディションが上がりきっておらず、本来のクオリティをまだ発揮できていないのは気がかり。特に、昨シーズンから負傷離脱が急激に増加しているのは気になるポイントだ。

transfermarktより、アワールのキャリアを通した負傷履歴。22-23から急激に負傷離脱が増加している。

 

また、ローマのライバルたちが強力である、という側面もある。

攻撃をデザインできるタイプの選手であるアワールだが、その点ではもう一段クオリティが高いディバラがいる。タックラーという点ではボーヴェがいるし、ゴール前でターゲットになるタスクに関しては、より高さがあるクリスタンテがいる。ダイナミズムを兼ね備えるタイプという点では、キャプテン・ペッレグリーニも同じである(彼とはプレーエリアがほぼ重なっている)。

彼らを押さえて主力に定着するためには、目に見える結果を残すしかないだろう。

 

シーズン開幕当初は試合出場が多かったアワールだが、負傷やアフリカネイションズカップによる離脱が重なっている間に指揮官が交代しチームが結果を残し始めたという状況下で完全に出遅れている。

現在はカップ戦でアピールする機会を得ている状態だ。ここから這い上がれるか注目したい。

 

 

 

ウイング

マトリックス上で見ると、非常にバラつきがあるローマのウイング陣だが、両サイドで分けてみると共通点が見つかる。

右サイドのディバラとバルダンツィはともにフィニッシャーとチャンスメーカーの中間的なプレースタイルを持っている、いわゆるトップ下型のウインガー。インサイド寄りで持ち味を発揮する。

左サイドのエル=シャーラウィとザレフスキはともにアウトサイドを得意とするプレーヤーで、モウリーニョ政権時にはWBも務めていたタイプだ。その中でもエル=シャーラウィはフィニッシャー、ザレフスキはチャンスメーカーである。

アウトサイドを得意とする彼らは、スピナッツォーラ起用時にプレーエリアが重なる。ダブル突撃作戦をとるのも面白い一方で、インサイドでのプレーが得意なペッレグリーニやアワールを起用して棲み分けを行うという策も考えられるだろう。

 

パウロ・ディバラ

アルゼンチンで生まれ育ったパウロ・ディバラは、アルゼンチン2部のインスティテュートでプロデビューを果たす。当時17歳ながら初年度から40試合に出場し17ゴールを挙げる活躍を見せたディバラは、翌年にセリエAのパレルモに引き抜かれる。当時、マウリツィオ・ザンパーニ会長は「新たなアグエロを獲得した」として喧伝した。

数シーズンの適応期間を経て、ディバラが本格ブレイクしたのは14-15シーズン。当時20歳にして13ゴール10アシストを記録する活躍を見せ、絶対王者ユベントスに引き抜かれたのだった。

その後7シーズンにわたってユベントスを支えたディバラは、2022年、フリーでASローマに加入。ここでも攻撃の絶対軸として君臨し、現在に至っている。

 

ディバラは渡り歩いてきた各クラブで攻撃の絶対的な中心に据えられることで最大限の輝きを発揮してきた

そのプレースタイルは、左サイドからカットインしつつ、「右斜め45度」の位置から攻撃の最終局面をデザインするというもの。ペナ角あたりの位置でディバラが前を向けば、なんだってできる。

左足インフロントから放つミドルシュートは芸術品。ファーと見せかけてニアを抜くのも得意だ。味方がいい動き出しを見せていればラストパスを供給、フィニッシュを促す。ルカクという相棒を得た今季は、ルカクに当てたところから始まる細かい連係で中央を打開するという選択肢も加わっている。

センターフォワードとしても、攻撃的MFとしても、ウイングとしても違和感があり、どのポジションに当てはめるかが難しいのがディバラという選手なのだが、カットインからの右斜め45度を得意とするプレースタイルゆえに、選手分類マトリックスに当てはめるにあたってはウイングとして分類したい。

sofascoreより、今季のディバラのヒートマップ。右のアウトサイド、およびハーフスペースに最も濃い色がついていることがわかる。モウリーニョ政権時は2トップの一角でプレーしていたディバラだが、そこからさかんに右サイドに流れてプレーしていた。

ウイングを分類するにあたって、軸のひとつにフィニッシャーorチャンスメーカー、というものを置いた。ディバラはいずれのバランスもとれているため、選手分類マトリックス上の「マスターWG」に分類できる。しかしながら、どちらかと言えばフィニッシャー寄りだ。セリエAにやってきてからの成績で、ディバラは常にゴール数がアシスト数を上回っている。

前述のミドルシュートだけでなく、タイミングよくゴール前に走り込んで折り返しを足元に引き出すプレー、ファーサイドで合わせるボレーシュート(セリエAにおけるボレーシュートの第一人者だ)、自らドリブルで切り込んでのフィニッシュなど得点パターンは非常に多彩だ。

加えてプレースキッカーとしても一流。PKキッカーに加え、直接フリーキックでも得点を計算できるのだ。

 

斜め45度を最も得意とする「ハーフスペースの住人」たるディバラには、2トップの一角でプレーさせるにしろウイングで起用するにしろ、そこからポジションを離れる自由を与える必要がある。

デ・ロッシ体制移行後最初の数試合はセンターレーンでのプレーをより強く求められて、一時的に勢いが落ちたのは偶然ではないだろう。

ピッチ中央で相手を背負ってキープするプレーは得意ではないし、前を向いたとしてもハーフスペースよりも角度がないため、センターレーンではディバラの得意なプレーが生きにくい(26節トリノ戦ではモウリーニョ時代と同じ2トップの一角からハーフスペースに流れることを許され、ハットトリックを記録したのも偶然ではないだろう)。

チームの攻撃を一手に引き受けることで輝くファンタジスタ、ディバラ。彼のプレーには一見の価値ありだ。

 

 

ステファン・エル=シャーラウィ

スイス系イタリア人の母とエジプト人の父との間に生まれたエル=シャーラウィ。その出自から、「ファラオーネ(エジプト語で『王』の意)」の愛称で親しまれている。

ジェノアで16歳にしてデビューすると、セリエBのパドバにレンタルされた10-11シーズンにブレイクしてセリエB年間最優秀選手賞を受賞。これに注目したACミランに買い取られたファラオーネは、5シーズンをロッソネロで過ごす。

12-13シーズンには19歳にして16ゴール5アシストを記録し(このシーズンのチーム得点王だ)、世界でも有数の若手アタッカーとして注目を浴びた。しかしながら、その後度重なる負傷に泣かされ思ったようなキャリアを築けなかったのが残念だ。

モナコへのレンタルを1シーズン経て2016年1月にはASローマへ移籍。途中2年間上海申花でプレーしたものの、再度ローマへ戻って現在を迎えており、通算でのプレーは今季で7シーズン目だ。

 

エル=シャーラウィが最も持ち味を発揮するのが広大なスペースが広がった場面だ。要するにカウンターである。

ブレイク当初からスピードスターとして鳴らし、クリスティアーノ・ロナウドとも比較されたエル=シャーラウィ。31歳になった現在もスプリント能力は健在だ。

スピードに乗った状態でボールを持ち、ドリブルで仕掛けていくのがエル=シャーラウィの十八番である。

トップスピードでもボールタッチが乱れず、常に足元にボールを置きながら、細かくドリブルのコースを変更していく。大きなフェイントや切り返しを使わずに、コース取りの微妙な変化だけで相手の間を縫っていく独特なドリブルが彼の持ち味だ。

今季ここまでチームで2番目のドリブル突破試行数を記録している。

 

↓ 得意のドリブル突破からアシストした場面。

 

また、エル=シャーラウィはアシストよりも得点が多いタイプのプレーヤー。ローマでは7シーズン半で公式戦通算58ゴールを記録している。

下の動画は3年半前のものだが、エル=シャーラウィの得点パターンが把握しやすい。

ひとつはスピードを活かしてライン裏に飛び出してからのフィニッシュ。もうひとつが右足でカットインしてからのコントロールショットだ。

 

また、非保持時の守備への献身性もエル=シャーラウィの持ち味だ。

FBref.comより。エル=シャーラウィは今季ディフェンシブサードで10回のタックルを記録している。これは攻撃的なポジションの選手の数値としては非常に多い。

非常に献身的にプレスバックを行い、サイドバックをサポートする姿勢を見せるエル=シャーラウィ。自分が1対1で対応することになったとしても、持ち前のスピードを活かして簡単に振り切られず、ついていける。

こうした能力があるため、モウリーニョ前監督からは左のウイングバックとしても起用された。

本来のポジションである左ウイングだけでなく、2トップの一角でもウイングバックでも機能するユーティリティー性もまたエル=シャーラウィの持ち味のひとつだ。

 

↓ エル=シャーラウィのボール奪取から生まれた得点シーン。

 

能力値が高いエル=シャーラウィなのだが、彼はデビュー当初期待されたほどのプレーヤーにはなれずにいる。

それは、広大なスペースを得られる場面では非常に輝く反面、相手に引かれてスペースがない局面だと凡庸な選手に成り下がってしまうからだ。

エル=シャーラウィのドリブルは非常に直線的であるという特性上、短い距離で相手をかわしきることが難しい。スピードに乗っていなければ、コースの変更だけで狭いスペースを打開することは難しいのだ。

そのため、引かれた相手を打開することが難しいのである。

また、エル=シャーラウィはクロスボールがあまりうまくない。利き足ではない左足はもちろん、カットインしてから右足で放つクロスボールもそこまで高精度ではない。そのため、エル=シャーラウィのアシストはクロスボールによってではなく、グラウンダーの折り返しからのものがほとんどになっている。

そして、インサイドに入ってのプレーもあまり得意ではない印象。360度相手に囲まれた状態で素早くボールを離すプレーが得意ではなく、かといってボールを守れるフィジカルにも乏しいのだ。

 

このように、プレースタイルはチャンスメーカーというよりもフィニッシャー寄り、アウトサイドでのプレーを得意としてカウンターで最も輝く。という特徴から、「カウンターエース」に分類できるだろう。

これからキャリア終盤に向かうにあたって、このままローマでのプレーを継続するのか、それともプロビンチャのエースとして第2の春を謳歌するのか、注目したい。

 

 

ニコラ・ザレフスキ

母国の共産主義政権に反対してイタリアに移住したポーランド人の両親のもと、イタリアで生まれ育ったニコラ・ザレフスキ。サッカーを始めたのは他のクラブだったが、その後すぐにブルーノ・コンティに見いだされて9歳の頃ローマの下部組織に入団。以後、ローマ一筋でプレーしてプロデビューに至る。

生まれも育ちもイタリアだが、代表は一貫してポーランドを選択。ユース年代から名を連ね続け、2022ワールドカップにも出場するなどすでにA代表に定着している。

ローマユースでは10番を背負ってトップ下でプレーしていたザレフスキだが、モウリーニョ政権では攻撃的MFのポジションがなかった。そこで、左のウイングバックとして継続的に起用されてきた。

彼のフィジカル的な武器は、爆発的なスプリント能力だ。これを活かしたシンプルに縦に突破してクロスボール、というプレーでも十分に脅威となる。

 

ザレフスキの縦突破からのアシスト

 

しかしながら、その縦突破をにおわせながら切り返しと緩急を駆使して仕掛けていくのがザレフスキのプレースタイルだ。

両利きであるザレフスキだが、基本的には右足でボールを持ってカットインの姿勢を見せる。縦を警戒してきた相手の間を割って入り、斜めに侵入していくプレーも彼の持ち味だ。

途中出場が多いザレフスキだが、ドリブルに関するスタッツを90分あたりで見るとチーム内でもトップクラスの数値を記録しており、限られた時間で積極的な姿勢を見せていることが見て取れる。

現在、アウトサイドからのドリブル突破に特化したプレースタイルになっている印象のザレフスキ左右のウイングバック、サイドバックをこなすサイドのスペシャリスト感がある。

sofascoreより、今季のザレフスキのヒートマップ。アウトサイドレーンに特化したプレースタイルがよくわかる。

しかしながら、本来は攻撃的MFとしてトップ下でプレーしており、3センターの一角でもプレーできるなどユーティリティー性を持つ。個人的には、ハーフスペースと往復しながらもっといろいろなことができそうに感じる。異なる戦術的文脈に置かれたザレフスキを見てみたいものだ。

 

これまでユース代表の常連としてプレーし、ゴールデンボーイウェブ2022にも選出されるなどその才能を高く評価されてきたザレフスキ。しかしながら、まだまだ課題も多い。

まずは、突破した後のクロスボール。成功率があまり高くなく、精度をさらに磨いて行く必要がある。そうすれば、アシスト数という目に見える結果がついてくるのではないか。

また、組み立てに絡むプレーにも改善の必要がある。CBから横パスを受けるときにサポート体制をとるのが若干遅く、体を開いて角度を作るといった細かいプレーも身についていない印象。ゆえに、相手のサイドアタッカーからのプレッシャーを受けて、雑にロングボールを蹴りだしてしまう場面が散見される。テクニックと戦術眼を兼ね備えているだけに、もっと組み立てにも絡めるタレントなはずだ。

そして、フィジカルコンタクトにも課題を残す。サッカー選手としては小柄な部類に入るザレフスキは、コンタクトプレーで相手DFに吹き飛ばされる場面が散見される。個人的には、ここがピッチ中央でプレーする際の障壁になっている印象だ。

 

昨季はスタメン出場の機会が多かったザレフスキだが、今季は一転してここまで先発7試合のみにとどまっている。停滞感が漂い始めているが、ここを打開できればさらに一皮むけるだろう。

デ・ロッシ体制移行後はより攻撃的なポジションで試されているザレフスキ。目に見える結果でアピールしていきたいところだ。

 

 

トンマーゾ・バルダンツィ

トンマーゾ・バルダンツィはエンポリが生んだ新たな至宝だ。8歳の時エンポリに加入して以降、エンポリ一筋で育ってきた。

世代別代表に常に名を連ねながら順調にカテゴリーを上げていったバルダンツィは、20-21シーズンに本格的に日の目を浴びることになる。2020年10月にトップチームデビューを飾ると、同シーズンのカンピオナート・プリマヴェーラ1においてエンポリを優勝に導き、自身はMVPに選出されたのだ。

翌21-22にトップチームに昇格すると、22-23には完全にトップ下の定位置を確保。攻撃を司り、バルダンツィのチームと言われるほどにエンポリの中心となった。オフシーズンのU-20ワールドカップでイタリアの準優勝に貢献したこともあってイタリア中のトップクラブから獲得を狙われたものの残留、半年を経て今冬ローマに加入した。

 

バルダンツィの武器は積極果敢なドリブルである。ボールを持ったらまずドリブル、少しでも前にボールを運ぼうとするアグレッシブな姿勢が彼のトレードマークだ。

 

↓ バルダンツィのプレー集。常にドリブルしていることがよくわかると思う。

 

同じ左利きのファンタジスタであるディバラにあこがれていると語り、ソックスをふくらはぎの中間あたりまで下げるスタイルも真似するバルダンツィ。だが、そのプレースタイルはどちらかと言うとパプ・ゴメスに近いと思う。

バルダンツィの基本的なプレーエリアは中央3レーン。ボールがあるサイドに近づいて行っては足元にボールを引き出し、そこから中央、サイドと状況に応じて最適なコースを選び取ってドリブルで運んでいく。

170cmと小柄ながらグイグイと進んでいく推進力あふれるドリブルと、そこからの積極的なミドルシュートはまさにパプ・ゴメスを思い出させる。

sofascoreよち、22-23のバルダンツィのヒートマップ。ピッチ全域にプレーエリアが広がっており、特にハーフスペースからペナルティエリア手前までの色が濃いことがわかる。

バルダンツィはそこまでスプリント能力がないものの、常に自身のトップスピードでボールを運んでいく。その中で適切なコースを選んでいき、相手が前に立ちはだかっていれば重心の逆を突きながら止まることなく進んでいく。フェイントは必要に応じた最低限のもののみで、するすると中央エリアを抜けていく。

高速ドリブルの中での判断力、相手が足を出してきたときに見せる細かいダブルタッチは絶品だ。

そのプレーエリアから「トップ下型WG」としたが、実際のプレースタイル的には極めて「ゴリブラー」に近い

 

このワンウェポンは強力極まりないのだが、現状それしかプレーに選択肢がなく短調である、という側面もある。

常にドリブルを第一選択肢に置くバルダンツィは、悪く言えば球離れが悪い。時に味方を使ったほうがいい場面も見受けられる。

自身のドリブルの鋭さを際立たせるためにも、うまく味方を使ってワンツーでの突破を織り交ぜるなどプレーに幅を持たせれば、相手にとってより脅威となることは間違いない。

また、ミドルシュートに対して積極的なバルダンツィだが、その前のドリブルにパワーを使うためか、なかなか得点につながっていない。パワーが乗らず、GKにセーブされる場面も目立つ。

バルダンツィが得点するのはむしろ、ゴール前の空いたスペースに侵入し、味方からのラストパスを受けるようなシーンであることがほとんどだ。

先ほどのヒートマップを見ると、ペナルティエリア内にヒートマップがあまり存在していない。せっかくスペースを突くセンスがあるのだから、より積極的にボールの受け手になってもよさそうなものだ。

 

中央エリアでのプレーを得意とするバルダンツィだが、4-3-3を採用する現在のローマにトップ下のポジションは存在しない。ウイングのポジションから解放されることを許されるためには、ローマで王様としてふるまうにふさわしいクオリティの持ち主であることを証明しなければならないだろう。さらに上に行くためにはプレーの幅も広げたいところだ。

まだまだ伸びしろがある20歳の宝石、バルダンツィ。イタリアのメッシになれるだけのポテンシャルを持っているだけに、どのように成熟していくのかが楽しみだ。

 

 

 

センターフォワード

FW分類マトリックス上ではかなり離れた位置にいるルカクとアズムン。

ポストプレーにおいては前線もしくはサイドを得意とするルカクとライン間を得意とするアズムン、得点においては仕掛けながらのフィニッシュを得意とするルカクとゴール前での勝負を得意とするアズムン。それぞれ持ち味が全く異なる。

それゆえに、彼らは同時起用されても共存できていた。前モウリーニョ政権時代には、後半途中から投入されたアズムンとルカクが2トップを組む場面が多くみられたが、それぞれの棲み分けができていたためにチームとしての機能性を落とさずに2トップが機能した。FW2枚共存のいい例だ。

デロッシ政権移行後は基本的に1トップが採用されている。両者強みが異なり、どちらを起用するかでチームの攻撃スタイルも変わってくるはず。今まで以上にデロッシの選択に注目が集まるところだ。

ロメル・ルカク

ロメル・ルカクはコンゴ人の両親のもと、ベルギーで生まれた。

プロサッカー選手であった父の影響を受けてベルギーでサッカーを始め、名門アンデルレヒトのユースを経て16歳3か月でプロデビューを果たした。すると、初年度から14ゴールを挙げて弱冠17歳にしてベルギーリーグ得点王となってしまった、という怪童である。

その後、エバートンやマンチェスター・ユナイテッドを中心にイングランドでキャリアを積み重ねたルカク。徐々にトーンダウンした後、2019年に加入したインテルで全盛期を迎えることになる。

2シーズンで公式戦95試合に出場、64ゴール17アシストを記録し、20-21シーズンのセリエA最優秀選手となったのだ。

翌年満を持して加入した古巣チェルシーでは期待を裏切り、昨年はインテル復帰、今季はローマに活躍の舞台を移すなどキャリアが定まらずにいるが、まだ30歳。もう一花咲かせられる年齢だ。

ルカクはベルギー代表の歴代最多得点者でもあり、113試合で83ゴールを積み上げている。ちなみに、2位は昨年引退したアザールの33ゴール。ルカクが頭3つ抜けている。ベルギーの歴史に名を刻むストライカーだ。

ちなみに、菊地亜美に似ている。

そんなルカクの特徴は何なのか。

まずはポストプレーについて。見るからに大柄なルカクは、相手を背負って時間を作るポストプレー、いわゆる背負いポストが非常に得意であるように見える。

実際、一度ルカクに背負われると彼の前に出ることができるDFはいない。しっかりと抑え込んでボールを収め、確実に基準点となる。いや、それどころか相手を背負ったままグイグイと押し込み、強引に深さをとることだってできる。

圧倒的なパワーにより起点となるルカク。ローマは彼めがけて長いボールを送り込むことを戦術として組み込んでいる。

↓ ルカクの強引な深さ取りにより生まれた得点

しかし、彼が本当に輝くのはワイドポストを行った時だ。右サイドに流れてボールを収め、そこから持ち前のパワーと爆発的なダッシュ力を活かして強引にDFを振り切り、左足でカットインしながら仕掛ける

という一連の流れを戦術として組み込んだコンテの采配によって、ルカクは20-21にセリエA最優秀選手を獲得する活躍を見せる。カットインしながら仕掛け、自らフィニッシュするか、横に構えるラウタロにアシストを決めるかを選択できる環境が整っていた。

これだけ得点を重ねているルカクだから、フィニッシュセンスは抜群だ。左足インフロントでコースを狙うシュートが得意技なのだが、普通の選手よりもシュートにスピードとパワーが乗るため止められにくい。

相手が前に立っていてもゴールを射抜けるセンスを持っており、ミドルフィニッシュタイプに分類できるだろう。

また、左足だけでなく右足でもほとんど精度が変わらないフィニッシュができるのも強力だ。

understats.vomより、直近5シーズンにおけるルカクのゴールについて、シュートを打った位置とゴール期待値の大きさをピッチ上にプロットしたもの。

上図を確認してみると、ペナルティスポットよりも前から打った期待値の大きいシュートと、それよりも遠く、期待値の小さいフィニッシュの数があまり変わらないことがわかると思う。

ルカクが相手が前に立っている状態からのフィニッシュによって多くの得点を挙げていることがよくわかるのではないだろうか。

↓ インテル時代の全ゴール

さらに、ルカクは味方を活かすプレーにも秀でている。ポストプレー時はもちろんのこと、ゴールに向かって仕掛けていく場面でも冷静に味方を使おうとする。時にシュートを打った方がよかったんじゃないかという場面があるくらいだ。

それゆえ、ルカクは毎シーズン少なくないアシストを積み上げてきているのだ。

↓ ルカクが細かい連係の中でも機能できることを示した場面。

総合的な能力が非常に高いルカク。だが、ここ数シーズンは本領を発揮できずにいる。

その最大の原因が、メンタル面の充実度がプレーに大きく影響することらだと思う。

移籍に関する発言がバラバラである(インテル・チェルシー両方を上げる、今年に入ってサウジリーグを賞賛するなど)、インテル公式インスタグラムがルカクがゾマーにストップされた画像をアップしているのを見てフォローを解除するなど、今っぽい言い方ではメンヘラな一面がある。

実際にプレーを見てみても、チームの絶対的中心に据えてもらったシーズンには活躍しているものの、強力な競争相手がいると本領を発揮できないことがほとんど。メンタル面とプレー面の連動性が非常に高いと感じる。ここが、世界のトップ・オブ・トップに上り詰めるにあたって障壁となってしまっている。

また、プレー面でいえば、長身のわりに空中戦が得意ではなく、ヘディングの技術もそこまで高くない印象だ。かといって相手のマークを外す細かい動きを得意としているわけでもないため、クロスボールに合わせて決めるゴールがそこまで多くないのだ。

あくまでも前向きに仕掛けたときに怖さを発揮する、地上戦を得意とするストライカーという印象である。

重心を低くしてカウンターを志向し、その絶対的中心にルカクを据えた20-21シーズンには、世界トップクラスの輝きを見せたルカク。同じような環境に今後出会えるのか、それとも自らの殻を破るのか…。まずは今季ローマでどこまで得点を積み重ねるのか見てみたい。

サルダル・アズムン

アズムンはイラン代表において、英雄アリ・ダエイに次ぐ歴代2位の得点数を誇る国民的スターだ。19歳でデビューして以降80試合51ゴール14アシストという驚異的な数字を記録している。ちなみに、歴代得点数第3位は来季からのインテル加入が内定いているとされるメフデイ・タレミだ。

母国でサッカーを始めたアズムンは、アンダー世代に常に名前を連ねてきた。ユース年代ではウイングやトップ下として起用されていたことから「イランのメッシ」と呼ばれていた。

これに目を付けたのがロシアのルビン・カザンだった。ユース在籍時に引き抜かれたアズムンはロシアでプロデビュー。その後、ロシアで3クラブを渡り歩いたあと、ドイツのレバークーゼンで1シーズンを過ごし、昨夏ASローマに加入している。

ちなみに、父親がバレーボール選手だった影響でバレーボールも同時にプレーしていたようで、バレーボールのU-15イラン代表に選出されるほどの腕前だったようだ。

2019アジアカップでは乱闘を起こし、名言「アズムンはサッカーをやってない」を生み出したことから悪童のイメージが付きまとうと思われる。だが、2022年にはワールドカップ前に代表追放のリスクを冒してもイラン政府の女性弾圧に抗議するなど人格者な一面も見せる。

ハイセンがフロジノーネファンを煽って警告を受けた後に得点したアズムンがハイセンに代わって謝罪の意を表し、ゴールパフォーマンスをしなかった一幕は記憶に新しい。アズムンの人間性については、日本人が一番勘違いしている部分ではないだろうか。

アズムンのプレー面を見ていきたい。

フィニッシュに関しては、下の画像を見てもらいたい。

udnerstatsより、アズムンの得点に関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円の大きさで表現したもの。

アズムンのフィニッシュがペナルティエリア内、それもゴールエリアの幅かつペナルティスポットよりも前のエリア、平たく言えばゴール前に集中していることがよくわかる。ルカクのそれと比較すると差は一目瞭然だ。

つまり、アズムンは得点に関して言えば典型的なボックスストライカーと言える。

アズムンは非常に空中戦に強い。跳躍力がある上、頭でミートする技術やコースを狙う技術も高いのだ。ここは明確にルカクに対して優位性を持っているところだ。

そういった選手は得てしてマークを外す動きは最低限にとどめてゴール前で待機しているものだが、アズムンはボールを呼び込む動き出しも欠かさない。そのため、ゴール前に飛び込みながら合わせるような得点が多くなっている。

また、こぼれ球に対する反応も鋭い。相手よりも先んじて詰める場面が多くみられる。

↓ ローマ加入までのアズムンのクラブシーンでの全ゴール集

一方、ポストプレーに関しては手前に引いて足元にボールを引き出したがる。大きく中盤に引いてくるわけではないが、相手DFラインとMFラインのライン間に顔を出してくさびを引き出す、トップ下的なボールの受け方をするのが特徴的だ。

狭いエリアでボールを受けても、密集地帯を抜け出せるテクニックを持っているので、味方と連携して崩しの局面に絡むこともできる。ここらへんは元2列目らしい側面だ。

↓ アズムンがタイミングよく引いてくさびを引き出し、ワンタッチでルカクに預けたことにより攻撃のスイッチを入れ、得点に至ったシーン。

ストライカー的な側面と、2列目的な側面を併せ持つアズムン。ゆえにルカクと2トップを組んでも共存できていたわけだが、そのプレースタイル由来の課題も併せ持っている。

ロシアリーグ時代のヒートマップ。中盤でもボールに絡んでいるが、最終的にはゴール前にヒートマップが多く分布していることが特徴的だ。
今季のヒートマップ。最終ライン手前でのボールタッチが多い一方で、ゴール前に侵入できていないことがうかがえる。

2列目的に機能した後、最も得意なゴール前でのプレーに接続する部分で、全盛期を比較すると問題を抱えているのだ。

モウリーニョ政権時ルカクとともにプレーしていたからなのか、それともアズムン自身のコンディションの問題なのかはわからないが、ゴール前で勝負するという最も得意なプレーが見せられていないことは間違いない。

デ・ロッシ政権が1トップを採用するようになったことで、ここにどんな変化が生まれてくるか注目だ。

また、非保持時のプレスの掛け方も気になる。相手に対して向かっていく中でコースを切ることができておらず、簡単にはがされてしまう。彼のプレスの拙さは、ここまでブロック数ゼロというスタッツがよく物語っている。これでは、チームとして的を絞ることができない。

〈90分あたりタックル総数/勝利数〉

  • アズムン:1.33/0.89
  • ルカク :0.14/0.09

と、ルカクと比較しても守備意識は非常に高い。それだけに、技術的な部分でもったいなさが目立つ。

ここらへんは、カルチョで多くを学び取って成長してもらいたいところだ。

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