
アズムンはイラン代表において、英雄アリ・ダエイに次ぐ歴代2位の得点数を誇る国民的スターだ。19歳でデビューして以降80試合51ゴール14アシストという驚異的な数字を記録している。ちなみに、歴代得点数第3位は来季からのインテル加入が内定いているとされるメフデイ・タレミだ。
母国でサッカーを始めたアズムンは、アンダー世代に常に名前を連ねてきた。ユース年代ではウイングやトップ下として起用されていたことから「イランのメッシ」と呼ばれていた。
これに目を付けたのがロシアのルビン・カザンだった。ユース在籍時に引き抜かれたアズムンはロシアでプロデビュー。その後、ロシアで3クラブを渡り歩いたあと、ドイツのレバークーゼンで1シーズンを過ごし、昨夏ASローマに加入している。
ちなみに、父親がバレーボール選手だった影響でバレーボールも同時にプレーしていたようで、バレーボールのU-15イラン代表に選出されるほどの腕前だったようだ。
2019アジアカップでは乱闘を起こし、名言「アズムンはサッカーをやってない」を生み出したことから悪童のイメージが付きまとうと思われる。だが、2022年にはワールドカップ前に代表追放のリスクを冒してもイラン政府の女性弾圧に抗議するなど人格者な一面も見せる。
ハイセンがフロジノーネファンを煽って警告を受けた後に得点したアズムンがハイセンに代わって謝罪の意を表し、ゴールパフォーマンスをしなかった一幕は記憶に新しい。アズムンの人間性については、日本人が一番勘違いしている部分ではないだろうか。
アズムンのプレー面を見ていきたい。
フィニッシュに関しては、下の画像を見てもらいたい。

アズムンのフィニッシュがペナルティエリア内、それもゴールエリアの幅かつペナルティスポットよりも前のエリア、平たく言えばゴール前に集中していることがよくわかる。ルカクのそれと比較すると差は一目瞭然だ。
つまり、アズムンは得点に関して言えば典型的なボックスストライカーと言える。
アズムンは非常に空中戦に強い。跳躍力がある上、頭でミートする技術やコースを狙う技術も高いのだ。ここは明確にルカクに対して優位性を持っているところだ。
そういった選手は得てしてマークを外す動きは最低限にとどめてゴール前で待機しているものだが、アズムンはボールを呼び込む動き出しも欠かさない。そのため、ゴール前に飛び込みながら合わせるような得点が多くなっている。
また、こぼれ球に対する反応も鋭い。相手よりも先んじて詰める場面が多くみられる。
↓ ローマ加入までのアズムンのクラブシーンでの全ゴール集
一方、ポストプレーに関しては手前に引いて足元にボールを引き出したがる。大きく中盤に引いてくるわけではないが、相手DFラインとMFラインのライン間に顔を出してくさびを引き出す、トップ下的なボールの受け方をするのが特徴的だ。
狭いエリアでボールを受けても、密集地帯を抜け出せるテクニックを持っているので、味方と連携して崩しの局面に絡むこともできる。ここらへんは元2列目らしい側面だ。
↓ アズムンがタイミングよく引いてくさびを引き出し、ワンタッチでルカクに預けたことにより攻撃のスイッチを入れ、得点に至ったシーン。
ストライカー的な側面と、2列目的な側面を併せ持つアズムン。ゆえにルカクと2トップを組んでも共存できていたわけだが、そのプレースタイル由来の課題も併せ持っている。


2列目的に機能した後、最も得意なゴール前でのプレーに接続する部分で、全盛期を比較すると問題を抱えているのだ。
モウリーニョ政権時ルカクとともにプレーしていたからなのか、それともアズムン自身のコンディションの問題なのかはわからないが、ゴール前で勝負するという最も得意なプレーが見せられていないことは間違いない。
デ・ロッシ政権が1トップを採用するようになったことで、ここにどんな変化が生まれてくるか注目だ。
また、非保持時のプレスの掛け方も気になる。相手に対して向かっていく中でコースを切ることができておらず、簡単にはがされてしまう。彼のプレスの拙さは、ここまでブロック数ゼロというスタッツがよく物語っている。これでは、チームとして的を絞ることができない。
〈90分あたりタックル総数/勝利数〉
- アズムン:1.33/0.89
- ルカク :0.14/0.09
と、ルカクと比較しても守備意識は非常に高い。それだけに、技術的な部分でもったいなさが目立つ。
ここらへんは、カルチョで多くを学び取って成長してもらいたいところだ。