【イタリアのパプ・ゴメス】トンマーゾ・バルダンツィのプレースタイル分析

トンマーゾ・バルダンツィはエンポリが生んだ新たな至宝だ。8歳の時エンポリに加入して以降、エンポリ一筋で育ってきた。

世代別代表に常に名を連ねながら順調にカテゴリーを上げていったバルダンツィは、20-21シーズンに本格的に日の目を浴びることになる。2020年10月にトップチームデビューを飾ると、同シーズンのカンピオナート・プリマヴェーラ1においてエンポリを優勝に導き、自身はMVPに選出されたのだ。

翌21-22にトップチームに昇格すると、22-23には完全にトップ下の定位置を確保。攻撃を司り、バルダンツィのチームと言われるほどにエンポリの中心となった。オフシーズンのU-20ワールドカップでイタリアの準優勝に貢献したこともあってイタリア中のトップクラブから獲得を狙われたものの残留、半年を経て今冬ローマに加入した。

 

バルダンツィの武器は積極果敢なドリブルである。ボールを持ったらまずドリブル、少しでも前にボールを運ぼうとするアグレッシブな姿勢が彼のトレードマークだ。

 

↓ バルダンツィのプレー集。常にドリブルしていることがよくわかると思う。

 

同じ左利きのファンタジスタであるディバラにあこがれていると語り、ソックスをふくらはぎの中間あたりまで下げるスタイルも真似するバルダンツィ。だが、そのプレースタイルはどちらかと言うとパプ・ゴメスに近いと思う。

バルダンツィの基本的なプレーエリアは中央3レーン。ボールがあるサイドに近づいて行っては足元にボールを引き出し、そこから中央、サイドと状況に応じて最適なコースを選び取ってドリブルで運んでいく。

170cmと小柄ながらグイグイと進んでいく推進力あふれるドリブルと、そこからの積極的なミドルシュートはまさにパプ・ゴメスを思い出させる。

sofascoreよち、22-23のバルダンツィのヒートマップ。ピッチ全域にプレーエリアが広がっており、特にハーフスペースからペナルティエリア手前までの色が濃いことがわかる。

バルダンツィはそこまでスプリント能力がないものの、常に自身のトップスピードでボールを運んでいく。その中で適切なコースを選んでいき、相手が前に立ちはだかっていれば重心の逆を突きながら止まることなく進んでいく。フェイントは必要に応じた最低限のもののみで、するすると中央エリアを抜けていく。

高速ドリブルの中での判断力、相手が足を出してきたときに見せる細かいダブルタッチは絶品だ。

そのプレーエリアから「トップ下型WG」としたが、実際のプレースタイル的には極めて「ゴリブラー」に近い

 

このワンウェポンは強力極まりないのだが、現状それしかプレーに選択肢がなく短調である、という側面もある。

常にドリブルを第一選択肢に置くバルダンツィは、悪く言えば球離れが悪い。時に味方を使ったほうがいい場面も見受けられる。

自身のドリブルの鋭さを際立たせるためにも、うまく味方を使ってワンツーでの突破を織り交ぜるなどプレーに幅を持たせれば、相手にとってより脅威となることは間違いない。

また、ミドルシュートに対して積極的なバルダンツィだが、その前のドリブルにパワーを使うためか、なかなか得点につながっていない。パワーが乗らず、GKにセーブされる場面も目立つ。

バルダンツィが得点するのはむしろ、ゴール前の空いたスペースに侵入し、味方からのラストパスを受けるようなシーンであることがほとんどだ。

先ほどのヒートマップを見ると、ペナルティエリア内にヒートマップがあまり存在していない。せっかくスペースを突くセンスがあるのだから、より積極的にボールの受け手になってもよさそうなものだ。

 

中央エリアでのプレーを得意とするバルダンツィだが、4-3-3を採用する現在のローマにトップ下のポジションは存在しない。ウイングのポジションから解放されることを許されるためには、ローマで王様としてふるまうにふさわしいクオリティの持ち主であることを証明しなければならないだろう。さらに上に行くためにはプレーの幅も広げたいところだ。

まだまだ伸びしろがある20歳の宝石、バルダンツィ。イタリアのメッシになれるだけのポテンシャルを持っているだけに、どのように成熟していくのかが楽しみだ。

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