
ルーマニアの首都ブカレストで生まれたラズバン・マリンは、ゲオルゲ・ハジ・フットボール・アカデミーで育成された。
このゲオルゲ・ハジとは、ルーマニア歴代最高の名手「東欧のマラドーナ」ゲオルゲ・ハジその人のことである。現役引退したハジは、自己資産12億円を投じてゲオルゲ・ハジ・フットボール・アカデミーと、その卒業生がプレーするトップチーム、ヴィトルル・コンスタンツァを創設したのだ。
ヴィトルルはクラブ創設8年でルーマニアリーグ優勝を果たすことになるのだが、その優勝メンバーにマリンが含まれている。
ちなみに、ヴィトルルはその後ハジの古巣ファルル・コンスタンツァに吸収され(母体はヴィトルルである)現在は解散している。そのファルルが昨季のルーマニア王者である。
ここら辺の話はおもしろいので、興味がある方は下の記事を読んでみてほしい。
話をマリンに戻そう。初優勝を置き土産にヴィトルルを後にしたマリンが向かったのはベルギーの強豪スタンダール・リエージュだった。徐々に守備的MFにポジションを下げながら3シーズンで18ゴール22アシストと大活躍している。
フレンキー・デヨングの後釜として期待されたアヤックスでは活躍できなかったものの、カリアリで輝きを取り戻し、カリアリで2年、エンポリで2年とここ4年はイタリアで活躍している。
マリンの武器は何といっても右足から繰り出す高精度のキックだ。これを起用されるポジションに応じて使い分けながら攻撃を組み立てていく。
今季のエンポリでは3センターのアンカーで起用される試合が多くなっているマリン。低い位置から前を向き、長短のパスを振り分けで攻撃を組み立てるレジスタとして機能している。
さらに、機を見てポジションを上げて放つミドルシュートも驚異。精度高くゴールの四隅を射抜く。
↓ 昨季のトリノ戦で決めた強烈なミドル
カリアリ時代にはより高いポジションで起用される場面も多かったマリン。よりトップ下的に振る舞い、ラストパスを供給することで攻撃の最終局面を仕上げていた。
キック精度の高さだけでなく、意外性のあるアイデアを見せてくれるのがマリンの強み。相手を出し抜き、華麗にアシストを決める。
↓ 21-22のラツィオ戦で決めた芸術的なアシストは語り草だ。
また、どのポジションで起用されても変わらないマリンの強みがセットプレーだ。誰にも邪魔されずにボールを蹴れるプレースキックでは、マリンは常に脅威だ。
↓ サッスオーロ戦ではフリーキックから2アシストを記録した。
一方で、非保持には課題が残る。 機動力に劣るマリンは、カバーエリアが広くない。その上、ボール奪取力が高いわけではなく、フィジカルコンタクトも不安材料だ。アンカーとしては、守備能力が低いと言わざるを得ない。
今季のエンポリはインサイドハーフにファイタータイプがそろっているため、マリンの両脇をプロテクトしてくれている。だから、マリンの弱みがそこまで露出せずに済んでいるのだろう。マリンをアンカー起用できるのも、彼らのおかげだ。
また機動力に限界があるためドリブルにも期待ができない。キャリーやドリブル突破に関するスタッツも低水準なものとなっている。
典型的なキックで魅せるプレーヤーであるマリン。古典的なレジスタ、古典的なトップ下タイプのプレーヤーだといえる。
ルーマニア代表では中盤の柱としてプレーしているマリンは、EURO2024での活躍も見込まれる。ここが、さらなる飛躍のカギとなりそうなだけに注目したい。