来歴・エピソード
- 今でこそセリエA屈指のCBと名高いアチェルビだが、キャリア初期には名が知られたプレーヤーではなかった。パヴィアでプロデビューを果たした時は3部相当のコンペティションで、そこからセリエDを経て這い上がってきた苦労人である。
- セリエA初挑戦となったキエーボ・ヴェローナでの活躍が認められACミランに加入したものの、父親の死からうつ病を患い、アルコールに依存し夜遊びに明け暮れるなど苦しんだ。
- その後、2013年には精巣ガンが発見されピッチから遠ざかることを余儀なくされながら、2度ガンを克服して戻ってきた。
- 闘病後はサッスオーロ、ラツィオで中心選手として活躍し、3年3か月にわたって公式戦149試合連続出場という偉大な記録を成し遂げた。
- ファンとの仲が険悪になった結果、ラツィオを退団してインテルに加入。即座に最終ラインの主軸となり、22-23CL決勝でアーリング・ハーランドを完封するなど健在ぶりを示している。
- 23-24セリエA29節ナポリ戦、アチェルビはファン・ジェズスに対して人種差別的な発言をしたとの疑惑をかけられた。当件は証拠不十分で無罪となったものの、この一件をきっかけにアッズーリの招集を外されてからは一度も代表に選出されていない。
プレースタイル
キャリア序盤をセリエCやセリエDで過ごし、やっとセリエAまでたどり着いたと思ったらうつ病に精巣ガンを患った。フランチェスコ・アチェルビは漫画かよ!とツッコみたくなるくらいの苦労人である。
30代後半になってからようやくセリエAの表舞台でプレーし始めたところから徐々に評価を高め、35歳にしてCL決勝にまでたどり着いた、遅咲きの極み。でも、今やその名前を知らないサッカーファンの方が少数派だろう。
37歳になった現在でもセリエAの第一線で活躍し続けるアチェルビ。息の長さは、そのプレースタイルと関係していると思う。
アチェルビは3バックのど真ん中に構え、相手のエースを潰す役割を担っている。ルカク、オシメンなど錚々たるストライカーを沈黙させてきたが、CL決勝でハーランドを抑え込んだことで、エースキラーとしての評価は決定的となった。
彼はもともとスピードがない。鈍足なのだ。だから、フィジカルモンスターたちと対等以上に渡り合うには知恵を絞る必要がある。
アチェルビが出した答えは、相手に常に密着することだった。アチェルビはどこまでも相手のエースについていき、ボールが入って着そうになったら体をぴたりとくっつける。そうして相手の行動を制限し、自由を奪うのだ。
そうしてスタンディングデュエルに持ち込んだらそこはアチェルビの土俵。じりじりと前に出てカットする、あるいは相手に背負われていても足だけを出してボールをつつき出す。
空中戦も、落下地点を争うデュエルに持ち込んでスタンディングで跳ね返す場面が少なくない。
密着してスタンディングデュエルに持ち込むことさえできれば、スピードや跳躍力は関係ない。駆け引きと技術で上回り、ボールをカットしさえすればいいのだ。
常に体を寄せられると、相手のエースはいらだってくる。アチェルビはそれをわかってあえて突っかかったり、かと思えばにこやかに謝罪し飄々としてみせる。その駆け引きの巧みさは、イタリアのDF像の権化である。
フィジカルに頼らず、駆け引きとデュエルで上回るスタイルだからこそ、身体的に衰えが出る30代後半になってもなお第一線で活躍できるのである。
すべてのDFがお手本とするべきプレースタイルだといえるだろう。
そして、アチェルビはただのハードマーカーにあらず。足元のテクニックレベルも非常に高い。
長短のパス技術が高く、ビルドアップにおける貢献度も非常に大きい。そればかりか機動力の高さを活かして攻め上がり、アーリークロスからチャンスメイクまでして見せる。
ポジショニングの柔軟さも目を見張り、中盤に入ってビルドアップに絡むこともできれば、サイドライン際を攻め上がってWG化することだっていとわない。
バストーニほどではないとはいえ、似たようなタスクを担えるプレーヤーだと思ってもらって問題ない。攻撃での貢献度も非常に高いプレーヤーである。
というわけで、CBの理想像と言っても過言ではないフランチェスコ・アチェルビは、CB分類マトリックス上の「ビルドアップCB」に分類されるべきプレーヤーだろう。
大ベテランながら極めてモダンなプレースタイルの持ち主であり、インテルの流動的なスタイルとの相性の良さも相まってその実力はなおセリエA屈指である。
さすがに負傷離脱が増えてきたが、まだ数シーズンはプレーしてくれるはずだ。アチェルビのラストダンスを目に焼き付けたいところだ。