タティ・カステジャーノスとは何者か
来歴
- アルゼンチン出身ながら、リバープレートの入団テストに不合格となり、ラヌースにも体格を理由に契約を拒否されたため17歳でチリに移住。ウニベルシダ・デ・チリでユース年代を過ごし、そのままチリでプロデビューを果たしている。
- 2017夏にウルグアイ2部のモンテビデオ・シティ・トルケにレンタルされ、クラブ史上初の2部優勝・1部昇格に貢献した。
- 2018夏、モンテビデオ・シティ・トルケと同じシティ・フットボール・グループに所属するMLSのニューヨーク・シティに完全移籍すると、4年半でリーグ戦109試合50ゴール18アシストを記録。2021年シーズンにはリーグ得点王に輝いた。MLS得点王となったアルゼンチン人は彼が初である。
- 2022夏、またもシティ・フットボール・グループ内移籍によりジローナに加入すると、欧州初年度から公式戦通算14ゴールを記録するなど活躍した。
- 2023夏、セリエAのラツィオに完全移籍し初年度は公式戦通算6ゴール3アシストを記録。インモービレが退団した昨季は前線の主柱として同14ゴール5アシストを記録した。
エピソード
- アルゼンチン出身ながら、アルゼンチンリーグでのプレー経験がない。チリ、ウルグアイ、アメリカを経由して欧州上陸という異色の経歴の持ち主である。
- カステジャーノスがチリに移住するきっかけになったのは、父ディエゴ。彼はタティがやってくる前からチリに住んでおり、7年間家族と会っていないなど断絶状態だったという。もともとディエゴはタティを下宿に送るつもりだったというが、タティが一緒にいたいと告げたために和解したそうだ。
- プロデビュー当初のカステジャーノスはウインガーだったらしい。ウルグアイ2部時代にセンターフォワードに転向し、そこから這い上がった。
- MLS時代、ニューヨークという夢の町に住んでいたカステジャーノスはしかし、キャリアに焦点を当てて夜はほとんど外に出ず、自分で料理して過ごしたという。
- A代表に関して、カステジャーノスはチリを選択する権利を持っており、またアメリカに帰化するという案もあったという。しかし、本人はアルゼンチン代表でのプレーを熱望。ラツィオ移籍後の2024年9月に初招集・代表デビューを飾った。代表として初出場した試合の相手は、奇しくもチリである。
- 22-23ラ・リーガ第31節、カステジャーノスはレアル・マドリードに対して4ゴールをマーク。レアルが1人の選手に4失点を喫したのは1947年以来76年ぶりの出来事だったそうだ。
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銀河系軍団相手に
衝撃の1試合4ゴール‼⚡
\24歳カステジャーノスが
レアル相手に1試合4発を決めた今世紀初の選手に👏👏🏆ラ・リーガ第31節
🆚ジローナ×レアル・マドリード
📺 #DAZN 見逃し配信 pic.twitter.com/Q5e0CUmUYT— DAZN Japan (@DAZN_JPN) April 25, 2023
プレースタイル分析
サッリボールがやりたいことを簡単に説明すると、「二歩進んで一歩下がる」である。奥の味方に縦パスをつけて、レイオフで前向きの選手を作る。以下繰り返し。
ディテールはいつか出すつもりのチーム戦術詳解に譲るとして、なぜ一歩下がる必要があるのかを考える。それは縦パスを受けた選手は、背後から相手に寄せられているからである。
無理してターンするリスクを負うくらいなら、パスを1本増やして前向きを作るのだ。逆に言えば、寄せてくる相手がいないならあえてバックパスする必要はない。
つまり、「二歩進んで一歩下がる」はすべて相手の最終ラインの前で行われる行為ということになる。
相手DFラインの選手からすれば、自分の手前で、自分の視野の中でテンポよくボールが回っている状況。どんどん視線がボールにくぎ付けになり、前へ前へと意識が向いて行く…。その瞬間、突如として裏へのロングパスが出てきたら、不意を突かれるはずだ。
そうか、裏という選択肢もあるのか。そう意識するだけで前へ出る守備がやりづらくなる。だから、アタッカーが裏のスペースをアタックすることは大事なのだ。
流麗なショートパスのイメージが強いサッリボールだが、この「突然ひっくりかえすタッチダウンパス」を大切にしている。ボールが相手の目の前でよく動くからこそ効果的だし、直接チャンスにつながらずともこれがあることでライン間が広がり、「二歩進んで一歩下がる」を実行するためのスペースが広がることにもつながる。一石二鳥なのだ。
そして、今季のラツィオにおいてタッチダウンパスの受け手として重要な役割を担っている選手こそ、今回の主役タティ・カステジャーノスである。
カステジャーノスは、しつこいくらいに裏のスペースをアタックする。それも闇雲に走り回るだけでなく、味方がパスを出せるここぞというタイミングで裏へ走り出す。パスを出したくなる、そんな動き出しである。
↓ エラスヴェローナ戦、裏のスペースで起点になりまくるカステジャーノス。
さらに、パスを受けた後のプレークオリティの高さも無視できない。
元ウインガーであるタティは非常にテクニックに優れ、前線でボールを収めればラストパサーとしても機能する。
下の動画にはカステジャーノスのよさが詰まっているので見てほしい。
The lay-off from Castellanos 💯
The finish from Guendouzi 👏#LazioVerona pic.twitter.com/EDKDgf8RaM— Lega Serie A (@SerieA_EN) September 1, 2025
こいつ半端ないって。後ろ向きのボールめっちゃトラップするもん。そんなんできひんやろ普通。
からの、軸足を抜いた丁寧なラストパスでゴールをお膳立て。こいつ半端ないって。
そこに至る前段階の動き出しのタイミングも素晴らしいのは言うまでもない。
さらに、こちらの動画を見てほしい。
Mattia Zaccagni and Taty Castellanos link up to produce a masterpiece 🖼️🪄#LazioVerona pic.twitter.com/0vyY6Q0Gmg
— Lega Serie A (@SerieA_EN) September 1, 2025
ラボーナでアシスト。そんなんできひんやろ普通。
だが、注目すべきはむしろボールを受ける前の動き。裏へのランを見せておいて、相手CBが釣られたらコースを変更。手前に引いてフリーとなり、壁パス役を完遂した。
相手ペナルティエリア内でラボーナできるくらいの余裕を作り出す動きの質にこそタティの本質がある。
相手に合わせて動き方を変えられるのはカステジャーノスの大きな強みだ。彼はただの裏抜け野郎ではないのだ。
ライン間が広がっていれば、裏のスペースが消されていれば、中盤へ引いて行ってくさびのパスを引き出すこともできる。「二歩進んで一歩下がる」の二歩を刻むパスの受け手にもなれるのだ。
↓ 引いてボールを受けたところから絶妙スルーパス。やっぱりラストパサーとしての性能がめちゃ高い。
第一期サッリ政権時のストライカーは、あのインモービレだった。彼も瞬間的な裏抜けが得意で、タティと同じようにタッチダウンパスの受け手となっていた。
だが、中盤に引いてきて味方とリンクアップするようなプレーは得意ではなく、ボールを収めて味方に渡す程度のプレーはしても、そこからサイドへ展開したりラストパスを出したりと言ったプレーまではできなかった。
その点、タティはより万能。裏へ飛び出せて、中盤に引いて連携に参加できて、前を向けばラストパスを出せる。10年前なら背番号10を纏いトップ下としてプレーしていたような選手だろう。
得点力ではインモービレの方が上かもしれないが、サッリボールに与えるトータルの影響力はタティの方が上であろうと思われる。
インモービレがイグアインで、カステジャーノスがメルテンス、みたいな。ちょっと違うか。メルテンスも相当点を取っていたし。
カステジャーノスも点を取れる男だ。トップ下っぽい彼がセンターフォワードとして起用される理由はそこにある。
前述のように相手CBとの駆け引きに長けるタティは、ゴール前でフリーになる術を知っている。178cmと現代ストライカーとしては小柄だからこそ、相手からフリーになって点を取ることを極めてきたのだろう。
↓ このゴールなんか最高だ。ニアに抜けると見せかけて相手を押してファーにスペースを作り、フリーになって合わせる。南米のストライカーっぽくていい。
ただし、単純に競り合ってもタティはめちゃ強い。なぜなら跳躍力がえげつないから。タイミングの妙も手伝って、相手DFの上から叩く場面も多く見られる。
まだたった2試合だけど、今季カステジャノースの空中戦勝率は100%。ラツィオに来てからどのシーズンも勝率50%超と勝ち越していて、身長のことも加味して考えると有為に空中戦に強いFWだと言っていいだろう。
ゴール前でクロスターゲットになるという、ザ・ストライカータスクまでこなせるのもまたカステジャーノスの強みなのだ。
カステジャーノスのプレーをFW分類マトリックス上に落とし込むと下のような感じだろう。

広範囲を動きながらボールに絡めて(ダイナミックポスト)、味方とのリンクアップも得意とする(ダイレクトポスト)。
本稿では触れなかったが、中盤に引いたところからのミドルシュートも持っている。どんなフィニッシュワークにも対応できる幅の広さが特徴だ。
カステジャーノスは今季のサッリ政権における戦術上のキーマンだ。ショートパスの流れにも参加できるし、そこから分離したところで裏のスペースをアタックし続けられる。その二刀流っぷりから、影響力は絶大だ。


こうした戦術上のタスクをこなしながら、いかに得点に絡めるか。2節ヴェローナ戦は1ゴール2アシストの大活躍だったが、こうしたプレーを継続的に見せていく必要がある。
今季は欧州カップ戦出場がなく、改めて欧州の舞台への返り咲きを目指すラツィオ。その成否を握るカステジャーノスに注目だ。