ジョーダン・ゼムラとは何者か
来歴
- ジンバブエ人の両親の元、ロンドンで生まれ育ったゼムラ。6歳のときにQPRの下部組織に入団し、12最になったタイミングでチャールトン・アスレティックに移籍。8年間プレーした。
- しかしトップチームでの出場なく契約を解除されると、トライアルを経てボーンマスに加入、2020年9月15日のEFLカップでプロデビューを果たした。
- ボーンマスで4シーズンプレーしたのち、2023年にウディネーゼに移籍しイタリアにプレーの舞台を移した。今季で在籍3シーズン目を迎えている。
エピソード
- イングランドで生まれ育ったゼムラだが、両親の出身国であるジンバブエ代表を選択している。ちなみに、ジンバブエには2020年時点で2回しか行ったことがなかったそうだ(ゼムラの父親談)。
- 23-24シーズン第25節カリアリ戦でセリエA初ゴールを記録したゼムラ。この得点がセリエA史上初のジンバブエ人による得点となった。
- カンタベリー大学でスポーツ科学を専攻した知性派のゼムラ。父にまずは学業で優秀な成績をとるよう求められてきたそうで、大学で結果を出すまではサッカー選手になるのに反対されていたそう。
- ちなみにこの優秀というのはかなりすごくて、イギリスの著名な大学に進学するための奨学金を受けられる候補者の中に含まれていたのだという。「もしその奨学金制度を受け入れていたら、私は英語か歴史を専攻し、教授として人々に教えていたでしょう」と当時を振り返る。
- ちなみに、引退後の夢を聞かれると、「私は英文学が好きで、将来は本を出版したいんだ」と語った。なかなかのインテリである。
プレースタイル分析
最近、サッカーと並行しながら大学の学位をとる選手が増えてきた印象がある。文武両道がトレンドの時代だ。
だが、その中でもゼムラは特にすごい。成績優秀者だけが受けられる奨学金をもらえる候補者の中に入っていたのだ。当時、プロサッカー選手になれるかはわからなかったそうなので、もはや武より文に傾いているレベルである。
そんなサッカー界きってのインテリプレーヤーであるジョーダン・ゼムラ。ピッチ上でのプレーにも、端々に知性が感じられるからおもしろい。
ゼムラは左ウイングバックや左サイドバックを定位置とするが、ポジションに縛られない柔軟なポジショニングに特徴を持つ。
必要であればハーフスペースに入り込んで相手の混乱を誘うのは彼の得意とするところ。常に周囲の状況を把握し、ピッチを俯瞰して見ながら最善の立ち位置を選択してバランスをとっているのだ。
味方へのサポートランもオーバーラップとアンダーラップを的確に使い分ける。釣りだされた相手SBの背中を突く、いわゆるチャンネルランはゼムラの得意技となっている。
さらに、オン・ザ・ボールでもゼムラは内にも外にも進路を取れるので、相手からすれば止めづらい選手となっている。
その秘訣は、両利きと言っていいほど右足のテクニックレベルも高いことだ。
左足で縦に持ち出すのと同じレベルで、右足で内に切り込める。
その両方を状況に応じて適切に繰り出し、すり抜けていくドリブルはゼムラの持ち味となっている。
昨季の左SB全員紹介という狂気の記事で紹介した通り(自分で言うな)、ゼムラのドリブル突破成功数は24-25の16節終了時点でセリエAでも8位にランクインしていた。
彼のセリエA初ゴールも左足で切り返して内に持ち出し、右足で打ち抜いた見事な得点。これを見れば、彼が両利きであるとするのも納得してもらえるはずだ。
You won’t see a better finesse shot. Absolutely not ☄️🇿🇼#UdineseCagliari pic.twitter.com/XvOma9TiGq
— Lega Serie A (@SerieA_EN) February 20, 2024
さらに、昨季から急速にキック精度を高めている印象もある。
昨季から直接フリーキックやコーナーキックなどプレースキックでのチャンスメイクは際立っていた。実際、レッチェ戦では見事なフリーキック弾を決めている。
What a strike from Jordan Zemura 🎯#UdineseLecce pic.twitter.com/iBmZmDZl2H
— Lega Serie A (@SerieA_EN) October 9, 2024
だが、今季に入ってからは流れの中のクロスボールからのチャンスメイクが明らかに増えている印象。これはデータにも表れていて、
〈FBref.comより、4節終了時点でのスタッツ〉
- ペナルティエリア外から成功させたクロス数:3(セリエA3位)
- ペナルティエリア外から通したパス数:6(セリエA7位)
とペナ外からパスを通して多くのチャンスを作り出していることが見て取れる。
昨季までは大外に張ってクロス供給というオーソドックスなサイドバックタスクに物足りなさを感じる選手という印象だったものの、今季に入ってそこがむしろ強みにまで昇華されつつある。
こうなると、何でもできるオールラウンドなサイドバックとしての大成が見えてきた感じだ。
大外でもアウトサイドでもプレーできて、オン・ザ・ボールでもオフ・ザ・ボールでも質が高い。資質としては技術、戦術、走力のすべてを兼ね備えており、オールラウンドな「マスターSB」に分類されてしかるべき選手だと評価できるだろう。

低い位置からの球出し役をこなしていた試合もあり、司令塔としての資質も垣間見えるゼムラ。本当に何でもできて、いろいろな形でチームに貢献できる好プレーヤーである。筆者個人的に好きな選手のひとりだ。
ウディネーゼ昨季までは同ポジションのハッサン・カマラと併用されている印象が強かったものの、今季ここまではゼムラが明確に序列で上回っている。
いよいよ飛躍のシーズンになるか。1年後にはステップアップしていてもおかしくないタレントなだけに、今季終了後にどこまで評価を高めているか注目したい。