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  • ニコラ・ヴラシッチ【プレースタイル詳解】

    2007年と2009年の2度走り高跳びの世界チャンピオンに輝いたブランカ・ヴラシッチを姉に持つニコラ・ヴラシッチ。今季からトリノのナンバー10を背負っている。

    システム変更によって最も得意なトップ下のポジションが消滅した影響で昨季から比べて出場機会を減らしているが(18節終了時点で先発は6試合にとどまる)、限られた時間ですでに1ゴール3アシストと結果を残しているのはさすがの一言だ。

    178cm・72kgとずんぐりとした体格のヴラシッチ。見た目にはパワー系でいかにもゴリゴリと仕掛けていきそうな見た目をしている。

    実際、彼がパワフルなシューターであることは間違いない。ひとたび右足を振れば、強烈なシュートでゴールの四隅を射抜く。多少ゴールから距離があっても相手の脅威となるミドルシューターだ。

     

    非利き足の左足でも変わらない質のキックが蹴れるのも魅力的。相手が右足を切ってくれば、迷わず左に持ち出して振り抜ける。

     

    フィニッシュの場面ではその秘めたるパワーを開放するヴラシッチだけど、実はそこが本質ではない。

    彼の基本的なプレースタイルはテクニカルなチャンスメーカーでありラストパサーだ。

    無駄にボールをこねることなく、フリーな味方を見つければすぐさまパスを供給してチャンスを逃さない。そのベースにあるのはフリーな味方を見逃さない視野の広さと、常にパスを出せる位置にボールを置く繊細なタッチだ。

    シンプルかつ繊細なプレーで狭いスペースを苦にしない。決してフィジカル任せにパワーでねじ伏せることはなくて、むしろその逆。確かな技術によってライン間で輝くタイプのテクニカルなプレーヤー、というのがヴラシッチなのである。このギャップが面白い。

     

    ↓ この場面のように、少ないタッチでシンプルなパスをつなぐので目立たないことが多いヴラシッチ。シンプルなパスを積み上げた結果としてアシストが重なっていく、そんなプレーヤーだ。

     

    パスで攻撃を作るチャンスメーカーで、時折見せる強烈なミドルとのニ本柱というアタッカー、ヴラシッチ。今季はインサイドハーフで起用されていることからMF枠で考えるか迷わしいところだったが、本来的には2列目のアタッカーなのでWGとして分類してみたい。

    ウインガーとしてはかなりインサイドでのプレーに特化していてプレースタイルはややチャンスメーカー寄り。WG分類マトリックス上にプロットすると「トップ下型WG」に分類されるプレーヤーだろう。

    得意なポジションにおいてやれば10GAは計算できる優秀なアタッカーだと思う。それだけに、今季インサイドハーフで起用されているのを見ると持ち味が制限されている印象を受けてしまう。それでも数字を残しているところはさすがだが。

    クロアチア代表に定着していることからも、「プロビンチャの注目株」として取り上げるにふさわしいタレントだろう。

  • ペドロ・ロドリゲス【ラツィオ】

    2010ワールドカップ優勝メンバー、ペドロ・ロドリゲス。37歳で迎えた今季は絶好調で、公式戦通算19試合7ゴール4アシストと大暴れしている。

    2列目ならどこでもこなせるペドロ。彼の戦術理解度の高さがそうさせている面ももちろんあるけど、それよりも重要なのは彼のプレースタイルがポジションを問わないリンクマンだからだ。

    とにかく気の利いたポジショニングができて、相手のMFライン手前とライン間を出入りしながらボールを引き出しては循環させてチームにリズムを生んでく。チャンスがあれば前を向いてラストパスを狙っていく。そのスタイルは、WG分類マトリックス上の「トップ下型WG」の手本たるべきものだ。

    両利きペドロは狭い局面でも巧みにボールキープが可能。かつてはそこから強引に相手を剥がして長距離キャリー…なんて荒業も持っていたけど、さすがにそこまでのパワフルさはなくなった。

    ただ、その分シンプルにボールを回すから、よりチームにリズムを刻めるプレーヤーになった印象だ。

     

    ↓ ライン間でボールを引き出してからのアシストシーン

     

    よりゴールに近い位置でボールを受ければ、シュートを積極的に狙っていく。

    シュート技術の高さはさび付いておらず、正確にゴールの四隅を射抜く。しかも両足で、だ。

    シュートを打つ前のボールを受ける位置も含めて、お手本になるプレーヤーである。

     

    守備での貢献度の高さも見逃せない。

    単純にプレッシングに奔走できることはもちろんのこと、出ていくときには常にパスコースを消せるよう周囲の状況を確認しながら出ていくし、ほかの味方が出ていった場面でははっきり相手を消してパスコースを限定させるなどプレッシングを機能させるための個人戦術の高さが光る。

    いくつものタイトルを獲得してきた歴戦のペドロが先陣を切ってプレスに出ていく姿は、若手が多いラツィオにあってそれだけで価値あるもの。

    プレーで手本となれる彼の存在は、間違いなくラツィオの今季好調の要因となっているはずだ。

     

    37歳にして全盛期をほうふつとさせる躍動を見せるペドロ。今が旬のプレーに注目だ。

  • シャルル・デ・ケテラーレ【プレースタイル詳解】

    クラブ・ブルージュでブレイクし、2022夏にミランに加入したシャルル・デ・ケテラーレ。ミランでは0ゴール0アシストと期待を裏切ったものの、アタランタで復活。セリエAを代表するアタッカーのひとりに名乗りを上げている。

    王子様系なルックスのデ・ケテラーレだけど、実は本質はフィジカルな選手。今回、WG分類マトリックス上の「ゴリブラー」に分類したのも、彼のフィジカル性能の高さゆえだ。

    192cmとサイズに恵まれるデ・ケテラーレは、相手を押さえ込んで2人の間を割って突破したり、DFを背負ってポストプレーを見せたりとフィジカルを活かしたプレーをレパートリーに持っている。

    ガスペリーニ監督から最前線で起用される試合もあり、相手を背負えるスキルは名伯楽からも評価されているようだ。

     

    〈FBref.comより、28節終了時点でのスタッツ〉

    • プログレッシブ(縦方向の前進)パスレシーブ数:170(セリエA9位

     

    さらに、デ・ケテラーレはそこから強引に真を向き、相手を押し込むことができる。いわゆる「ワイドポスト」で、これはガスペリーニ監督がアタッカー陣に強く求めているスキルだ。

     

    ↓ 相手を抑え込み、デュエルを制して決めた得点。この強さこそデ・ケテラーレの魅力である

     

    こうした強引な突破こそデ・ケテラーレの魅力で、フェイントを駆使した技巧的な突破よりも光って見える。

    前を向いた時には、緩急と細かいボディフェイクを駆使しながらシンプルに突破するのが彼のスタイルだ。

    大きなフェイントは使わないデ・ケテラーレだけど、常に足元にボールを置きながら相手の飛び込みをけん制し、急加速や切り返しなどで勝負を決める。

    相手の重心を読んだり、タイミングをずらしたりと言った洗練された感覚がなければできない芸当である。

     

    〈FBref.comより、28節終了時点でのスタッツ〉

    • キャリーによるペナルティエリア侵入数:33(セリエA8位

     

     

    得点に関与するプレーでも貢献度が非常に高い。

    ベルギー最終年では公式戦通算14ゴール7アシスト。アタランタ初年度の昨季は公式戦通算14ゴール11アシスト、今季もここまで(28節終了時点)公式戦通算11ゴール10アシスト。いずれも共通しているのは、ゴールとアシストのバランスが非常に取れていることだ。

    先ほども触れたように、デ・ケテラーレ常に足元にボールを置きつつルックアップし、相手や周囲の環境を観察しながらプレーしている。その視野の広さとフリーな味方を躊躇なく使えるいい意味でのエゴのなさ、イメージを具現化する優れたスキルがあるからこそ、アシスト数が非常に多いのである。

    もちろんフィニッシュ能力も高い。カットインしながらのフィニッシュの他、豪快なゴラッソから長身を生かしたヘディングまで多彩なフィニッシュパターンを持つ。

     

    特にゴール前でターゲットになれるのは意外かもしれないが、これも立派な彼の武器。アタランタでの初ゴールもヘディングで奪っている。

     

    ゴール前でターゲットになる以外にも、オフ・ザ・ボールの動き出しからラストパスを引き出すのも巧みだ。スペースを突くランニングからバックステップで角度と距離を作る動きまで洗練されている。使われる側としても優秀なのだ。

     

    ↓ ゴラッソの前、相手から離れるステップに注目。

     

    今回はWG分類マトリックス上の「ゴリブラー」に分類したデ・ケテラーレだが、極めて「マスターWG」に近い万能プレーヤー、とまとめることができるだろう。

    ミラン時代にビッグクラブのプレッシャーからか本来のプレーができなかったことを考えても、彼の課題はメンタル面にあるといえる。

    本来のパフォーマンスを発揮できれば間違いなくワールドクラスだけに、メンタル的に充実した状態をいかに作れるかが真のスターになれるかどうかの分水嶺となるだろう。

     

     

  • グスタフ・イサクセン【プレースタイル詳解】

    グスタフ・イサクセン【プレースタイル詳解】

     

    デンマークリーグ得点王の称号を引っ提げてラツィオにやってきたグスタフ・イサクセン。バローニ新体制下で右ウイングのファーストチョイスに定着している。

    デンマーク時代のゴール集を見ていると、その多くはカウンター局面から決まっていることがわかる。これはラツィオに来てからも変わっていなくて、オープンスペースで仕掛けながらのフィニッシュというのがイサクセンの最も得意な得点パターンとみて間違いなさそうだ。

    これがラツィオに来てから得点数が思うように伸びていない原因ともつながっているのではないか。

    保持型のスタイルを好むサッリのもとスタートした昨季はもちろん、バローニ政権となった今季もラツィオはどちらかというとボールを握って戦うチームだ(16節終了時点で、平均保持率は上から8番目の54.1%)。

    だから、イサクセン得意のカウンター局面からのフィニッシュはそこまで出現してこないのだ。

     

    スペースがない状態では無理をしないというのはドリブルに関しても同じで、相手が引いて守りを固めている場面では無理な仕掛けはせず、味方を使いながら相手のブロックに隙を見出そうとする。

    良い言い方をすれば無理なプレーをしないイサクセンだけど、悪い言い方をすれば無難で怖さがないとも言える。

    ただ、彼のドリブルは狭い局面でも十分に通用するものに見える。ボールを常に足元に置きながら両足を器用に使いこなし、コースを変え、タイミングをずらしながら突破していく様子はメッシにさえ見える。

    あくまでデンマーク時代はプレー集しか見ていないので印象でしかないが、得点王になったシーズンでは相手が引いていてもお構いなしにガンガン仕掛けているように感じる。

    そうなると、問題はメンタル面なのかもしれない。ゴールという数字がついてくれば、姿勢も変わってくるかもしれない。選手育成に長けたバローニのもとでの覚醒に期待したい。

     

    イタリアに来てから成長した部分もある。それがハーフスペースに移動してのくさびの引き出しだ。

    特にバローニ政権下に入った今季に顕著で、絶妙なタイミングで内に入り込み、相手のライン間に起点を設けるプレーはラツィオの縦に速いビルドアップにおいて重要な役割を果たしている。

    スタッツもこれを後押ししていて、FBref.comによるとイサクセンの「プログレッシブ(縦方向の前進)パスレシーブ総数」は118でセリエA4位。10節前後にはセリエAトップだった

    縦パスを受けてそのまま前向きにドリブルで運び、仕掛ける。新しいプレーパターンを習得しつつあるようだ。

    ライン間に侵入し縦パスを引き出すイサクセン
    そのまま前を向き、仕掛けていく。今季イサクセンが習得したプレーパターンだ。

     

    持っているタレントはスーペルなもので、今はまだその半分も引き出せていないのではないか。バローニのもと殻を破って完全覚醒してもらいたいところだ。

  • アンドレア・コルパーニ【プレースタイル詳解】

    アンドレア・コルパーニ【プレースタイル詳解】

    名門アタランタユースで育成を受けたアンドレア・コルパーニは、モンツァでブレイクし今季フィオレンティーナに引き抜かれたアタッカーだ。

    サッカー選手とは思えないスリムなモデル体型。長髪イケメン。スター性抜群である。

    このままフィオレンティーナの新たな象徴になるのか…と思っていたけど、そううまくはいかなかった。今季ここまで2ゴール1アシストと、期待以下の成績に終始している。

     

    そもそもコルパーニの強みとは何だっただろうか。

    彼は右サイドからカットインしつつ、得意の左足でシュートとアシストを生み出すプレーヤー。ハーフスペースを主戦場に、「斜め45度」から攻撃を司るモダンなアタッカーである。

    WG分類マトリックス上の「カットインフィニッシャー」に分類したいプレーヤーだ。

    SofaScoreより、コルパーニの今季のヒートマップ。右サイドからカットインしつつプレーしていることがわかりやすい。

     

    リーチが長くてタッチがやわらかいドリブルは優雅と形容するのが一番で、ゆったりとして見えるけどリーチが長いからその動きについて行くのは容易ではない。

    ハーフスペースから攻撃を司るコルパーニは、相手を突破しきらずにクロスを上げる場面も多い。左足から放たれるボールはやわらかく、味方の頭に届く。

    さらに、長い足をムチのようにしならせることでパワフルなミドルシュートを放つことも可能。ペナルティエリア外からでも相手ゴールを強襲できる。

    そのプレースタイルは、アタランタの先輩ヨシプ・イリチッチにそっくりだ。

     

    また、コルパーニは逆サイドからのクロスボールに対して飛び込み、ターゲットになることもできる。

    サイズがあってヘディングは苦手ではないようで、積極的にゴール前へ走り込む。「ターゲットWG」としての側面も持っているわけだ。

    ドリブル突破力ではイリチッチに及ばないものの、ターゲットになる能力に関してはコルパーニが一枚上手だろう。

     

    それでは、なぜ彼はフィオレンティーナではなかなか活躍できていないのか。

    ひとつは今季のフィオレンティーナがダイレクト志向を強めたスタイルを採用しているからだろう。コルパーニは足元にボールを呼びこんでなんぼの選手。長いボールが飛び交えば強みは生かせない。

    もうひとつは、大外で幅をとるタスクを強く要求されているから。そこまでダイナミズムを持っていないコルパーニは、大外に固定されると中央エリアに入っていけない。だから、おのずと「ターゲットWG」としてのタスクを担うことも減り、フィニッシュに絡む頻度が減ってしまうのだ。

     

    持っているタレント的にはここでくすぶっているような選手ではない。今季終盤戦、そして来季の捲土重来に期待したいタレントである。

  • アレクシス・サーレマーケルス【プレースタイル詳解】

    アレクシス・サーレマーケルス【プレースタイル詳解】

    母国ベルギーの名門アンデルレヒトで育ったアレクシス・サーレマーケルス。2020冬にミランに加入してからイタリアでキャリアを積み重ねている。

    サーレマーケルスSBからWGまで、左右どちらもこなせるサイドのスペシャリストだ。どこに置かれても求められるタスクを高いレベルでこなしてくれる、有用なユーティリティープレーヤーである。

    FBref.comによるパーセンタイルを見ると、SBとしては攻撃のスタッツが振り切れていて、WGとしては非保持のスタッツが振り切れている。両者のちょうど中間に位置するようなプレースタイルの持ち主である。

    それが可能な背景には、90分間献身的なアップダウンを繰り返せる持久力というフィジカル的な側面と、両利きであるという技術的な側面との両面からの裏支えがある。

    非保持時、チームがプレッシングに出ていったときには積極的に前に出て追随し、あるいは先陣を切って相手に圧力をかけに行く。

    それでいながら献身的にプレスバックし、相手のアタッカーに対して積極的にタックルを仕掛けて自由を与えない。

    エリア別のタックル数のランキングで、サーレマーケルスはディフェンシブサードにおいてローマのスカッドの中でトップのタックル数を記録している。彼が自陣まで戻り、守備に参加していることの強力な裏付けである。

    上述のランキング。DFたちが上位を占める中、トップに立つサーレマーケルスが異色の存在だ。

     

    こうしたワーキングウインガー的な側面を持っていながら、サーレマーケルスはただの献身的なワイドプレーヤーにあらず。ウインガーとして攻撃的なタスクを任せてもハイレベルにこなすのが彼のスペシャルなポイントだ。

    テクニックレベルが高く、テクニカルなドリブルを持っているサーレマーケルス。体の向きでフェイクをかけつつ瞬間的な加速で相手を置き去りにする形を基本に技巧的な細かいボールタッチを交えることで、狭いエリアを打開するプレーを得意としている。

     

    かつてはドリブルとクロスボールによるチャンスメイクが最も得意とするプレーだったサーレマーケルスだけど、ボローニャに移籍して以降得点力を高めている。

    今季はすでにキャリアハイの6ゴールで、チーム2位タイの得点源となっている。

    サーレマーケルスの主な得点パターンはカットインフィニッシュ。サイドから切り込み、ファーサイドに決める。

    これを両サイドからできるのが彼の特別なポイント。基本的には右利きながら、右サイドからカットインし左足でフィニッシュできる。その精度がどんどん高まり得点力が上がってきた印象である。

    こうした形がメインゆえ、彼の得点は期待値が小さいシュートから生まれることが多い。FBref.comによれば、「実得点数-ゴール期待値」の数値が4.1でセリエA3位とのことだ(数値が大きければ大きいほど期待値を上回る得点数を決めている)。

     

    ミラン加入当初は献身的なワーキングウインガーという印象だったサーレマーケルスだが、保持時のクオリティを大きく向上させ得点関与率が高まったことで、攻守両面に大きな影響を及ぼすサイドのスペシャリストとして大成しつつある。

    今回はWG分類マトリックス上の「カットインシューター」に分類したけれど、細かいドリブルを武器にする「クイックネスドリブラー」にも近く、汎用性の高いプレーヤーであるといえる。

    「チームに1台サーレマーケルス」と言われる日も近いかもしれない。

  • ルーム・チャウナ【プレースタイル詳解】

    アフリカの中でも最貧国のひとつ、チャドで生まれたルーム・チャウナ。フランスに移住し、名門レンヌのユースで育成を受けてフランスの年代別代表に選出されながら育ってきた。

    そんな彼は左利きの右サイド。当然アウトサイドからカットインしながらのプレーを狙っていくことになる。

    その中で特徴的なのは、彼のカットインがフィニッシュに至ることに特化されていることにある。

    スタッツを見てみるとわかりやすいので、ウインガー陣(CF起用も多いノスリンは除外)の中でのチャウナの立ち位置を見てみよう。

     

    〈FBref.comより、16節終了時点でのスタッツ〉

    • 90分あたりドリブル突破試行数
    1.  3.98 イサクセン
    2.  3.14 ザッカーニ
    3.  2.65 ペドロ
    4.  2.14 チャウナ

     

    • 90分あたりキャリー数
    1.  32.1 チャウナ
    2.  28.6 ザッカーニ
    3.  28.6 ペドロ
    4.  26.9 イサクセン

     

    • 90分あたりシュート数
    1.  5.08 チャウナ
    2.  2.15 イサクセン
    3.  1.83 ペドロ
    4.  1.65 ザッカーニ

     

    まずドリブルに関して。チャウナはほかのウインガーと比較すると、突破するための仕掛けのドリブルが最も少ない。だけど、運ぶドリブル(キャリー)は一番多くて、ドリブルをしないプレーヤーではない。

    引いた相手を打開するために仕掛けるようなプレーが少ないことが読み取れる。

    そして、シュート数が最も多い。それも、2位イサクセンにダブルスコアをつけていることから、フィニッシュへの積極性は特筆すべきものだと言えそうだ。

    つまり、チャウナは相手を突破するのではなく、空いたスペースへとボールを運びながらシュート機会をうかがうことを得意とする生粋のカットインフィニッシャーというわけだ。WG分類マトリックス上の「カットインシューター」に分類されるべきプレーヤーなのである。

     

    左利きだけど、切り返してからの右足でも鋭いシュートを飛ばせるのはGOODポイント。特に左利きだと逆足精度が低い選手が多い中で、差別要素となりうる武器だ。

     

    得点力に優れるチャウナだけど、ここまでリーグ戦は先発わずかに1試合。ライバルたちに後れを取っている。その要因は何なのか。

    今季のラツィオは、WGに対してハーフスペースでのポストプレーを求めている。チャウナはフィジカルを活かして相手を背負うプレーに関してはすでにできていて、起点を設けることはできている。強さという意味ではWG陣の中でも一番かもしれない。

    だけど、ボールを収めた後の球離れが悪くてチームの流れを淀めてしまう嫌いがある。もっとシンプルに味方を使っていればチャンスになったのに…という場面は結構あると思う。

    受ける前の相手を剥がすための駆け引きやポジショニングの修正などもまだ足りておらず、現状はフィジカル任せのポストプレーと言った印象だ。

    このタスクに関して大きな成長を見せて適応したイサクセンに定位置を奪われているのは象徴的だろう。チャウナにも成長が求められる。

     

    ただ、センター寄りでプレーするようになったことでハーフスペースからのダイアゴナルランによる裏抜けという新たな武器を身に着けつつあるのは成長点。

    今までは自ら持ち込んでのフィニッシュしか選択肢になかったけど、味方に使われてラストパスを引き出すことでのフィニッシュも選択肢に加わりつつあるようだ。

     

    2024夏に加わったラツィオではまだ定位置確保には至っていないチャウナ。とはいえまだ21歳の若者で、大きな伸びしろを残しているととらえたい。

    バローニのもとでの成長に期待したいところだ。

  • デニス・マン【プレースタイル詳解】

    2021年冬、ルーマニアリーグ史上最高額の1500万€でパルマに加入したデニス・マン。今季で在籍5シーズン目で、加入シーズン以来のセリエA参戦となっている。

    15節終了時点で4ゴール3アシスト、パルマ最大の得点源かつチャンスメーカーとなっているマン。彼は典型的なカットインウインガーだ。

    トップスピードでもタッチが乱れない高速ドリブルが売りで、常に足元にボールを置きながら相手に飛び込ませないようなボールの持ち方ができる。

    相手が無理に飛び込んでくれば、ひとつの持ち出しだけですり抜けられるだけのキレもある。

    スピードに乗った状態での仕掛けが得意なだけに、パルマのように縦に速いスタイルを志向するクラブでこそ最大限輝くプレーヤーだ。

     

    〈FBref.comより、15節終了時点でのスタッツ〉

    • ドリブル突破成功数:19(セリエA7位

     

    このドリブルを武器にアウトサイドからカットインし、フィニッシュを狙っていく彼の十八番である。

     

    逆サイドにボールがあるタイミングでは大外からボックス内に侵入してくるのも得意で、味方に使われる形でのゴールも決めている。プレースタイル的にはフィニッシャー寄りで、WG分類マトリックス上の「カットインシューター」に分類できるだろう。

     

    そんなマンだけど、実はキーパス数がセリエAトップの31(FBref.comより、15節終了時点)で味方を活かすプレーがぐんぐん向上中。3アシストと結果も出ていて、「マスターWG」に近づいて行っている印象だ。

    リーグ全体としても左WGと比較して右WGはタレントが少ない中、チームの核となれるだけの資質を持っているマンを欲するクラブは多いだろう。

    今後の活躍、そしてシーズンオフの動向に注目したいプレーヤーである。

  • ティモシー・ウェア【プレースタイル詳解】

    ティモシー・ウェア【プレースタイル詳解】

    ミランでバロンドールを獲得した「リベリアの怪人」ことジョージ・ウェアの息子として知られるティモシー・ウェア

    彼も元々は父親同様ストライカーとしてプレーしていたのだが、徐々に両ウイングでも起用されるようになり、リール時代にサイドバックも経験してサイドならどこでもやれるユーティリティープレーヤーに変貌している。

    transfermarktより、ウェアの今季の起用ポジション。

     

    どんなポジションでもこなせるベースには、父親譲りのアスリート能力と確かなテクニックがある。

    特に優れているのは走力で、ただ足が速いだけでなく、スプリントを繰り返しピッチの縦幅をカバーする持久力も兼ね備えている。その走力を活かし、攻守にチームに貢献するのが特徴だ。

    今季のウェアは、公式戦通算6ゴールと多くの得点を記録していて、キャリアハイを更新している。

    彼の得点の多くは、逆サイドから上がってくるクロスボールに合わせて決めるワンタッチフィニッシュだ。

    ゴール前に繰り返し入っていく持久力と、フリーなスペースをかぎ分ける嗅覚が際立つ。

    筆者個人で紀には、モッタユーベがうまくいかなかったのはパスの出し手だらけでパスの受け手がいなかったことだと思っているのだけど、そんな中でウェアは数少ないパスの受け手だった。彼が重要な得点源になっているのも納得だ。

    udnerstat.comより、ウェアの得点に関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円で表したもの。ほとんどがゴールエリア内から放った期待値の大きな得点であることが特徴的だ。

     

    ウェアは細かい局面を打開できるようなドリブルは持っておらず、したがってそもそもドリブル突破を仕掛ける回数が少ない。自らカットインしフィニッシュを狙うこともそこまで多くはない。

    あくまでもフィニッシャーとしてはオフ・ザ・ボーラーであり、引いた相手を切り崩すようなタレントではないということだ。

     

    〈FBref.comより、32節終了時点での「90分あたりドリブル突破試行数」を比較〉

    1.  5.55 コンセイソン
    2.  3.99 ユルディズ
    3.  3.46 ムバングラ
    4.  2.48 ゴンザレス
    5.  2.00 ウェア

     

    逆に言うと、スピードがあるので縦に持ち出してからのクロスボールは得意のパターン。キック精度が高いため、かなり精度の高いボールが上がるイメージだ。

    特に浮き球のカーブをかけたクロスは絶妙で、ぴたりとFWの頭に合わせてチャンスを演出している。

    ストレートにスピードを活かしたドリブルとクロスボールの精度の高さ。こうした特性から現代では少なくなった順足ウインガーとして起用されてきたこと、それを応用してSBとしての適性を見出されたことも納得である。

     

    アウトサイドレーンを持ち場とするクラシカルな順足ウインガーながら、ゴール前に入っていく嗅覚を武器に高い得点力を持つウェア。WG分類マトリックス上の「ターゲットWG」に分類できるだろう。

    チームの主役になるタレントではないけど、様々なポジションで確かなパフォーマンスを見せてくれるユーティリティーな選手として今後も重用されていくのではないだろうか。

  • アッサン・ディアオ【プレースタイル詳解】

    アッサン・ディアオ【プレースタイル詳解】

    セネガルで生まれ、移住先のスペインで育ったアッサン・ディアオ。ベティスで頭角を現しかけていたところを今冬コモに引き抜かれ、イタリアに活躍の場を移している。

    冬のマーケットで新加入したディアオだが、加入後13試合で6ゴールを記録し、すでにチームトップタイの得点数となっている。

    高い得点力を武器にするディアオ。その秘訣は何なのか。

    まず、シュートがうまい。点とるんだから当たり前だ。でも、利き足の右足だけでなく、左足でもいいシュートを飛ばすのは普通じゃない。移籍後初ゴールは、名手メニャンから左足で奪ったものだ。

     

    でもそれ以上に凄いのは、点が取れるエリアに入っていく嗅覚のほうだ。

    ディアオは自ら突破してフィニッシュに持ち込むよりも、味方からのラストパスを引き出してそれを得点に昇華させるプレーにこそ強みを持つ。

    瞬間的に開いた相手DFラインのギャップを鋭利に突くランニング、逆サイドからクロスに飛び込むスペースアタック。いずれにしても、使われるのがうまいオフ・ザ・ボーラーである。だから、彼はWG分類マトリックス上の「ターゲットWG」に分類するのがいいだろう。

    understat.comより、ディアオの得点に関してシュートを打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円で表したもの。ほとんどゴールエリア幅からシュートが放たれていることが特徴的。ウインガーなのにそのエリアに入ってこれていることにこそ、彼の凄さがある。

     

    ディアオはサイズがあるため、相手SBを相手に起点を設けることも可能。相手を背負いながらボールを受けたり、相手が前に出てくるのを利用して入れ替わって突破したりと、ポストマンとしてのセンスも持つ

    さらに、スプリント能力も高くて、伸びのあるランで相手を置き去りにできる。

    彼がすごいのはただスピードだけに頼るのではなく、すでに緩急交えたギアチェンジを体得しているところ。相手の足を止めておいてからの急加速によって相手と入れ替わる感覚をすでに持っている。

    狭いスペースを打開するほどの繊細なボールタッチやアジリティは持っていないけど、オープンスペースで彼を止めるのは容易ではないだろう。

     

    若干19歳にして加入後すぐにコモの得点源として重要な戦力となり、3月シリーズではセネガル代表デビューも果たしたディアオ。注目度がぐんぐん上がっているライジングスターだ。

    使われる役回りだけでなく、発信役としてチャンスメイクも高次元にこなせるようになれば完成度の高いアタッカーになれるだろう。

    将来性のある期待の若手ウインガーである。