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  • チェ・アダムス【セリエA選手詳解】

    チェ・アダムス【セリエA選手詳解】

    来歴・エピソード

    • 10代のころにはセミプロのイングランド地域リーグでプレーしていたチェ・アダムス。 リーグ1(英3部)のシェフィールド・ユナイテッド、チャンピオンシップ(英2部)のバーミンガム・シティを経てプレミアリーグにたどり着いたのは23歳の時だった。
    • チャンピオンシップ最終年となった18-19には、リーグ最優秀選手賞と得点王に輝いた。
    • 2019年に加入したサウサンプトンで5シーズンプレーし、公式戦通算49ゴール20アシストを記録した。
    • 出生地はイングランドのレスターであり、イングランドU-20代表の一員としてプレーした経歴を持つ。A代表は母が血を引くスコットランドを選択し、現在では10番を背負ってプレーしている。
    • なお、父親の出身地であるアンティグア・バーブーダから代表チームに招待された過去があるものの、これは辞退している。
    • インタビューに答えて曰く、「僕は物静かな男で、ひとりでいるのが好きなんだ」。
    • 名前の由来は、アルゼンチン出身の革命家、チェ・ゲバラ。彼の遺骨が発見されたのとほぼ同時に生まれたため、両親が彼に敬意を表して名付けたのだという。

     

     

    プレースタイル

    スコットランドでナンバー10を背負うチェ・アダムス。センターフォワードが定位置のアダムスだが、そのプレースタイルは9番から少し10番に寄った、9.5番くらいのプレーヤーである。

    ガッチリとした体格を活かして相手を背負えるところは9番らしいポイント。決して大柄ではないもののパワーでは相手DFに引けを取らず、前線に基準点を設けることにおいては安定したパフォーマンスを期待でいる。

    ポストプレータイプは「背負いポスト」と言ったところだろう。

     

    〈FBref.comより、35節終了時点でのスタッツ〉

    • 縦パスレシーブ総数:135(チーム内トップ

     

    さらに、ただ背負って時間を作るだけでなく、そこからの配球のクオリティの高さがアダムスの特別なところ。味方を活かすプレーにも長けていて、アシストも多いのがアダムスの特徴なのだ。

    スピードやアジリティと言った能力に関しては特別なものは持っていない分、自ら強引に突破しようとすることは少ない。シンプルに味方を使っていこうとする意識が強いのだ。

    それを実現するに十分なテクニックも持っていて、見かけにはパワー系ながら実際のプレーを見れば印象は変わるはずだ。

     

    〈FBref.comより、35節終了時点でのスタッツ〉

    • アシスト期待値:2.8(チーム内2位
    • キーパス総数:25(チーム内2位タイ

     

    アダムスのアシストシーン

     

    テクニックに優れるアダムスは、フィニッシュワークにおいてもゴール前に飛び込むよりも足元にボールを引き出して決める形を得意としている。

    transfermarktによれば、これまでのキャリアにおいて積み重ねてきた112のゴールのうち、ヘディングで決めたのはわずかに7つだけ。ほぼ足で決めている。

    正確なフィニッシュワークを武器とするアダムスは、得意の右足にボールを置き、ゴールの四隅を射抜くようにして決める。その前段階として相手DFをずらすタッチ、体の向きでシュートコースを読ませないようにするなどストライカーとしての基本のスキルレベルが高い。

    こうした点も10番っぽさを感じさせるポイントだ。

    フィニッシュタイプは「ミドルフィニッシュ」に分類できるだろう。

     

     

    主将ドゥバン・サパタが長期離脱した後、その留守を預かる形でチームトップの9ゴールを挙げるなど、トリノの新たなエースストライカーとして君臨しているアダムス

    そのドゥバン・サパタと2トップを組んでいる姿も見てみたい。10番寄りのアダムスと純粋な9番に近いサパタは補完性抜群だろう。

    来季にさらなる爆発を見せてもらいたいプレーヤーだ。

  • フランチェスコ・アチェルビ【プレースタイル詳解】

    フランチェスコ・アチェルビ【プレースタイル詳解】

    来歴・エピソード

    • 今でこそセリエA屈指のCBと名高いアチェルビだが、キャリア初期には名が知られたプレーヤーではなかった。パヴィアでプロデビューを果たした時は3部相当のコンペティションで、そこからセリエDを経て這い上がってきた苦労人である。
    • セリエA初挑戦となったキエーボ・ヴェローナでの活躍が認められACミランに加入したものの、父親の死からうつ病を患い、アルコールに依存し夜遊びに明け暮れるなど苦しんだ。
    • その後、2013年には精巣ガンが発見されピッチから遠ざかることを余儀なくされながら、2度ガンを克服して戻ってきた。
    • 闘病後はサッスオーロ、ラツィオで中心選手として活躍し、3年3か月にわたって公式戦149試合連続出場という偉大な記録を成し遂げた。
    • ファンとの仲が険悪になった結果、ラツィオを退団してインテルに加入。即座に最終ラインの主軸となり、22-23CL決勝でアーリング・ハーランドを完封するなど健在ぶりを示している。
    • 23-24セリエA29節ナポリ戦、アチェルビはファン・ジェズスに対して人種差別的な発言をしたとの疑惑をかけられた。当件は証拠不十分で無罪となったものの、この一件をきっかけにアッズーリの招集を外されてからは一度も代表に選出されていない。

     

     

    プレースタイル

    キャリア序盤をセリエCやセリエDで過ごし、やっとセリエAまでたどり着いたと思ったらうつ病に精巣ガンを患った。フランチェスコ・アチェルビは漫画かよ!とツッコみたくなるくらいの苦労人である。

    30代後半になってからようやくセリエAの表舞台でプレーし始めたところから徐々に評価を高め、35歳にしてCL決勝にまでたどり着いた、遅咲きの極み。でも、今やその名前を知らないサッカーファンの方が少数派だろう。

    37歳になった現在でもセリエAの第一線で活躍し続けるアチェルビ。息の長さは、そのプレースタイルと関係していると思う。

    アチェルビは3バックのど真ん中に構え、相手のエースを潰す役割を担っている。ルカク、オシメンなど錚々たるストライカーを沈黙させてきたが、CL決勝でハーランドを抑え込んだことで、エースキラーとしての評価は決定的となった。

    彼はもともとスピードがない。鈍足なのだ。だから、フィジカルモンスターたちと対等以上に渡り合うには知恵を絞る必要がある。

    アチェルビが出した答えは、相手に常に密着することだった。アチェルビはどこまでも相手のエースについていき、ボールが入って着そうになったら体をぴたりとくっつける。そうして相手の行動を制限し、自由を奪うのだ。

    そうしてスタンディングデュエルに持ち込んだらそこはアチェルビの土俵。じりじりと前に出てカットする、あるいは相手に背負われていても足だけを出してボールをつつき出す。

    空中戦も、落下地点を争うデュエルに持ち込んでスタンディングで跳ね返す場面が少なくない。

    密着してスタンディングデュエルに持ち込むことさえできれば、スピードや跳躍力は関係ない。駆け引きと技術で上回り、ボールをカットしさえすればいいのだ。

     

    常に体を寄せられると、相手のエースはいらだってくる。アチェルビはそれをわかってあえて突っかかったり、かと思えばにこやかに謝罪し飄々としてみせる。その駆け引きの巧みさは、イタリアのDF像の権化である。

    フィジカルに頼らず、駆け引きとデュエルで上回るスタイルだからこそ、身体的に衰えが出る30代後半になってもなお第一線で活躍できるのである。

    すべてのDFがお手本とするべきプレースタイルだといえるだろう。

     

    そして、アチェルビはただのハードマーカーにあらず。足元のテクニックレベルも非常に高い。

    長短のパス技術が高く、ビルドアップにおける貢献度も非常に大きい。そればかりか機動力の高さを活かして攻め上がり、アーリークロスからチャンスメイクまでして見せる。

    ポジショニングの柔軟さも目を見張り、中盤に入ってビルドアップに絡むこともできれば、サイドライン際を攻め上がってWG化することだっていとわない。

    バストーニほどではないとはいえ、似たようなタスクを担えるプレーヤーだと思ってもらって問題ない。攻撃での貢献度も非常に高いプレーヤーである。

     

    というわけで、CBの理想像と言っても過言ではないフランチェスコ・アチェルビは、CB分類マトリックス上の「ビルドアップCB」に分類されるべきプレーヤーだろう。

    大ベテランながら極めてモダンなプレースタイルの持ち主であり、インテルの流動的なスタイルとの相性の良さも相まってその実力はなおセリエA屈指である。

    さすがに負傷離脱が増えてきたが、まだ数シーズンはプレーしてくれるはずだ。アチェルビのラストダンスを目に焼き付けたいところだ。

  • アーロン・マルティン【プレースタイル詳解】

    アーロン・マルティン【プレースタイル詳解】

    来歴・エピソード

    • 4歳にサッカーを始めたのちエスパニョールのカンテラに加入、10年間育成を受け、そのままトップチームデビューを果たした。
    • キャリア初期からマルセロをアイドルにしていたというアーロン。当然プレースタイルは攻撃的な左サイドバックになった。
    • エスパニョール退団後はマインツで5シーズンプレーし116試合に出場したのち、2023夏にジェノアに加入した。
    • インタビューに答えて曰く、「私を3つの言葉で表現すると、温かく、親しみやすく、社交的」だそう。自己肯定感高ぇ。陽キャやな。
    • 旅行が好きで、今まで行った中で特に気に入ったのはコロンビア、プンタ・カナ(ドミニカ共和国のリゾート)、モルディブだそう。
    • バイクとF-1も趣味で、フェルナンド・アロンソのファンである。
    • セリエAで最も好きな選手はテオ・エルナンデス、ロメル・ルカク、チーロ・インモービレの3人とのこと。

     

     

    プレースタイル詳解

    ブンデスリーガのマインツで長く活躍してきたスペイン産ラテラル。今季でジェノア在籍2シーズン目となる。

    彼の武器は何といっても正確無比なクロスボール。相手をかわしてからクロスを上げられるほどのアジリティやスキルは持ち合わせていないので、相手からの圧を受けない大外からのクロスや早い段階からのアーリークロスなど、相手から距離をとった状態からボールを供給する形を好んでいる

    とにかく試行数の多さが目を引き、クロスへの積極性は異常。何を隠そう、彼は今季の欧州5大リーグで最もクロスを上げているプレーヤーなのだ。

     

    〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

    • クロス総数:221(セリエAトップ欧州5大リーグトップ
    • アシスト期待値:4.6(セリエA9位

     

    スタッツ単体で見てももちろん素晴らしい数字だけど、所属するジェノアはボール保持率がリーグ14位と下位で、相対的に攻撃回数は少ないはずであることを考えるとより輝いて見えてくる。

     

     

    セットプレーのキッカーとしても優秀で、彼はジェノア最大のチャンスメーカーと言ってもいいだろう。

    マインツ時代には直接フリーキッカーとしても鳴らしていたようで、名手ヤン・ゾマー(現インテル)が一歩も動けない芸術的な一発も決めていた。

     

    アーロンは元々非保持面に不安が残るプレーヤーだった。

    対人守備では不用意に飛び込んでスコンとかわされる場面が散見され、守る局面ではマークが甘くピンチを招くシーンも見受けられていたのだ。

     

    アーロンがマークを外して危険なエリアへの侵入を許した

     

    それが、ジェノア全体のアグレッシブな姿勢に触発されてアーロン自身もファイターに変貌。粘り強い対応からタックルでボールを奪うシーンが増えており、ポジショニングも改善傾向にある。守備者としても大きく成長している印象だ。

     

    〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

    • タックル総数:62(セリエA4位
    • タックル勝利総数:40(セリエ3位

    非保持面が伸びたことで、サイドバックとして総合的に完成されたプレーヤーとなったアーロン。ジェノアのキーマンとして注目してみてほしい。

  • ティジャニ・ラインデルス【プレースタイル詳解】

    ティジャニ・ラインデルス【プレースタイル詳解】

    来歴・エピソード

    • オランダ代表MFになったラインデルス、写真を見ると最近街中でよく見かけるような顔つきをしている。彼の母はインドネシア人であり、ティジャニはインドネシアにあるモルッカ諸島で生まれたのだ。
    • その出自ゆえ、インドネシア代表でプレーする可能性もあったラインデルスだが、インドネシアサッカー協会からの誘いを断ってオランダ代表としてプレーしている。
    • 父は元サッカー選手のブランダ・ラインデルス。子どもたちにサッカーを教えるスクールを運営しており、ティジャニもまたそこで鍛えられてキャリア初期を過ごしたという。今でもアドバイスをくれるようだ。
    • 父もプレーしたPECズウォレでトップチームデビューを果たした後、移籍したAZでブレイクし2023夏にミランに加入した。
    • ちなみに、PECズウォレには弟エリアーノ・ラインデルスが所属しプレーしている。
    • ミラン加入時にはバルセロナからの誘いを断ってミランに加入したラインデルス。先日の契約更新時には、レアル・マドリーやマンチェスター・シティからの関心に断りを入れており、ミランへの忠誠心が非常に強い。
    • 今季はセリエAで2桁得点を記録したラインデルス。ミランのクラブ史において1シーズンに2桁得点を記録したオランダ人選手は、あのマルコ・ファン・バステン以来だという。偉業である。
    • ゴールパフォーマンスは両腕を広げてドヤ顔。インテルのディマルコのパクリかと思いきや、本人曰く「昔から家でふざけていっていた『これが人生』という言葉を象徴するポーズ」らしい。

     

     

    プレースタイル

    ラインデルスは、加入2シーズン目でミランの中盤の要に成長している。

    様々なサイトや選手名鑑でラインデルスと結び付けられるワードが「ボックス・トゥ・ボックス」。確かにこれは間違いではないのだが、ただのボックス・トゥ・ボックスだけで終わらせられるような選手ではない。

    豊富な運動量とテクニック、戦術的インテリジェンスを高度に兼ね備えたパーフェクトMFというのがラインデルスを表す正しいワードだろう。

    ピッチ内を所狭しと走り回る運動量は目を見張るのだけど、そこにラインデルスほどのレベルでオン・ザ・ボールのクオリティを上乗せしている選手はそう多くはない。

    特に際立つのはドリブル能力の高さ。相手を背負ってボールを受けたときのターンのうまさに始まり、2人に囲まれたときに間を割って打開するスキルの高さ、高速ドリブルでも乱れないボールタッチの正確さを併せ持ち、セントラルMFとしては屈指のドリブラーである。

    長い距離を持ち運ぶドリブルも、狭い局面を打開する突破するボールキープも、ともにハイクオリティだ。

     

    〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

    • プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー数:101(セリエA5位)
    • プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー総距離:3229.7m(セリエA10位

     

    さらに、ボールを運んだあとの配球も質が高く、ラストパサーとしても優れているのがラインデルス。自ら打開しドリブルで運び、ラストパスまで完結できる。

    単騎での打開力をこれほどまでに高いレベルで持っているMFはなかなかいない。

     

    〈FBref.comより、31節終了時点でのスタッツ〉

    • プログレッシブ(縦方向の前進)パス数:185(セリエA7位
    • ペナルティエリア内に通したパス数:44(セリエA6位

     

    そしてラインデルスは持ち前の運動量を活かしてフィニッシュにも積極的に絡むプレーヤーである。

    実は昨季は決定機を逃すシーンが何度も見られ、全体的に素晴らしいけど決定力だけは課題だね…という印象だった。

    それが、今季はセリエA9ゴール、チャンピオンズリーグ3ゴールと公式戦通算で2桁ゴールを達成。フィニッシャーとして覚醒している。

    攻守万能なのに得点力まで身につけてしまったら鬼に金棒。究極のパーフェクトMFの誕生である。

    豊富な運動量を活かして積極的にゴール前に顔を出すラインデルスは、味方のクロスボールに飛び込むターゲットとしても有用なだけでなく、FWを追い越して裏へ飛び出すラインブレーカーにも変貌する。

    オフ・ザ・ボールでスペースをアタックする感覚はフットボールIQの高さを感じさせる。

     

    さらに特筆すべきは、ラインデルスミドルシューターでもあるという点。パワーのある強烈かつ正確なシュートを放ち、ゴールから離れた位置からでも得点を狙えるのは脅威だ。

     

    これだけ攻撃時の貢献度が高いラインデルスながら、守備時にも献身的に中盤を奔走。広いエリアをカバーしながらボールをハントする。

    特に機動力の高さを活かしたインターセプトはオランダ時代からの得意技で、今季記録している29という数字(FBref.comより、31節終了時点)は2位の18に大きな差をつけてぶっちぎりのチームトップとなっている。

     

    攻守にMFに求められるスキルを全て兼ね備えたパーフェクトなMFとして大成したラインデルス。その存在感は絶大だ。

    MF分類マトリックス上の「マスターMF」の中でも特にバランスの取れた選手である。

    つい先日に契約延長を果たしたラインデルスは、これに際してレアル・マドリーやマンチェスター・シティなどの誘いを断ったようだ。

    今後数シーズンはミランの中盤にラインデルスありといった状況になりそうだ。

     

  • サムエル・チュクウェゼ【プレースタイル詳解】

    「ナイジェリアのロッベン」の愛称で呼ばれるチュクウェゼ。本家と比べるとよりチャンスメーカー寄りのプレーヤーだ。

    彼の最大の武器はドリブル。ビジャレアル最終年の22-23にはドリブル突破成功数がラ・リーガ3位、欧州5大リーグ5位にランクインするなど屈指のドリブラーとして鳴らした。

    彼のドリブルには決まったパターンがある。スピードに乗った状態で突っかかり、一瞬スピードを落としてから急加速する、あるいは内に小さく切り返してから縦に大きく持ち出す。緩急を活かしたドリブルの使い手なのだ。

    このドリブルの肝は、緩のタイミングで相手に飛び込ませること。そうして逆を突く形で一気に相手を置き去りにするのが彼のお決まりのパターンなのだ。

    ところが、イタリアのDFたちは簡単に飛び込んでかわされることを嫌い、どちらかと言えばスペースに重きを置いて少し距離を置いて対応する傾向にある。チュクウェゼのお決まりパターンに乗ってこないDFが多いわけだ。

    スペインでは飛び込んできたタイミングで相手が飛び込んでこない。感覚を狂わされたに違いない。

    この違いゆえ、イタリアではスペイン時代ほどのドリブル突破成功を記録できていないのが現状だ。

     

    それならばと、ブロックの外からのクロスボールでチャンスメイクする形を多く用いるようになっているチュクウェゼ。結果こそついてきていないけど、16節終了時点で90分あたりアシスト期待値0.25はチームトップ、セリエA6位の数字。

    得意の縦への持ち出しができるよう懐にボールを置きながら、左足ですくい上げるようにボールを送り出す独特のフォームでチャンスメイクには成功している印象だ。

     

    とはいえ、最も得意なのはドリブルで相手の守備網を切り崩すプレー。ここが輝くことなしにチュクウェゼの完全覚醒はありえないだろう。

    オープンなスペースがあればカットインしてそのままフィニッシュという形も持っているだけに、もっとやれる選手なはず。今後の奮起に期待したいところだ。

  • ダビド・ネレス【プレースタイル詳解】

    CLベスト4に躍進したテン・ハフのアヤックスでブレイクしたダビド・ネレス。ベンフィカでの2年間を経て、今夏ナポリに加入している。

    レフティーのネレスは右サイドが本職ながら、左サイドでもプレー可能なウインガーだ。シーズン途中のクヴァラツヘリアの退団を受けて、今季はむしろ左サイドでのプレーが多くなっている。

    左利き左サイドとなると縦突破からのクロスボールが定石だけど、ネレス内外の切り返しを駆使して器用に内に進路を取れる。基本的に左足しか使わないのだけど、縦にも内にも持ち出せる縦横無尽さをもっていて不思議なドリブラーだ。だから右サイドだろうが左サイドだろうが関係ないんだろう。なんだかディ・マリアっぽい。

    WG分類マトリックス上では「クイックネスドリブラー」に分類されるプレーヤーだろう。

     

    ディ・マリアと比べるとネレスはよりスピードがあって、切り返したあと瞬間的に加速して相手を置き去りにできる。だから、一度進み始めると手が付けられなくなる。

    シーズンに何度かは単独突破からスーパーなプレーを披露してくれる選手である。

     

    こうしたドリブラーとしての個人技は間違いなく持っているネレス。ただ、それをうまく数字に結び付けきれていない印象だ。

    一度ドリブルに入ると単独突破に偏りがちで、端的に言えば球離れが悪い。味方を活かすのがあんまりうまくないのだ。

    落ち着いて周りを観察できる状況を作ればそうでもないんだけど、ドリブル突破を仕掛け始めると周りが見えなくなる嫌いがあるように見える。

     

    そうした特性ゆえ、パフォーマンスにムラがあって、シーズン通して安定したプレーができているかと言われると疑問符が付く。これまでのキャリアでシーズン2桁得点、2桁アシストを記録したのは17-18シーズンのみとなっている。

    良くも悪くもピーキー。それがネレスの良さでもあり弱点でもあるわけだ。だから、キャリアを通して途中出場からジョーカー起用される試合が多かった。

    ところが、クヴァラツヘリアの退団という出来事を経て、ナポリではその代役として定位置を確保。継続して試合出場を果たしている。

    数字が伴っていないが、パフォーマンスの波はおさえられている印象。シーズン終盤にかけてナポリをスクデットに導く活躍を継続して見せれば、いよいよ殻を破るかもしれない。

    シーズン終盤戦、ネレスにとってもクラブにとっても正念場だ。

  • マティアス・スーレ【プレースタイル詳解】

    マティアス・スーレ【プレースタイル詳解】

    ユベントスの下部組織出身で、昨季フロジノーネで大ブレイクを果たしたマティアス・スーレ。今季からローマに加入しプレーしている。

    スーレは、昨季ドリブル突破成功数がセリエA最多だったドリブラーだ。

    彼のドリブルの特徴は、細かいボディフェイクと加減速、キックフェイントやタイミングを外した持ち出しなどで相手の逆を突く巧みさ。対峙するDFの重心を読み取る眼はまさに天才的で、いとも簡単に相手が出している矢印を折って突破してしまう。

    対戦相手からすれば止めに入ろうとすればするほどその逆を突かれるため、対応が非常に困難なドリブラーだ。

     

    スーレはただのドリブラーにあらず、高いキック精度を持っている。ドリブル突破した後のクロスボールからプレースキックまで、その左足をチャンスメイクにフル活用する。

    特にこすり上げるようにして蹴るインフロントのキックは秀逸。パワーはないものの、カーブしてピンポイントで狙った点に合わせるキック精度の高さは特筆ものだ。

     

    ドリブルからキックまで高いテクニックを持っていて、左足でカットインしながら攻撃を操るスーレ。キャラクターとしてはディバラと被る部分がある。

    だが、ディバラの域に達するためにはまだ成長しなければならない部分がある。それが得点能力だ。

    昨季11ゴールを挙げたスーレだが、そのうち5つはPKによるもの。流れの中からの得点力に関しては、さらに増強の余地がある。

    スーレは万能なタレントだけど、「マスターWG」とはせず、チャンスメーカー寄りの「クイックネスドリブラー」に分類するのは得点力がまだ十分に高いとは言えないからだ。

    understat.comより、スーレのシュートに関して打った位置をピッチ上にプロットし、期待値の大きさを円で表したもの。緑が実際に得点になったものを示している。

     

    上の図を見ると、スーレのシュートは全体的に期待値が小さく、ペナルティエリア外から打たれたものが多いことがわかる。

    ただ一方、実際に得点につながった緑色の円を追ってみると、ゴールに近い位置から放たれた期待値の大きなものがほとんどを占めていることがわかる。

    ゴール前でフリーになってシュートを打つ場面が少ないにもかかわらず、実際に得点につながっているのはそうしたシチュエーションなのだ。

    ここから読み取れることはふたつある。

    ひとつは、ミドルシュートに関しては試行数に対して結果が伴ってきていないということ。

    いくら精度が高いとはいえ、緩いボールではセリエAのハイレベルなGKたちには弾きだされてしまう。パワーがない以上、さらに精度を上げるか、ミドルシュートを匂わせながらほかの選択肢をとる回数を増やすかして工夫したいところだ。

    もうひとつは、ゴール前に入っていく頻度を上げれば得点数がさらに伸びるだろうということ。現状得点につながっているシチュエーションを多く再現できれば、おのずと得点数が増えていくはずだ。

    非常にテクニックレベルが高いスーレが足元にボールを引き出したがるのはよくわかるのだが、それを押し殺してボールの受け手としてふるまう能力も必要になるだろう。

    ディバラは、スーレよりも使われるのがうまい。だから点が取れるのだ。

     

    現状WG分類マトリックス上の「クイックネスドリブラー」としているスーレだが、ポテンシャル的には「マスターWG」にまで成長するべきタレントである。

    そのために得点力を向上させ、チームを勝たせるプレーヤーになってもらいたいところだ。

  • フランシスコ・コンセイソン【プレースタイル詳解】

    フランシスコ・コンセイソン【プレースタイル詳解】

    ミランの監督、セルジオ・コンセイソンを父に持つフランシスコ・コンセイソン。ポルトからのレンタルという形で今季からユベントスに加入している。

    170cmとサッカー選手としては小柄なコンセイソンだけど、その小柄さは彼の武器。抜群のアジリティと加速性能で相手の間をすり抜けていく、非常にクイックなドリブラーだ。

    ボールを持ったらとにかく相手と正対し、仕掛けていく。その積極性はスタッツによく表れている。

    FBref.comによれば、90分あたりのドリブル突破試行数は5.55。これは異常な外れ値だ。1000分以上に出場した選手の中ではセリエA3位に入る。

     

    〈FBref.comより、32節終了時点での「90分あたりドリブル突破試行数」を比較〉

    1.  5.55 コンセイソン
    2.  3.99 ユルディズ
    3.  3.46 ムバングラ
    4.  2.48 ゴンザレス
    5.  2.00 ウェア

    →ユーベの他のウインガーたちと比較しても、コンセイソンのとびぬけ方は異常だ。

     

    コンセイソンのドリブルは細かいボールタッチで相手の間を華麗に抜けていくようなスタイルではない。タイミングを外した持ち出しとそこからの急激な加速で相手を置き去りにする、直線的なドリブルが得意。「切り裂く」というワードがしっくりくるそれだ。

    有名な選手でいえば、エデン・アザールに似ていると思う。

     

    その急加速するタイミングを読まれないための細かいフェイクこそ彼の真髄。これにより相手の足を完全に止めることで飛び込ませないのがコンセイソンの憎いところ。うまく相手の足を止めてじりじりと自分が勝負できるスペースに引きずり込んでいくのだ。

    コンセイソンが仕掛けの目安にしているのはペナルティエリアに入った直後だと思う。だから、自身がペナルティエリアに入るまでフェイクを入れながらじりじりと相手を押し下げていく。これは、スタッツにもよく表れている。

     

    〈FBref.comより、32節終了時点でのスタッツ〉

    • キャリーによるペナルティエリア侵入数:45(セリエA3位

     

    コンセイソンへの対応がさらに難しいのは、彼が仕掛けを匂わせながらそのままクロスを上げてくるところ。

    足元にボールを置き、いかにもそこから持ち出して急加速してきそうに見せかけながら、ボールをすくい上げるようにしてクロスを放ってくる。

    前述のように、コンセイソンに正対されると相手は飛び込めない。だから、コンセイソンは相手に邪魔されることなくクロスを上げられる。

    このドリブルとクロスのダブルパンチにより、コンセイソンはセリエA屈指のチャンスメーカーとなっているのだ。

     

    〈FBref.comより、32節終了時点でのスタッツ〉

    • 90分あたりアシスト期待値:0.36(セリエAトップ

     

    まだ22歳と若いコンセイソンだけど、WG分類マトリックス上の「クイックネスドリブラー」の第一人者と称して問題ないレベルにあるだろう。

    さらに得点に関与する頻度を上げられれば、ワールドクラスの領域が見えてくる。

    そこに向けて気がかりなのは、細かい負傷離脱の多さだ。今季だけでケガにより毎シーズン負傷離脱によって10試合前後の試合を欠場している。

    transfermarktより、コンセイソンの負傷による欠場試合数。

     

    プレースタイル的にもフィジカルコンディションが整わなければ最大限のパフォーマンスを発揮できない系統のプレーヤーだけに、今後ケガによりキャリアに傷がつかなければいいが。

    逆に言えば、シーズン通して安定して試合に出場できれば、おのずとスタッツも伸びていくのではないだろうか。

  • ガエターノ・オリスタニオ

    インテルのプリマヴェーラ出身のオリスタニオは、オランダのフォレンダムに2年間レンタルされていた。昨季のカリアリでセリエAデビューし、今季ヴェネツィアに完全移籍している。

    そのヴェネツィアで完全に攻撃の核となっているオリスタニオ。なにせ、ドリブル突破成功数でセリエAトップの数値をたたき出しているのだ。

     

    〈FBref.comより、14節終了時点でのスタッツ〉

    • ドリブル突破成功数:31(セリエAトップ
    • 被ファウル数:35(セリエA2位

     

    ドリブルの3つのスタイル「ゴリブル」「クイックネスドリブル」「スピードドリブル」の中で、オリスタニオは「スピードドリブル」に当てはまる。

    特に数mのショートスプリントの爆発力は半端ではない。いったんスピードを緩めて相手の足を止めた後、急加速して一気に相手の前に出るのがオリスタニオの形。

    難しいフェイントは使わず、緩急を駆使しながら突破していく。

    小柄な体も味方して、すり抜けるようにして相手の前に出るドリブルは爽快感抜群だ。わかっていても止められない、そんなドリブルだろう。

     

    オリスタニオの突破からのアシスト

     

    当面の課題はドリブルで突破してからのプレーの精度を上げていくことだろう。スピードを上げたところから正確なクロスやスルーパスを供給できるようになれば、怖さは倍増するはずだ。

    得点力に関しても磨きをかけたい。トッププレーヤーを目指すうえで避けて通れないのが自らゴールという数字を残すこと。点が取れないトップウインガーはいない。

    そういう意味では、ゴール期待値2.7に対して実得点が1はあまりにもさみしいところだ。

     

    近い将来のアッズーリ入りも期待したい逸材。スピードドリブラーながら、突破のために必要なスペースが広くないことから引いた相手を崩すことが多いビッグクラブでの活躍も可能だろう。

    今後の成長を見守りたいタレントだ。

  • ダン・エンドイェ【プレースタイル詳解】

    スイス人の母とセネガル人の父の間に生まれたダン・エンドイェは、高速ドリブルを武器とするアタッカーだ。

    エンドイェとにかく足が速い。縦にボールを蹴りだし競走するだけで相手を置き去りにして突破できてしまう。だから、彼のドリブルは直線的。レーンを敷き、相手とスピード勝負に持ち込む。

    特にカウンター局面で大きく輝き、中盤低い位置からトップスピードに乗れば彼を止めるのは非常に困難。長い距離を持ち運び、局面を転換する飛び道具だ。

     

    〈FBref.comより、32節終了時点でのスタッツ〉

    • プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー数:118(セリエAトップ
    • キャリーによるペナルティエリア侵入数:43(セリエA5位

    →とにかく縦に距離を稼ぐストレートなドリブルなので、プログレッシブ(縦方向の前進)キャリー数がセリエAトップなのも納得だ。

     

    さらに、エンドイェはボディバランスにも優れ、コンタクトプレーを苦にしない優れたフィジカルも持ち合わせている。

    その特性を活かし、相手を背負ってポストプレーをすることもできる。サイドに起点を設けられるその特性は、サイドからの前進を重視するイタリアーノにとって願ったりかなったりなものだろう。

    相手を背負った状態でボールを受けるだけでなく、そこから横に逃げてドリブルを開始、相手を剥がして距離を稼ぎ、敵陣まで進攻する。単独で局面を転換する能力の高さはまさに戦術兵器である。

     

    〈FBref.comより、32節終了時点でのスタッツ〉

    • プログレッシブ(縦方向の前進)パスレシーブ数:200(セリエA7位
    • 被ファウル数:82(セリエAトップ

    →縦パスのターゲットとしてリーグ有数であることがデータでも裏付けられている。そうしたプレー特性や、一度スピードに乗ったら止められないドリブルも相まって、被ファウル数はリーグトップだ。

     

     

    長距離ドリブル&ポストプレーで、運ぶ局面への貢献度が極めて大きいウインガーであるエンドイェ。昨季までは、崩す局面での貢献度が課題だった。

    特に決定力がめっちゃ低く、「それ外すん⁉」というミスも多くみられていた。昨季はゴール期待値4.9に対して実得点は1だけ。さすがに外しすぎである。

    ところが、今季は一転して決定力が覚醒。ここまでリーグ戦8ゴールでチーム2位タイの得点源となっているのだ。そんなに伸びることある⁉

     

    エンドイェはドリブラーだけど、自分でドリブル突破からフィニッシュ!という場面は少ない。なくはないけど、そういう場面ではやっぱりシュートを打つまでにガス欠していて決まらない。

    彼が得点するときは、たいてい逆サイドからのクロスボールに飛び込んで決めている。直線的にゴール前に飛び込み、点で合わせて完結する場面が多くみられている。

    イタリアーノがサイド攻撃を重視するスタイルを取ったことで、サイドからのクロスボールという場面が増えたこともエンドイェにとって追い風になっているのだろう。

     

    というわけで、運ぶ局面から崩す局面まで、トータルでの貢献度が非常に高い完成されたウインガーへと成長したダン・エンドイェ。右サイドが本職ながら左サイドでも起用可能で、スイス代表ではウイングバックで起用されるなどサイドならどこでもやれる汎用性も魅力だ。

    今回はWG分類マトリックス上の「スピードドリブラー」に分類したけど、「ゴリブラー」「ターゲットWG」としての性質も備えた、万能なプレーヤーである。

    得点力が向上した今、エンドイェはどのクラブも欲しがるタレントだろう。メルカートでの動向にも注目したいところだ。